【SNSでの沈黙は死に似ている。】/本文より。

未知なる世界への入り口は、元カノが残したストッキングでした。

女装というセンシティヴなメインテーマを主軸に置きながらも、
複雑に絡み合う現代の承認欲求のありのままを描いた意欲作です。

自分が成りたいものと、人から求められる姿とのギャップに苦しみ喘ぐ。
主人公の生々しい苦悩には、他人事とは思えないほどの共感を覚えました。
創作界隈に生きる方には、尚のこと強く訴えかけるメッセージ性があると思います。

けれど。

生きとし生けるすべての人たちが、
それぞれに自分自身の人生を飾るクリエイターである。

私は終盤の展開において、そのように読み解きました。
私たちは何を創り出すでもなく、それでいて常に何かを創り出しているのでは、と。

私たちの毎日は有象無象でありながら、同時に唯一無二である。
たとえ錯覚だとしても、そのような救いを感じられる一瞬を見た気が致します。

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