拝啓、転職失敗しました

第8話 拝啓、チョイスミス

拝啓、転職失敗人間様

　私の名前は、梅山　徹　24歳。この度転職しました。新卒で入社した前職では、新人指導と言う名のしごき、いじめに苦しみ、逃げるように転職しました。なので、今回は失敗しないように、研修や教育に関してかなり注意深く調べました。

　入社後、1カ月本社にて技術研修のち各支店にて現場同行しながら技術力を深めてもらい、6カ月後に技術力テストに合格してから一人で現場対応に行ってもらいます。

　求人には、なかなか手厚い教育方針が書かれており、さらに面接で確認すると、

「同行期間中は、とにかく現場に出て作業を覚えていく事と経験を積む事をやって貰います。また、不定期ではありますが、新人研修以外に6カ月の間に数回は本社研修所にて研修はあります。研修は少し厳しいですが、梅山君の配属する大阪支店は年配者が多いので、そんな厳しい人はいないですよ。」

　前職の様な事にはならないと思いここに決めました。

　この会社は、小さな設備会社で電気設備や警報装置、警備用設備機器を扱う会社で、トラブル対応等は24時間対応しており、仕事的には忙しそうな会社でした。私は、元気だけはありましたので忙しい事に関してはあまり気にはなりませんでしたので、ここに決めました。

　入社し、1カ月目の技術研修。宿題が出たりと、やや厳しい感じでしたが、熱心に指導して頂きました。そして大阪支店に配属。お話通り、やや年齢層は高めには感じました。とは言っても、20代はいないですが、30代の方は2名いて、私が一番年下のやりやすい職場でした。

　お話通り、大阪支店初日から現場同行。ビルの設備のトラブル対応をしたり、他社の警報対応員からの連絡を受け、警備用設備の修理対応に行ったりと、確かに少し忙しい仕事でした。また、24時間対応なので、夜間担当の方が夜間も対応しており3カ月経つ頃には、私も夜間対応担当の方と同行しました。

　夜間は、急なトラブル対応がメインで瞬時の判断が求められる難しい仕事でした。比率的には警備用設備の対応が多い印象でした。警備用設備の対応は、警備機器設置先に入り、センサーやカメラを修理したり交換したり、メイン制御盤内の修理をしたり、なかなかレベルの高い仕事でした。

　そんな難しい仕事でも、事前に注意深く調べた甲斐があり、本社研修等で、かなり手厚く、皆さん熱心にご指導いただきました。心配していた、いじめも無く、6カ月目の技術力テストに見事合格しました。

　7カ月目から一人で行動することになりました。若いこともあり、夜間対応担当になりました。そんなある日、警報対応員より警報装置故障の連絡があり、現場に向かうと、そこは大きな倉庫でした。倉庫内のセンサーの故障でした。

　夜間に、大きな倉庫に一人、大きな扉の上の方に付いているセンサーを脚立の上から触っていた時、遠くの方から物音が・・・びっくりして脚立から飛び降りました。その際に少し足を捻ってしまいました。痛さを我慢し、息をひそめていましたが、その後大きな音もなく、足を引きずりながらその日は結局何事もなく、作業完了しました。

　また別の日、山の上の方にある会社の警報装置故障との連絡、作業が終わり車に乗ろうと車に向かっていると、動物の姿が・・・建物に隠れ、遭遇することはありませんでしたが、夜間の動物はかなり怖かったです。

　そう、この会社は危険な作業でも一人で対応する会社でした。先輩に聞いたところ、今まで大きな事故は起こっていませんが、私と同じような経験やもっと怖い経験をされた方はたくさんいらっしゃいました。

　こんなことを繰り返していたら、きっと大きな事故に遭うと思い、退職を決意しました。

　教育、研修にばかり目が行って、仕事の本質部分に注目していなかった私の完全なチョイスミスでした。

　退職日、上司から

「なかなか新人が定着しないんだよねー。なんでだろ？」

「本当に分からないんですか？それが一番の原因ですよ。」

　その後、教育等の待遇面に関して大きくアピールしている求人は、なにか隠していると思う事にしています。

　今は、私達求職者が面接の際に自分を良く見せる為に、いい事を言うのと同じで、会社側も会社の事を良く言う事は、「当然ある」と思い、転職活動をしています。

敬具