第21話 カルチャーショック

 次の日、タマ子は訳あって夕方ノアの仕事終わりに馬小屋にやって来た。


「タマ子どうしたの!もう仕事は終わりだよ?」


「うん、わかってる…実はお願いがあるの」


「なんだい?」


「ノアの家に行ってみたいわ」


「なんだ、そんな事か!いいよ、行こう」


 2人はノアの家を目指して歩き出した。


「でもなんで家に来たいの?」


「だって私はお友達の家に行った事ないんだもの」


「そうか!好奇心ってやつだな」


 そう言ってノアは笑った。


「本当にタマ子は面白いな」


 やがて1軒の平屋に着いた。両隣もずっと同じ家が建ち並び間違えそうなくらいだ。


「さっ、入って」


 中に入るとすぐにキッチンがあり食卓が置かれていた。奥にベッドが3つ並んでいる。それだけで部屋は終わりのようだ。あとはお風呂場とトイレのみ。

 タマ子は驚いた。ここなら1人の時間なんてない。キッチンも初めて見るものだった。全く違う環境になぜか悲しくなった。


「どうしたんだい?食卓につくと良いよ」


 そこにノアの両親であろう2人が愉快に笑いながら帰って来た。


「あらま、可愛い小さなお客様だねぇー」


 母親のシーラがタマ子を見てそう言った。


「初めまして」


「今夕飯にするから食べていきな」


 シーラはエプロンを付けスープを温め始めた。


 食卓に並んだ物はパンと玉ねぎの入ったスープだけだった。皆食卓についた。


「さ、食べてねっ!」


 皆お祈りをして食べ始めた。タマ子は硬いパンを頬張る。なかなか噛めずに飲み込めないでいた。


「多分タマ子には口に合わないだろうな」


 必死で噛んでいるタマ子を見てノアが言った。


「タマ子?!」


 シーラは驚いて奇声を上げた。


「おかしいと思っていたよ。ピンクの髪なんぞタマ子王女様しかいないもんな!」


 ノアの父バキがそう言った。


「まぁ、無礼をお許し下さいませ。タマ子王女様とは知らずに…それにこんな粗末な物をお出ししてしまって……」


 シーラは立ち上がり申し訳無さそうに詫びた。


「ノアもちゃんと紹介しなさいよね!」


「タマ子はね、他の王族と違うんだ。俺たちに寄り添いたいって思ってくれているんだよ。小さいけどしっかりしたヤツなんだ。だから俺は友達になった」


「ヤツだなんて!もうノアったら…」


「貴重なお食事ありがとうございました。気さくにお付き合い頂けると嬉しいです。ご馳走様でした」


 タマ子は頭を下げその場を去った。ただ悲しかったのだ。皆は何も悪くは無かった。ただ悲しかった…。

 走りながら初めてのカルチャーショックを味わい涙を拭った。

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