第四十三話 奥義発動!


 替えの木刀を携え台上にもどった大地と松浪は、静かに再開の合図を待っていた。

 観戦記者席に陣取る虎之介と祐馬が心配そうに大地を見あげている。この席の本来の主である辰蔵はまだもどってきてはいない。


「肩の調子は大丈夫みたいやけど……」


「やはり松浪さまはあなどれませんね。剣も速い。狙いも正確だ」


「顔もええし、そのうえ大身旗本のお坊ちゃまや。

 毛並みも充分で剣も強いときよったら……ううむ、ここはなんとしても大地を応援せにゃおさまらん気がしてきたで」


「負けた腹いせですか?」


 ボカ!


「またすぐ殴る。なんなんですか?」


「じゃかあしい! 顔のいいやつは全員、わいの敵や!」


「ったく、無茶苦茶なひとだなあ」




 どうやら木片の片付けが終わったようだ。

 行司は大地と松浪を中央に呼び寄せると構えをとらせた。


「続行!」


 試合再開が告げられた。

 すると――

 それまで不動の構えをとっていた松浪の木刀の先が揺れた。

 セキレイの尾のごとく上下左右に揺れている。

 意外な構えに大地は戸惑いをみせた。




「出るぞ、真桜流奥義しんおうりゅうおうぎ――千手照応剣せんじゅしょうおうけん!」


 諏訪が叫ぶようにいった。



   第四十四話につづく


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