第6話 スマホとオナポ

 翌日、俺はラマニアに連れられてサンブルク王国の城へとやって来た。


 ちなみに宿屋を出る時、宿屋の主人から「ゆうべはお楽しみでしたね」とか言われたが、あれは何だったんだろう?


 それはさておき、サンブルク王城の中に俺用の部屋を一つ与えてもらえる事になった。


 今後はここを拠点として、俺の『鎮火活動ちんかつ』が本格的に始まるんだ。


 いや、それだけじゃない。


 俺自身の鎮火能力ちんかスキルを上げるための訓練、『御鎮法おちんぽう』にも取り組まなきゃならない。


 それがこの『シェインヒール』という世界に鎮火の勇者として召喚された、俺の役目なんだ。



「選択の余地なくお主にこのような役目を与えてしまった事、心苦しく思っておったが、お主がその気になってくれて何よりだ」



 ヴィアンテ様は手のひらサイズくらいの大きさになり、ちょこんと俺の左肩に座っている。


 普段はどこにいるのかよくわからないが、とりあえずいつも俺の事を見守ってくれていて、何かあればこうして姿を現してくれるようだ。



「お主がやる気になってくれたのは嬉しいが、今のお主は先の鎮火活動ちんかつによって聖力せいりょくが尽きかけておる。その状態では『御鎮法おちんぽう』の訓練も無理だ。まずはゆっくり体を休め、聖力せいりょくを回復させよ」


「はい。あの、大体どのくらいでまた射聖しゃせいできる状態まで回復するでしょうか?」


「そうだな、若いほど聖力せいりょくの回復は早いし、あわせて聖力せいりょく回復に効果のある食事を積極的にれば、1~2日で全快するのではないかな」


「そんなに早く………!良かった、ゆうべ射聖しゃせいした後は絶望的な疲労感だったから、もっと時間がかかるかと思いました」



 そんな感じでヴィアンテ様と聖力せいりょく回復についての話をしていると、俺の部屋をノックする音が聞こえた。



「あ、はーい。どうぞー」


「リン様、失礼します」



 入ってきたのはラマニアだった。



「リン様用のこちらの世界でのお召し物と日用品をお持ちしました」


「あ、こっちの世界の服か!確かにあまり目立ちたくないし、ありがとう」



 こっちの世界の服も俺の世界の服とそんなに大きな違いは無さそうだったが、基本的な色使いの傾向が俺の世界より若干じゃっかん派手な印象だ。


 服を着替え、ふとラマニアの持ってきた日用品のかごに目を向けると、長方形のガラスの板のような物が入っていた。



「これは何?」


「はい、これはリン様用の通信端末です」


「通信端末?って事はスマホみたいな物か」


「こちらの世界では『自動案内端子オートナビゲートポート』、略して『オナポ』と呼んでいます」


「へぇ~」



 多少見た目が違うだけで、おそらくはスマホとオナポは同じ役割の道具なのだろう。


 俺の考えを読み取ったのか、ヴィアンテ様が補足で説明してくれた。



「お主の世界では主に電力をエネルギーとして文明が発展してきたであろう。こちらの世界では聖力せいりょくをエネルギーとして発展してきたのだ。利用しているエネルギーが違うというだけで、辿り着いた文明の方向性はよく似ている、という事だ」


「なるほど」



 元の世界でもスマホ世代で、スマホが手放せなかったが、まさか異世界でも似たような文明の利器を使う事になるとは思わなかった。

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