第43話

「あのノワールと言う名のヴィランはこの世界を破滅へと導こうとしていました。彼のやろうとしたことは詳しく話せませんが…安心してください。彼はもうこの世を去りました。……だが奴を倒すために……我々はっ…大きな犠牲を払ってしまった。フェザー、スピードスター、そしてフレアなど。かつての仲間が私達に協力してくれ、そしてこの世界を去ってしまった…。彼らはここにいる全員を守るために…命をかけてまで戦ったんだっ。私は彼らの死を無駄にはしないため、一人で奴らの元へと赴き、そして全てを終わらせてきました。だからもう安全だ…今日からまたいつもの平穏な日々を過ごすことができる。だけど…忘れないでいただきたい。彼らは私達を守る為に命をかけて戦っていたことを。」

バカな奴らだ。

私の言葉を完全に信じ込み、本当のことを知ろうとはしない愚か者ども。

こいつらが本当のことを知った時、どんな風に思うのやら。

本当にこいつらには吐き気がする。

だがそれもあと少しの辛抱だ。

あの男がいなくなり、これで私の邪魔をするものはいなくなった。

少し探すのに手間取ったがやっと美樹の居場所を探し出すことができた。

後はそこへ向かい、美樹を連れて帰り力を使う。

未来は…あの愚か者に殺されてしまったが今の美樹の力なら未来の力を借りなくても過去を変えることはできるだろう。

そうすれば全てをもう一度やり直すことができるんだ。

私達の持っている力を消し、あの時の大規模な戦闘を起こさないようにする。

そうすればきっと未来は死なず、私は未来や美樹と一緒にいることができる。

例え、美樹がそれを望まなくともきっといつかは私のことを正しいと言ってくれるはずだ。

それにあの男も本望だろう。

あの男の望んでいた世界へと変わっていくのだ。

奴の死も無駄ではなかった。

下らない茶番式は終え、私は壇上を降りようとする。

さて…それでは美樹の元へと…

その時だった。

私の目の前には死んだはずの奴の姿が現れたのだ。

「…っ。」

あまりの出来事に私や周りにいた人間も言葉を失う。

そしてその瞬間、私の顔面に奴の蹴りが当たり、私は地面へと倒れ込んでいた。

何が起きたのか理解をすることができなかった。

「貴様っ、何故まだここにっ!!!」

予想外の出来事に思わず、私は叫んでしまう。

明らかに奴には以前よりも力がある。

私は態勢を整えると奴へと向かって拳を伸ばす、だが、私の攻撃は奴へは届かず、されるがままに打ちのめされていく。

こんなこと今までで一度も味わったことがない。

私の動きが分かっているかのように攻撃は全てかわされ、赤子のように弄ばれる。

必死に反撃をしようと構えるが、それも全ては無駄だった。

まるで未来でも見えているかのように私の動きが全て見切られる。

気がつけば私はまた地面へと倒れ込んでいた。

「何故…お前が生きている。お前は…誰なんだ。」

ノワールは何も言わずに首元のスイッチを押すのが見えた。

その瞬間、マスクの後頭部から金色の髪が見え、ノワールは私の顔に向かって指を鳴らし、顔面を爆発させると蹴りを入れた。

ゴキッと首の骨が砕かれていくのが分かる。

薄れていく意識の中でノワールの正体が私には分かった。

奴の正体は…。


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ノワール・ヒーロー 夏野海 @noa-3636

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