第3話

一時間後

敬太から配信を半ば乗っ取った雪が強制的に終わらせた。さっきまでずっとニコニコ笑顔を浮かべていたが、終わった瞬間すっと笑顔が消える。

「おい雪!!なんで配信慣れしてんだよ!!」

感情に任せて怒りをぶつけてくる敬太。冷ややかな目で雪は言う。

「別に?なんでもいいでしょ?」

「俺の生き甲斐を潰しやがって!!!」

雪が主導権を握ってからどんどん人が増えていって、敬太の最高記録を越したのがよほど悔しかったのか、どんどん詰め寄ってくる。

「なんでだよ!!なんで慣れてんだよ!!!教えろよ!!!」

怒りはピークを迎えていた。一度なだめる為に水を飲ませ、冷静になってから話し出した。

「昔に配信やってたからだよ。」

「は?どんなだよ。どんな配信してたんだよ。」

「歌ってみたとか?」

雪が小さい頃。お父さんがまだいた頃は雪の家はお金持ちだった。習い事もたくさんしていたし、なに不自由なく暮らしていた。習い事の一つにボイストレーニングがあり、雪はそれを気に入っていた。それもあってか、雪は小さい頃から歌うのが好きだ。そして上手い。配信で歌ってみたをやるのも当然だ。

「履歴は?」

「消した」

「フォロワーは?」

「20万とかだったかな?覚えてないや」

それを言った途端、敬太の目が変わった。雪に飛びついてきて質問を次々投げかける。

「いつ?」

「中学生の時だったかな〜」

「誰と?」

「一人だよ」

「名前は?」

「『みゃーち』だったかな」

「は⁉︎みゃーち⁉︎それはないだろww」

小学生からお年寄りまでが聞き入ってしまう美声を持って、数年前に配信界に突然出てきて突然いなくなった『みゃーち』。みんなの間では「台風の歌姫たいふうのうたひめ」と呼ばれている。

「お前がみゃーち様とかww」

「なんで様をつけるの?」

「そりゃ、俺みゃーち様大好きだからだよ。あの声。むっちゃ好きだよ。俺が配信始めたのもみゃーち様のおかげだし。」

「へーそうなんだ。」

「んで?wwお前の名前は??」

「だからみゃーちだって。」

しつこく聞いてくるのでいらつきながらぶっきらぼうな答える。

「お前がみゃーちなわけないだろ!本当なら証拠見せてみろよ!!!」

どうだっという風に自信満々で言い捨てる。雪はふら〜と立って

「じゃあ着いてきて」

と言い、家を出た。

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