第2話

 春希は死神と出会った。

 春希が自殺しようとしたら、いきなり現れ、自殺の邪魔をし、「自殺をするのを少し待って」と頼まれた。

 今にして思えば、死神の言うことを無視して、そのまま死ぬことができたかもしれない。

 それなのに、無視して自殺しなかったのは、やはり自分にも、それなりには心があったんだと春希は考えた。


 春希は聞いた。


「いつからなら死んでいいの?」


 死神は言った。


「せめて一週間待ってください」


 と。春希としては、死ねるなら何でもいいというのが答えだ。


 死神は説明を始めた。


「私は見ての通り死神です。あなたの命をいただきに来ました」


「それなら今ここで殺してよ」


 春希が口を挟んだ。


「いいえ、それはできません。私達死神は、人間と契約し、一週間考える期間を与えるんです。そして、一週間後、契約者に、死んでも大丈夫か、殺されても文句は無いか訪ね、イエスなら殺し、ノーなら別のターゲットを探します」


「それをぼくに教えちゃって大丈夫?」


「これを伝えるのは死神のルールには違反しませんので問題はないです」


「でもさ、断れるって知ったら、ノーって答える人たくさんいるでしょう?」


「そんなことはありません。約80パーセントの確率で、人間は我々死神と契約し、人間として生きることを諦めるのです」


 春希は素直に驚いた。


「どうやってイエスって言わせるのさ」


「洗脳です。一週間の期間中に、死の素晴らしさを契約させたい人間に語り続け

るのです」


「恐ろしいね」


 もちろん春希は心ではなんとも思っていない。


「じゃぁ何故死神は直接殺さずに、そんなに回りくどいことをするの?」


「契約者の同意を得ずに直接殺すのはルール違反なんです。もし仮にノーと答えられても、我々死神との記憶だけを消し、私達死神はターゲットから姿を消し、二度と関わりません」


「じゃあなんで人を殺すの?」


「最近、人間が増えすぎて、美しい自然や、命がすごい勢いで失われていってい

るんです。それを止めるために、私達死神は人間の命を刈るのです。まぁ私は一度も契約して、イエスと言わせたことはないのですが……」


「死神も大変だねぇ」


「これが仕事ですから」


「とにかく、一週間よろしくお願いします」


 そう言って死神は頭をペコリと下げた。



 こうして、春希と死神の奇妙な一週間が始まった。

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