世界詩箱

戸 琴子

疲れ——宇宙観

上昇する螺旋らせんの宇宙に 引き上げさらわれるまま回転し

息も絶え絶えの部屋のなかでガスごと早送りされる時間に

数多あまたの思い出を吐き出す走馬灯見たく巻き戻る巻き戻る

窓の外は久遠くおんの黒い空間

ほんのごくわずか星など見えるか

床に石ころが置いてあるけれど

その隣にはほこりが浮かんでいて

ぐあんぐあんとかかる重力に

溶けそうになってしまう

壁一面の本棚にもたれる私は

ああ なんて無力な

ああ 可笑おかしな心だわ

正面の窓の外ばかりを見ている

景色は突拍子とっぴょうしだけでどしどし流れて

それだけ見てると洗われるのだ

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