第22話 丁寧なリュカ

 タマ子は家畜小屋にやって来た。友達になったリュカに会うためだ。

 リュカはヤギの世話をしていた。


「リュカー」


「タマ子王女様、ご機嫌よう」


「タマ子って呼んで、それと敬語はなしね!」


 タマ子はノアに言った同じ事をリュカに言った。


「それは難しいですね。僕には出来そうもないです…」


「えっ……なんで?」


「なんでと言われても…親からそういう風に育てられたからでしょうか。別にタマ子王女様だけではないですよ。皆に丁寧語を使ってますね」


「そうなんだ…。わかった!じゃ王女様だけ無しで!」


「分かりました。タマ子ちゃんですね」


 タマ子は嬉しそうに微笑んだ。誰からもちゃん付けでよばれた事が無かったからだ。


「タマ子ちゃん、こちらに来て下さい」


 リュカはタマ子を奥の子屋に誘った。そこには産まれたばかりの子やぎがお母さんのお乳を飲んでいた。


「わぁー、可愛い」


「でしょ?昨日産まれたんです。お母さんヤギはとても頑張ったんですよ」


「リュカがちゃんとお世話したの?」


「そうですよ。こういう時は泊まり込みですが、とてもやり甲斐がありますね」


「リュカはずっと家畜小屋で働くの?」


「もちろんです!どうして?」


「馬の世話をしているノアは戦士になりたいって言ってたから」


「ノアとも友達になったんですね!」


「知ってるの?」


「もちろんです。小さい頃からよく遊んでましたから」


「そうなんだ!」


「彼は昔から戦士に憧れていました。きっと強い戦士になれると思います」


「うん!私も応援する!それより仕事を手伝わせて」


「はい、いいですよ。ヤギのミルクを搾ってみますか?」


 2人は小屋を移動してリュカが教えてくれたように搾るタマ子。必死に搾るがなかなかリュカのように上手くいかない。何度も挑戦するタマ子を見てリュカはとても感心した。


「タマ子ちゃんはきっといい女王様になるでしょうね!」


 そう言ってもタマ子は返事もせず懸命に搾る。そんなタマ子を見てリュカの目は輝いていた。

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