第9話 あの子の想い……(後編)

 えっ?中2と言えば色々多感なお年頃、続きは?……って、何期待してるんですか?もう……


 た、確かに私も続きがあったなら……って、と、都会と違って狭い集落はいろいろ大変なの。例えば、そういった時に必要な教科書に載ってる『アレ』なんか……近所にコンビニなんて無いし……たしか役場前の商店街の薬局にはあるって先輩は言ってたけど、そんなとこで買えるわけ無いじゃないですか!彼もそんな勇気は無かったし……

 

 だ、だから私たちはその後も純粋な愛プラトニック・ラブをゆっくりゆっくり育ててたんです!もう……


 じゃ、デートなんかはどこで……ですか?

 例えば、役場横の図書館で一緒に勉強するとか……だって、彼は県内有数の進学校志望だったから……だから私もそこに行きたくて、一所懸命勉強したの。ずっと『しゅうちゃん』と一緒にいたかったから。だから一緒に合格した時は本当にうれしかったなぁ。


 高校進学後は列車で大きな街に通学できたので、お休みの日は彼におねだりして時々一緒に出掛けたなぁ。一度だけだけど、その街から高速バスに乗って映画の世界が楽しめるテーマパークに行ったこともあったなぁ……もちろん、日帰りだったけど。


 学校では、私は元々料理が好きだったから『お料理同好会』に入っていろいろ作って……『家族にも味見してもらう』と言ってお弁当箱に詰めて……図書室で勉強している彼と待ち合わせ、帰りの列車の中で彼に食べてもらったり……


 手芸が得意な子と友達になって編み物を教えてもらってからはひたすらマフラーや手袋を編んで彼にプレゼントしたっけ……だって、彼ったら制服のネクタイを『締めるのが苦手』って、冬場は首元が寒そうだったし、時々ネクタイを締めてあげても『苦しい』ってすぐ緩めるし……まあ、そういったところも可愛いんだけど……


 でも、学年が上がるにつれ彼は勉強ばっかりになって、少しずつ私から離れちゃって……私、彼に嫌われたかな?どうしたらいいんだろ……えっ?あれ?泣いてないよ、うん、泣いてないよ、私、多分……

 

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