第2話 騒音拒否ババァ

 近所の公園は会話が禁止になっている。


 正しく言えば、公園の中では静かにしましょう。という、看板が立っているだけだが、実際に物音を立てると、警察官がやってくる。面倒臭そうに、近所の人から通報があったので、静かにしてくださいね。と注意をされるのだ。


 普通の人は、警察官に反論はしない。日中に公園で会話をすることが禁止されていることのバカバカしさを感じながらも、警察官の視線が示す一軒の家を睨みながら帰っていく。


 杉並達也が、気に入らなく思ったのは二つ。一つは公園で会話をすることが禁止されていることの理不尽さ。もう一つは、警察官が、注意しに来ること。


 五月蝿いって騒ぐくらいならば、耳栓でもしていろ。そんなことを杉並は考えながら、罠を仕掛けた。安いスマホを幾つか用意する。そして、公園の幾つかの箇所に隠して設置する。


 そして、スマホを遠隔操作して、騒々しい会話を繰り返させる。


 すると、十分もしないうちに警察官が現れる。その瞬間に、スマホを停止させて静かにさせる。一瞬のうちに静寂に包み込まれた公園で、警察官は、一周して変哲がない事を確認し戻っていく。


 しめしめ、上手くいった。杉並はそんな笑みを浮かべながら、再びスマホを動作させる。今回は、どれくらいで警察官が戻ってくるか。と隠れながら時計を見ていると、五分も経っていない。さっき来たのと同じ人物のようだ。お疲れ様。杉並がスマホを停止させると、公園は再び沈黙に包まれる。


 警察官は今度はパトカーから降りてこない。カーウィンドウを開いて騒音が発生していないことを確認する程度だ。


 だから、三回目の騒音攻撃の時に、警察官が現れなかったのは予期していたとおりだった。多分、クレーマーの訴えを無視したのだろう。


 さあ、これからが本番だ。杉並は、ある家からババァが出てくるのを見て、スマホを強く握りしめる。そして、一つのアプリを動作させる。


「しばくぞ~、さっさと引っ越し~」


 幾つもの音声が流れ出すと、狂ったようにババァは箒を持って公園を走り回っていた。



お題:壊れかけのババァ 必須要素:スマホ 制限時間:15分

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る