第42話 小さい避鎮具の使い道?

 避鎮具コムドの中の鎮聖滓ザメインを瓶に移すと、ちょうど瓶がいっぱいになった。


 モフカーニさんがわかっていてこのサイズの瓶を渡したのかは不明だが、どうやら一回の射聖しゃせいで出る量はこの瓶、大きさはパンに塗るジャム瓶くらいのもの一個分くらいって事か。


 俺は『エルフの霊薬』を一本飲み、避鎮具コムドをもう一度『聖塔ミティック』に装着しようとした。



「あ、あれ?上手く入らないな……」



 せっかくなので射聖しゃせい二回目をしようと思ったのだが、避鎮具コムドが上手く装着できない。



「馬鹿ね………避鎮具コムドは……使い捨てよ……」



 ベッドの上でぐったりしていたティアロさんが荒い呼吸をしながら教えてくれる。


 そう言えば最初に装着する時はフリスビーのような円盤状で、それをスルスルと簡単そうに着けてたもんな。


 そうか、これ一個で一回分なのか。



「それにしても避鎮具コレ、便利ですね。まるでこういう事を想定して作られたみたいだ」


「ま、本来の使用目的じゃないし、それは『聖塔ミティック』用の特注品だしね」


「あ、そう言えばさっきも『聖塔ミティック』用って言ってましたね。元は別の用途の物なんですか?」


「………興味あるの?」


「え………ええ、まあ」



 するとティアロさんはゴソゴソとポケットから何かを取り出した。


 それはコインくらいのサイズの小さな避鎮具コムドだった。


 それを両手の指でちょこんと摘まみながら、



「じゃ、じゃあ……私と避妊具コムド……使ってみる……?」


「は………」



 つい釣られて「はい」と言いかけたその時だった。



「おほんっ!!」



 突然聞こえた咳払いのほうを見ると、いつの間にか部屋の入口にラマニアが立っていた。



「あ………ラマニア?」


「お邪魔でしたでしょうか?」


「ちっ………」



 何故だかラマニアの表情が怖い。


 何か怒らせるような事でもしただろうか?



「リン様、鎮聖滓ザメイン貯蔵用の空瓶をお持ちしました」


「ああ、ありがとう。ちょうどお願いしようと思ってたんだ」


「いえ、リン様には頑張って鎮聖滓ザメインを出して頂かなくてはなりませんから♡………なのにまさか、鎮聖滓ザメイン以外のモノを出させようとするだなんて………ねえ?ティアロさん?」



 口調は丁寧だが、顔が笑っていない。


 殺気の籠った視線をティアロさんに向けるラマニア。



「さあ、何の事かしら?」


「とぼけないでください!その右手に持ってる避妊具は何ですかっ!?ヤる気マンマンだったんでしょう!!」


「ふんっ、下品なお姫様ね。まぁいいわ、今日はもう戻るから。じゃあねリン、お姫様」



 そう言ってティアロさんは部屋を出ていった。



「それで……あの、ラマニアは何を怒っていたの?」


「それはっ!………いえ、何でもないです…………失礼します」



 そしてラマニアも部屋を出ていった。


 何だかよくわからないままの俺だけが部屋に残された。


 それにしても、あの小さい避鎮具コムドの使い道って何だったんだろう。


 あれくらいのサイズでの使い道というと………あ!もしかして!



「指サックか!!」



 学校の高齢の先生が使ってるのを見た事あるぞ。


 テスト用紙を配る時、指に嵌めて枚数を数えてた。


 そうか、あれを『聖塔ミティック』用に応用するなんて、さすがモフカーニさんだ。



「………………だとすると、結局ラマニアはなんで怒ってたんだろう」



 その疑問だけが残るのだった。

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