第6話水たまりをのぞいたらそこは異世界でした~金髪碧眼の王子様に一目ぼれしちゃいました・6

―ヒロイン視点―



「王子、なにごとですか? それとそっちにいる女は……」


赤い髪の男性……えっとたしかドミニクさんと呼ばれていたような?


ドミニクさんが、王子ごしに私を見て眉を寄せる。


「無礼な物言いをするな! このお方は伝説の女神様にあらせられるぞ!」


「「ええええッッ!?」」


王子様の言葉に、ドミニクさんが声を上げる。


わたしもびっくりして、ドミニクさんと一緒に叫んでしまった。


女神……? えっ……私が? なにそれ、どういうこと??


「女神って、おとぎ話に出てくる、あの女神様ですか?」


「そうだ、この国の民なら誰でも知っている、イオニアスの国が困窮(こんきゅう)したとき、天より舞い降り、この国を救うと言われているあの伝説の漆黒(しっこく)の女神様だ!」


うわぁなにそれ! 私知らないよぅ~~! 私はただ水たまりをのぞいたら、水たまりの中に吸い込まれて、ここに落ちてきただけだよ~~!


「たしかにおとぎ話のとおり、この国にはない漆黒の髪と瞳。ですがレヴィン王子、この女……いえこのお方が、天から舞い降りてきたというのは本当なんですか?」


「ああ、間違いない、ボクがこの目で見た」


いやいやいや、空から落ちてきただけですから。舞い降りてなんかないですから。


黒い髪と黒い瞳なんて日本じゃ普通だし。


「め、女神様とは知らずご無礼の数々、ひらに、ひらにご容赦(ようしゃ)を!」


ドミニクさんがひざまずき頭を下げる。


うわぁ、やめて! ひざまずかないで!


「あの、私は大丈夫ですから……」


「女神様はなんとお心が広い!」


ドミニクさんに拝まれた。勘弁して~~!


「ドミニク、馬車にボクの替えの服があるだろう? 持って来てくれ、このままでは女神様が風邪をめされてしまう。いや女神様は風邪をひかないのかもしれないが、私たちの目には刺激が強すぎる!」


「えっ? 女神様どうかされたんですか?」


「女神様は、一糸纏(いっしまと)わぬ姿で降臨(こうりん)された。どうやら天界では服を身に付けないらしい」


「なんと!」


着ます! いつもはちゃんと服を着てます! 着てた服がどっかにいっちゃっただけなんです!


何かものすごく誤解をしている二人に、私は思いっきりツッコミを入れたかった。





★★★★★

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る