第10話 おまけ 侯爵家への挨拶

 留学中で後回しにしていたけれど、長期休暇を利用してエイリークと実家に挨拶に来た。


「お兄ちゃんがこんな大物を引っかけて来るなんて…」

 妹の第一声が酷い。けれど妹よ、兄ちゃんもそう思います。


 父さんと母さんは俺の結婚が難しいと重々承知していたので、手放しで喜んでくれたのだが。


「この侯爵家と侯爵領が丸ごとエイリーク様のヒモにならない様に頑張ります」

 父さん、気持ちは有難いけれど、どストレートに言わないでと思っていたら、エイリークはヒモの意味が分からず、きょとんとしていた。


 その後は侯爵家に出来る限りのおもてなしをした。エイリークは気持ちが嬉しいと喜んでくれていたが、後でこんなに奮発してくれて、後々大丈夫なの?と心配された。


 早く、何と言うかちゃんとした立場になりたいです。特許料は順調に入って来てはいるけれど、まずは特許申請にかかった分を返済。

 負担して貰っている留学費用とかの返済をしつつ、妹の家庭教師の費用とかに回していて、生活費にも領地にもお金がいかない。


 色々ありつつも誰にも邪魔されない環境で、ほんわかエイリークと楽しく過ごしていたら、そこに何故か殿下の先触れが来て空気は一変。

 たまたま近場に来ていたら、俺たちが領地にいると知って急遽期間を延長して立ち寄ったと言われた。余計なお世話ー!


 そう思っていたら、殿下はとことん殿下だった。エイリークが嫁入りする侯爵領がこのままではよろしくないと、伯爵一家と元々話をしていたらしい。

 初期投資はエイリークの資産からにはなるが、侯爵領を普通の領地にするべく色々とテコ入れすることを勧められた。


 後日正式に専門家を入れて…と、どんどん話が進んでいき、父さんも母さんもポカーンだった。

 何故か殿下がいることを聞きつけた黒いお兄様までやって来て、我が家はおもてなしの限界を感じた。お金が無いので一気に増えた食費が重い。


 重過ぎて無理だったので、母さんの実家に資金援助を頼むはめになった。


 殿下もお兄様もそれなりの人数で移動しているので、部屋の掃除にリネンの交換にも大わらわ。

 俺も母さんも妹も、父さんが皆の気を引いている間にこそこそ手伝った。使用人とかまともに雇ってないからね!エイリークが来るから、期間限定で引退した夫婦に来てもらっただけだし。


「なんか…。大所帯になってしまってすまなかったな…」

 殿下、良く見てるな!だけどそこは気が付いても気が付かなかったフリをして!

 こそこそしていた理由も察して!


 殿下が帰りにそっと自分たちと黒いお兄様たちの滞在費を渡そうとしてきて、それをエイリークに見つかって。

 エイリークがお兄様と私の分は私が払いますと言い出して、それを父さんと母さんが見つけて混沌とした。


 俺は最初から受け取る気は無かったって!と叫んでも、どうしようもならないほどの混沌。

 当然の事、いえいえお構いなく、俺が、私が、我々が、の応酬。結局先に帰った殿下も、俺と一緒に戻るエイリークもお金を置いて行った。


 色々有難いけれど、ちょっと格好のつかないエイリークの初訪問になった。

 父さんと母さんは困惑顔の涙目だったけれど、素敵な婚約者と良い友人を持ったなと言われた。そうは思うけれど、色々と情けない。


 妹は殿下にメロメロになっていた。いい奴だもんね。でも妹よ、野生児で王子妃は無理だ。先ずは王立学院へ自力で入学出来る学力が必要です。


 兄ちゃんの特許料と今回の殿下の計画で、侯爵領が少しましになる頃には…妹にもいい話があるといいな。

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チャラ男と眠そうな令嬢 相澤 @aizawa9

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