13.日々徒然。

 早朝の水くみやらが終わり、朝飯を終え、軽く鍛錬を終えると、ミカゲは溜まっていた仕事をこなしていく。


 ティタの装備もそうなのだが、湖の村で使用される刃物や調理器具の手直しや調整などだ。


 特に魔物を使った刃物などは痛みもひどく、よほど質の良い刃物などで無ければ、

錆や刃こぼれ、劣化などを起こしやすい。


 主婦や料理で使用する包丁の研ぎなおしや打ちなおし、それらが順序的には早く、ティタも手伝いながら進めていく。


 打ちなおしにしても握りの部分の解体やバラしも器用にこなすので、ミカゲはまず二人で研ぎで済むものと打ち直しとに大きく分け、研ぎの作業を進めていた。

 

 研ぎに使う表面のざらりとした四角い石の台ともう一つは滑らかな四角い石の台。

 この石の表面に水をうち、表面に浮いた水滴の中に刃先を滑り込ませるように研いでいく感じだ。

 荒い石で研いでいくと刃先の曇りがゴリゴリと削れていく。

 粗方削り落とし、今度は滑らかな石でゆっくり研ぎ始める。

 はじめは抵抗があるものの、そのうち刃先が滑らかになり、今度は石と刃先が水滴の膜で吸着するように滑らかになる。

 そこまでいけばなかなかの切れ味に迄なっている。


 かなりの数があった研ぎなおしも、二人いればなかなかのスピードで片付いていく。

 ミカゲ一人だと数日はかかる内容を約一日で。

 取っ手の加工なども握りを新調したりした。

 

 区切りの良いところで一度仮眠をとり、夜、炉の火の見易い時間から打ち直しの刃物や器具をやり始める。

 二人して炉に入れなおしては打つため、音もそれぞれだが、時間に合わせて、ルマリアやステイシアも寝起きして作業を手伝っていた。

 ルマリアは昼間研いだ包丁などに少し油を塗り、表面のつるりとした紙で包んでいく。

 柄の所に別の紙で名前を書き、タグの様にしてそれを箱にきれいにしまっっていく。

包丁などにミカゲの店の刻印が打たれているのだが、その下に数字があり、

 その数字をまとめた紙に依頼主の名前などが書かれている。

 タグにはその名前が書かれているので間違っていても目安にはなる。

ステイシアも箱を持ってきたり、名前の書かれたメモなどを用意したりと作業を手伝っている。


 炉のある鍛冶場の方から小気味良い槌の音が聞こえてくる


「こうゆう音を聴きながら飲む酒も美味いんじゃがのぉ」

 ステイシアの呟きにルマリアは微笑みながら作業を淡々とこなす。

「まるで打楽器のようですね」

「ほう、ルマリアは楽器も判る口か?」

「街などで聞いたことはあります。ミカゲ殿もフエ?という筒も吹きますし」

「そうじゃな、あいつも多趣味じゃったw」

「ですよね、ミカゲ殿は実に多才です。武芸もさることながら料理や娯楽に関しても・・・何か一つでもミカゲ殿を越えたいものです」

「なんじゃ、ルマリアもまけずきらいかのぉ?」

 ニマニマと悪戯顔のステイシア。

「せめて料理や女性らしいところで勝ちたいのですが、勝機が見出せません」

「まぁ、ヤツは趣味を通り越して職人じゃからなのぉ・・・」

 ステイシアもそこは同情せざるを得ない。

「奴は大きな子供じゃから好奇心を持ったらトコトン突き詰めるでな。この鍛冶場も自身の力に堪えれる武具がなくて自作を始めたのが発端じゃからな・・・」

どこからか取り出した白ワインのコルクをあけ、グラスにそそぎながらステイシアは言った。

 

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