鳥かごを一つ、覗いてみましょう。

通い慣れた通学路を照らす淡い夕日。
おだやかであたたかい黄昏色の中で、
「今日一日の自分を全部燃やしてしまいたい」
そう考えたことが何度かあります。

傷ついた。傷つけた。
嘘をついた。嘘になってしまった。

積み重なった小さな失敗に立ちゆかなくなり、
もう二度と学校になんか行きたくないと肩を落とす。

皆さまにもきっと、そういったご経験があるのではないでしょうか。

教室の中にすし詰めにされた雛たちは、
常に協調と同調を求められています。

しかし雛たちは、生まれながらに知っているのです。
誰しもが平等ではなく、決して分かり合えない相手もいることを。
遠い日の私たちがそうであったように、知ってしまっている。

出口のないその賢しさは、時に「いじめ」となって現れます。
しかもその多くは、大人たちの目を擦り抜けている。

パッキングされた教室では、部外者になるのが難しいのです。
少なくとも私がいた教室ではそうでした。
一人残らず全員が、常に加害者か被害者に属していました。

我が身は可愛い。我が身は可愛い。我が身が可愛かったがために。

潰してしまった友情がありました。
殺してしまった笑顔が、そこにありました。
だからこそ今日の自分を、「全部燃やしてしまいたい」と願いました。

この物語では、そんなありふれた鳥かごの中の一つを覗くことができます。
擦れて傷つけ合う雛たちの、誰一人として悪者ではない物語です。

どうかその結末に、夕やけ色が微笑まんことを。

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