第9話 元引きこもりは思案する

 私、三雲茉莉みくもまつり迷宮ダンジョンで迷って多分5日目。

 私は、新しい階層への階段を見つけ下りた。

 

 しかし、その階層はトラップの配置がなんともいやらしく、トラップに引っかからないように注意するのに精一杯で、なかなか攻略が進まなかった。

 攻略法を見つけられないまま私はこの階層で戦い続けている。


 いや違うかな。まともに戦ったのは数回ほど。それ以外は。魔力操作で魔力を一箇所に集中させ、それを少しずつ勢いをつけて飛ばす。そうやって魔人を一人残さずみんな殺してきた。

 ずっと繰り返しやってたら【略奪者りゃくだつしゃ】っていうユニークスキルが手に入った。

 これは使用者が相手にダメージを与えると、低確率でダメージを与えた相手からというものだ。更に、倒した相手が固有スキルを持っていた場合、何らかの条件が合えば、その

 あ、固有スキルっていうのは、魔人や魔物がそれぞれみんな持ってるスキルで、ノーマルスキルとユニークスキルの中間にあるようなスキルだよ。

【略奪者】を一言で言うとチート。

 これのおかげでした。ちなみに羽は普段から生えているわけではなく、想像すれば生えてくるような感じだ。それに怪力と言っても、腕の太さや大きさはに何も変わっていない。これも想像するだけで使えることがわかった。

 

 さらに、魔人達の落とした爪や歯で武器も作った。

 武器の作成、加工を一心不乱いっしんふらんに繰り返していたら【鍛冶師かじし】っていうノーマルスキルをもらった。前にもらったユニークスキル【錬成】と一緒に使えば、もっと良質な武器も作ることができた。

 

 あれこれ考えていたらユニークスキル【並列演算へいれつえんざん】を獲得した。これは、いろんなことを、同時に複数考えられるという便利なスキルだ。

 

 更に、魔力操作の練習をしていたら精霊せいれいも見つけた。

 精霊って言うと妖精みたいなイメージがあったんだけど、この世界の精霊は実態がなく、石や水、土、風なんかに憑依して、かろうじて生きているらしい。

 この精霊たちは一匹一匹の能力は低いけど、数が集まればすごい力を発揮する。塵も積もればなんとやら、だね。ただ精霊たちはすぐに死んじゃうからしっかり守ってあげなきゃいけない。

 

 で、この精霊達と契約けいやくすれば、力を借りたり、仲良くなったりできるってわけ。

 契約って言ってもそんなに堅苦しいものじゃないよ?

 

 自らの魔力を精霊たちに定期的に分けてあげること、魔人や魔物から守ってあげること、そして自らの力を示して、精霊に認めてもらえれば契約完了。

 私はこの階層の精霊たちと片っ端から契約して回った。幸い魔力は無限と言っていいほどあるから、すべての精霊と契約しても20%も減らなかった。

 

 そんなことをして、すべての精霊と契約し終えると、【精霊使い】と【契約者】のユニークスキルを手に入れた。


【精霊使い】はそのままの意味で、契約している精霊たちの言葉を理解し、使役しえきしやすくするスキルだ。


【契約者】は、精霊との契約が成功しやすくなるスキルだ。さらに、定期的に魔力を上げなくてもいいことが強みだ。


 更にこの2つを獲得したことがキーになったのかはわからないけど、【中級精霊召喚ちゅうきゅうせいれいしょうかん】というスキルに近いタイプの魔法も獲得した。

 そう、魔法である。とても嬉しいのだが、残念なのが、この魔法が攻撃よりも防御に向いていたことだ。

 まぁ防御面も最近心配だったからいいんだけどね……。


 試しに召喚を行ってみる。

 魔法陣が空中に現れ、その魔法陣に光がともり、精霊が文字通り召喚された。薄黄色の精霊だ。

 低級精霊は実態がなかったが、中級精霊になると、体を持っているようだった。大きさは手のひらサイズ。顔の造形は魔人よりも人に近い。そして私と同じくらいに顔が綺麗――いやいやそんなことは私にとってどうでもいい。大事なのは防御力だ。


 私は魔力操作で魔力を一箇所に集中させ、圧縮する。

 そして、圧縮した魔力の塊を精霊に勢いをつけてぶつけてみる。


「ちょっとごめんよ――」


 ブオンッッ!!


 実際に音は出ていないが、効果音をつけるとしたらこんな感じだろう。

 魔力の塊は中級精霊に命中する前に消えてしまった。

 中級精霊が、結界を瞬時に展開し、その結界で自らのみを守ったのだ。


 ――あれ?中級精霊って私より強い……?


 そして私はひらめく。

 これならトラップなんて気にしなくても良さそうだ。と。


「いきなりごめんね、私の力はわかったかな?契約してくれる?」


 力を示すっていうのは建前。防御力を試したかったんだ。


「いいでしょう、契約は成立です。あと、中級以上の精霊は、力を示したり、魔人や魔物から守ってあげたり、定期的に魔力を上げなくても契約できますよ」


 ノーコストで契約できるってことなのね……。


「わたしのような中級精霊を召喚できたということは、それなりの実力者ということですからね」


「精霊さん、あなたの名前はなーに?よかったら教えてよ」


「わたしは中級精霊です、名前はありません。もしよろしければ付けていただけないでしょうか」


「うーん……じゃあドイツ語で月を表す『モーント』を少しいじって『モント』って名前はどうかな?あなたのイメージに合ってると思うんだけど……」


「月ですか……いいですね。それにしましょう」


 気に入ってもらえたっぽい、良かったぁ……。


 このあと、私のことや、住んでいた場所の思い出、目的を話してみると、一緒に行きたいと頼んできた。


「私としてはそのつもりだったし歓迎だよ、モント」


「ありがとう茉莉」


 そんなことを話しつつ下の階層へとつながる階段へ向かった。


 仲間になったモントと一緒に私は次の階層へと足を踏み出した――




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 三雲茉莉みくもまつり 人間族




 ユニークスキル:【智慧者ちえしゃ】【忍耐力にんたいりょく】【持続力じぞくりょく】【士気高揚しきこうよう】【孤独者こどくしゃ】【魔力操作まりょくそうさ】【炎熱操作えんねつそうさ】【魔力感知まりょくかんち】【略奪者りゃくだつしゃ】【並列演算へいれつえんざん】【精霊せいれい使い】【契約者けいやくしゃ


 ノーマルスキル:【錬成れんせい】【鍛冶師かじし


 固有こゆうスキル:【飛行ひこう】【豪腕ごうわん(怪力かいりき)】


 魔法まほう:【中級精霊召喚ちゅうきゅうせいれいしょうかんじゅつ




 モント   中級精霊ちゅうきゅうせいれい


 固有こゆうスキル:【???】


 魔法まほう》:【???】

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