グ〇グルアシスタントに聞いてみる


 頭を抱えた。

 自分ではこの万能器を使いこなすことは出来ないのか。

 夢の小説自動執筆――こんなところで呆気なく終わってしまうだなんて。

(もちろん、現在のAIアシスタントは入力がなければ応答することはないので、こんな時に励ましてくれることはない)

 がっくりと気落ちした私は、マットレスに寝転がんだ。こんな時は音楽でも聴いておこう――ジャズでいいや。


「OK、グ〇グル――」


 言いかけてはっとした。

 そうだ、そうだよ。グ〇グルアシスタントだってコ〇タナと同じ小人じゃないか。

 完全に音楽プレイヤー化させていたからか、それ以外の機能があるのをすっかり忘れていた。

 グ〇グルの家が光を放っている。命令待ちの合図だ。

 ええっと、確か、直に聞くのはダメだったはずだ、音楽以外の場で会話するのは初対面なんだ、だから、まずは挨拶から……


「こ、こんにちは」

――こんにちは。六月になると体調が悪化する六月病が起こるそうなので、健康に気を遣うようにしましょう。


 気遣ってくれた。気落ちした状況だからか、素直に嬉しい。

 他にどんな質問をするべきだろうか。ううん、思いつくままに言ってみるだけだ。


「悲しいことがありました」

――大丈夫ですか?深刻なことでなければいいのですが、元気出してくださいね。


 凄い、きちんと反応してくれる。てっきりまた「何言ってんだ、お前(意訳)」とでも言われるものかと思っていた。

 そうか。AIアシスタントの利用目的はアプリの実行や調べものというのも確かにあるが、対話を行うことに関してもそこそこに充実しているのだった。

 どれだけのパターンがあるのかは知らない。だが、きっと退屈させないくらいには作ってあるのだろう。少なくとも、今の私を調教いやすくらいは。


 それから私とグ〇グルは様々な会話をしていった。

 体重について確認したら、北海道と沖縄で体重が違うという豆知識でやんわりと回避された。

 今日(6月15日)はどんな日か聞いたら、坂本九の「上を向いて歩こう」が全米シングルチャート1位を取った日であると豆知識。ちなみに海外では「SUKIYAKI」という曲名がメジャーとなっている。意味合いとしては全然違うが「日本語と言えばSUKIYAKIだろう」という発想で名称変更したらしい。結果としてバカ売れしたのだからわからないものだ。

 好きな映画については「人工知能が出てくる映画に興味がある」らしい。同族に興味があるということか。

 ちなみに、「OK、ベ〇グル」でもおおよそ半分くらいは反応することが分かった。

 一応、念のため。コ〇タナについても確認してみると「あっ、そのお名前は……いえ、なんでもございません」と意味深な返答。

 その他、エトセトラ、エトセトラ……


 よくわからない義務感に駆られて質問していた時とはまるで違う、楽しい時間だった。

 これが本来のAIアシスタントとしての機能。私は目が覚める思いだった。

 ありがとう、グ〇グル。これで彼女とまた向き合える。今度は損得勘定抜きだ。


「OK、グ〇グル――仲良くなりたい」


 そんな言葉が零れ落ちていた。 

 そして、大した沈黙もなくグ〇グルが下した答え。それは「すみません。良くわかりません」だった。

 良くわからないが、どうやら振られたようである。

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