第3話 元引きこもりは自分のポテンシャルの高さに驚く

 体力テストの翌日の早朝。

 私は寮のベッドから起き出し、日本でヒットしたボーカロイドの曲を口ずさみながら、朝食を作る。

 自慢じゃないけど、家事スキルだけはやたらと高いんだよね、私。


 さっさと朝食を作り、早めにご飯を済ませる。

 ちなみに今は午前5時。

 早起きでしょ? 褒めていいよ?


 なんでこんなに早く起きてるのかって?


 体力づくりのためだよ。

 正直やりたくないんだけどね……。


 やらなきゃクリフを吹っ飛ばせないし。


 そんな物騒ぶっそうなことを考えながら私は外に出る。

 何をすれば体力がつくかなんてわからないし、とりあえず走りまくればいいよね。

 一時間走ることを目標にしよう。

 水分補給も途中でしなきゃいけないし、水筒も持っていこう。


 ちなみに、生活に必要なものはだいたいクリフが用意してくれる。服屋お金も出してくれた。教会はお金持ちだってわかった。


 優しくしても一発殴るのは変わらないからね。


 さて、準備も終わったし走りますか。


「何日続くかな……」


 3日も続けばいいんじゃないかな。


 なんとなくつぶやき私は寮を出た。





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 10分後。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 疲れた……


「もう……いや、はぁ、はぁ」 


 まさか10分もまともに走りきれないとは……。

 これで英雄なんてよくほざけたよね私……。


 まだ6時。時間はたっぷりある。

 もうちょっと頑張ってから行こうかな。


 あ、水分補給もしなきゃ。


 これを毎日……辛い。

 三日坊主になる自信があるよ。

 坊主じゃなくて乙女がいいけど。


 ちょっと回復したかな。

 よし、また走ろう。




 30分後。


 私は走り続けていた。

 英雄補正なのか私の潜在能力ポテンシャルの高さのおかげかはわからないけど、なんだか疲れない。


 更に10分……


 疲れた。

 ちょっと調子に乗って飛ばしたら一気に体力がなくなった。

 休憩しよう。



 繰り返しているうちに9時になった。

 そろそろ行きますか。


 走ってみてわかったことがある。

 なんと私の体は、何かするたびに、二回目以降は体力の消費が少なくなったのだ。

 わかりやすく説明すると、少し運動しただけで、体が順応じゅんのうし、体力の消費を勝手に抑えてくれるようになったのである

 あんまり説明変わってないな……うん。


 とにかく、これなら三日坊主、いや三日乙女にならずに済みそうだ。


 回復した体力を使い、ダッシュで私は寮に戻った。


 英雄補正最高!!! ひゃっほーい!!



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 寮に急いで戻った私は位相でお風呂に駆け込む。

 汗を流すためだ。

 何故急いでるのかと言うと、時間がギリギリだからである。

 いやー、走るのが楽しくなっちゃってね〜……。

 たまには運動もいいね。


 お風呂から出た私は急いで髪を乾かし、カバンを背負って寮を出る。


 ちなみにこの世界にはドライヤーのような電気を使う道具は無い。

 髪がいたんでしまうのは嫌だが、自然乾燥させるよりはマシだと初日に諦めた。


 元の世界に帰れなかったときには、日本の便利グッズでこの世界を埋め、お金を稼ごうと一応計画してある。


 しかし気にかかるのはクリフの言葉。


『安心してくれ。三雲さんの他にも異世界から英雄候補を何人か呼んでおいたから』


 その召喚させられた人が日本人だった場合、私の計画は破綻してしまう。

 でもまぁ私ってモテてたし、相手が男ならだいたいのことはしてくれそうだし、気にしなくてもいっか。


 そんなことをのんきに考えているうちに教室についた。

 時間は9時45分。

 10時から授業なのでちょっとギリギリだったかな。


「三雲さんおはよう」


 教室に入る直前、アランが私に話しかけてきた。

 そういえばアランしか話しかけてこないんだけどどうしてなのかな。

 編入直後にぼっちとか悲しすぎるわ……

 日本でもぼっちだったから気にしてないんだけど。


「おはよう」


 簡単に挨拶を済ませ私は席につく。


 今日は魔力保有量の検査。

 そういえば魔力ってどうすれば増えるのかな?







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「はーい、じゃあ今日は魔力保有量をテストするわよ」


 とうとう来てしまった……。


 みんなが笑顔で戻っていく中、私は少し沈んだ気持ちで順番を待った。

 裁判所で判決を待つ人の気持ちがわかった気がする。


 そしてやって来た私の番。

 私のクラスは人が少ないからすぐに回ってきた。


「えーっと三雲さん……ね?じゃあ三雲さん、この水晶に手を置いて、あなたの一番好きなものを思い浮かべて?」


 そう言って測定係の先生は水晶を指で示す。綺麗に透き通っていて、みていて飽きなさそう。


 ていうか好きなものを思い浮かべろって言うのは流石にないわー。

 あれかな? 具現化するときにイメージしやすいほうが図りやすいみたいな?


「なんで好きなものを? って顔してるわね。いいわ説明してあげる」


 先生の説明を受け私は思った。


 うん、私の考えたとおりだった。さすが私。


 「ちなみに魔力保有量は枯渇こかつさせて回復、枯渇させて回復を繰り返せば徐々に増えてくるわ」


 いやーこの世界最高だわほんとに。

 なんて言うかほとんどが単純だからね。


「だから三雲さん、落ち込むことはないのよ?努力すれば増えるんだし気長にがんばりましょう?」


「あ、ありがとうございます」


 一応感謝の言葉を言っておく。


 魔力保有量ってやっぱり使えば使うほど上昇するんだね。

 ということはだよ、わたしって順応能力が高いから、魔力保有量って簡単に上がるってことだよね?

 私恵まれてるねほんとに。


 あ。

 そういえばさ、魔力を枯渇させるのってどうやるんだろ?

 私は、なんとなくと言った感じで先生に質問してみる。


「先生、私、魔法が使えないんですが、どうやって枯渇させればいいんですかね?」


「ああ、それならいま三雲さんの魔力保有量を計測したような水晶が、あなたの部屋にもあるからそれを使うといいわ」


 つまり要約するとこういうことだろう、


『この水晶を使うとき魔力が使われるから、これで何回も枯渇させるといいわ』


 ということだと思う。

 輝くようなスマイルでさらりとえげつないことを言う教師である。


「でも魔力が枯渇すると、クラクラしたり、ひどいときには倒れたりするから気をつけるのよ」


 なるほどねぇ……。まあ唯でそんな凄いことができるわけないし、何かしら代償が必要になるってことかぁ……。


 そして明日からの日程に、【魔力の無駄遣い】が加わった。


「それと三雲さん、あなた確か【智慧者ちえしゃ】ってスキル持ってたわよね?それを使えば高速で魔力を無駄づ…ゴホンッ!魔力を効率よく消費できるわよ。スキルは効果をメージすれば使用できるわ。ちなみに魔法は詠唱が必要なんだけどね」


 無駄遣いて……いや私もそう思ったんだけどね。


 ていうか【智慧者】初めて役に立ちそうなんだけど……?


 魔法を使えるのはまだまだ先だろうし、とりあえず枯渇再生ループで魔力保有量を増やしておこうかな。


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