第2話 元引きこもりは学園へ行く

 家に帰ることを決意した翌日。

 私は泣いていた。


 なぜなら、ずっと頑張ってきたネトゲのイベントに参加できなかったからだ。

 そんなことで?なんて思っても口に出さないでほしい。

 私は世界最高の豆腐メンタルの持ち主だから。ん? それって最強なのかな? もうどっちでもいいや。

 

 そこで私はひらめいた。

 ここは剣と魔法の異世界(笑)。

 召喚ができるなら逆もできるのではないのか、と。

 なんでこんな当たり前のことも思いつかなかったんだ……。

 自分のことがいやになる。


 何としてでも帰りたかった私は、クリフにたずねてみた。


「……ねぇねぇクリフさん、私って召喚されんだよね?」


 クリフは何言ってんだと言わんばかりの表情で、


「ああそうだがどうしたんだ?」


 と言った。


「召喚ができるんなら、できないの?」


 私もできないとは思うんだけどね……うん。

 一応聞いておこうと思って。

 クリフは、


「無理に決まっているじゃないか。そんなものがあるなら我々人間族は君たちの世界に行っているはずだろう?」


 ですよねーーー。

 はぁ……そうだよね……帰れるならもう帰っていいよとか言われてるはずだもんね。


「勝手に呼び出したことは申し訳無いと思っている。しかもそれだけではなく、戦争させようとしているんだからな」


 まさかこんなか弱い女の子に前線で戦えとは言わないだろうね。


 しかし、続いたクリフの言葉に私は驚愕することになる。


「安心してくれ。三雲さんの他にも異世界から英雄候補をから」


「は?」


 おっと失礼、耳が音を聞き取るのを拒否しちゃったらしい。


「も、もう一度言ってくれませんか?」


「安心してくれ。三雲さんの他にも異世界から英雄候補を何人か呼んでおいたから」


 どうやら聞き間違いじゃなかったらしい。

 なんか目がキラキラしてるもん。


 なんか複雑……。

 被害者は私だけだと思ってたのに……被害者はもうすでに居たなんて……。

 はぁ……なんでこんなに教会の人間って自分勝手なの。日本人を見習ってほしい。

 ――あ、見習うも何も日本人をみたことがないよね。


「そうだ、三雲さんに伝えなきゃいけないことがあったんだ」


 どうしよう、すごく嫌な予感がする。


「三雲さんには明日から聖教魔法学園せいきょうまほうがくえんに英雄の卵として通ってもらうから。準備しといてね」


 クリフが言葉の爆弾を投下した。

 

 いじめられていたときの記憶がフラッシュバックする。

 憂鬱になってきた。

 しかも編入生か……。

 嫌ってわけじゃないけど途中からって……ねぇ。







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「入ってきて〜」


 先生の声を聞いて私は緊張した。


「こ、こんにちは〜……」


 視線が私に集まる。

 馴れないなぁ……。

 いくらモテていたと言っても、無理なものは無理なんだし、しょうがないと思うんだけどね。

 いつかは慣れるといいんだけど……。


「それじゃぁ三雲さん、自己紹介してください」


 馴れ合うつもりもないし簡潔に行こう。

 なんとなく英雄候補ってことも隠しておこう。

 ミステリアスな人って魅力があるし。


「三雲茉莉です……よろしく」


 男子から歓声が上がる。

 私今普通に自己紹介したよね?

 何も男子にしてないよね? 

 何かやらかしてしまったら……と思うと怖い。勝手に壁を張ってしまう。


「はーいありがとう三雲さん。みんな、三雲さんは英雄候補です。仲良くしてあげてね〜」


 英雄候補って隠したのに〜〜〜〜〜

 まぁいいんだけどね。


「三雲さんの席は……窓側の一番うしろの席ね」


 ラッキー♪ 授業サボれる〜〜



 ちなみにこの学園は寮があって、私はここで卒業まで勉強することになりました。一人部屋だからなんとか耐えられそうで良かった。

 だいたいみんな5,6年で卒業できるらしいけど……そんなに通いたくないのが本音だよ。というか行きたくないよ。

 いくら休戦中と言っても平和すぎない?

 大丈夫かなぁ……。

 

 とりあえず私は教えられた席についた。

 日本の学校みたいで嫌だ……。もう二度と行くことはないって勝手に思ってたのになぁ……。


「三雲さん……でいいのかな?あの……よろしくね」


 そう言って声を掛けてきたのは隣の席のA君。


「僕はアラン・フォード。わからないことがあったら何でも聞いて。これでも僕、頭はいいからさ」


 アランはそう言って笑った。Aはあってたね。


「あ、うん……ありがと」


 とりあえずお礼を言っておく。

 優しいなぁ……。

 最後に優しくされったのいつだっけ……ははは。


「三雲さん、今日の授業は体育だよ。三雲さんは体育って得意なの?」


 うげぇ……。

 体を動かすやつか……どうやって切り抜けよう……。引きこもりに運動させるなんて何考えてるんだろうね。


 とりあえずアランに愛想笑いを返しておいた。





 


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「今日は体力テストよ」


 先生は宣言した。


 もうだめ……体力テストはホントに駄目……。


 三雲茉莉の来世、次回作にご期待下さい。


 私がそんな現実逃避をしていると、アランが、


「大丈夫だよ三雲さん。みんな話はクリフさんに聞いてるから」


 と、小声で教えてくれた。

 アランのやつ、知ってて体育得意なのか聞いてたのか……。

 最低。


 よし決めた。

 クリフ、あなたは絞首刑ね。

 

 私は昔から、明確な目標が無いと頑張れなかったんだけど、今は頑張れそう。


 目標の達成条件はクリフを一発殴ること。


 今の私は誰にも止められない!! わははは!!




 体力テストが終わった。

 簡単に結果を報告しよう。


 まず短距離。

 コケた。痛かった。しかもビリだった……。

 まぁ引きこもりに速さを求めるのは違う気がするしいいでしょ。


 そして持久走。

 開始二分で体の限界が来てしまった私は、誰よりも早くリタイアした。

 更に脱水症症状……。

 やはりこの種目も引きこもりにさせるのは間違っている気がするんだよねぇ……。


 怪我したり、脱水症状になったり、踏んだり蹴ったりだよまったく。



 私は、引きこもっていたことが災いし、最も低いEにランク付けされた。

 別に、ランクなんて気にしてないしっ!  

 英雄がこんなんじゃだめだって思っただけだし!!


 でもランクといっても、この学園での成績だから気にするな。と言われ、少し心が軽くなった。

 

 そして私は、割と真面目に体力をつけようと決意した――。


 あーでも今日はやる気でないし明日からね。




 明日は魔力抵抗値や、魔力保有量を調べるそうです。


 0ってわかってるなら殺らなくていいんじゃないの? って私は思うけど殺らなきゃいけないんだって。面倒だなぁ……。


 私の得意な数学のような頭を使うテストはまだまだ先になりそうです……。

 というかこの世界って数学あるのかな……。





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