第14話王都への旅立ち~私は王様の花嫁になる運命なの?・4


―レヴィン王子視点―





ボクは何をやっているんだ……。


大切な人に他の男との結婚を伝え、それを神話の時代からの決まりだと言って自分を納得させ。


好きな人を泣かせ、何もできないなんて……。


今日ほど自分を、ふがいなく思ったことはない。


ボクは何も守れない。民も領地も自分の命も、好きな人も。


体が勝手に動き、彼女のあとを追っていた。


「女神……!」


彼女の腕をつかむ。


「いや、離して……」


彼女の黒真珠のような瞳から、涙がポロポロとこぼれる。


彼女を泣かせることで、こんなにも胸が痛むなんて。


「………ほのか!」


腕を引き寄せ、彼女を抱きよせる。


女神の名を呼ぶことは、王にしか許されていない。


でもそんなこと知ったことか……!


ボクは彼女のことが……!


「レヴィン……様」


ほのかが困ったような顔で、ボクを見上げる。


「好きだ」


たった三文字の言葉を言うのに、ずいぶんと時間を要した。


「行くな、君を王の元へ行かせたくない!」


ほのかを腕の中に包み込んだ。


「レヴィン様……!」


ほのかの頬を涙が伝う。


ほのかを抱きしめると、彼女がためらいがちにボクの背に腕を回した。


ボクはひどい領主だ。領地と女神を天びんにかけ、彼女を選んだのだから。





★★★★★

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る