寂しさと向き合うことは、あまりにも困難でつらい……。

この作品のキャッチコピーには、『風俗嬢がボーイを殺して廃校でひと夏を過ごす話』との文字が踊る。
シンプルなキャッチは、見る者の心に引っかかる。
このキャッチにひかれて、ココまでたどり着いた人も多いと思う。

この小説は、キャッチコピー通りの物語だ。
本当にそれだけの物語なのだ。
嘘偽りなく、過不足なく、それだけの物語だ。

それなのになぜ、この物語はこんなにも魅力的なのだろうか。
どうしてこれほどまでに、心をかき乱すのだろうか。

不器用にしか生きられない女性たち……
彼女たちの寂しさが、たまらないほど愛おしい。

現代を生きる人達の多くは、寂しさを抱えている。
社会的な共同意識は薄まり、個として在ることが要求されている。
個として立つことは、ある人にとっては心細く、そして寂しい。

自分で生き方を選び取った時、この種の寂しさがあらわになる。
風俗嬢という生き方を選び取った彼女たちは、その自由と引き換えに寂しさを抱えている。
そしてこの寂しさと向き合うことは、とても困難だ。

彼女たちの夏休みが、永遠に続けばいいのに……
そんな風に思ってしまう。
永遠に続くはずもないのに。

ぜひご自身で、彼女たちの寂しさを追体験してほしい。
そして彼女たちと一緒に、寂しさに向き合ってほしい。
生き方に対する価値観を、見直すキッカケをくれる小説です。

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