第24話「これ、なんて乙女ゲーム?」

「2号館ですね!ㅤこっちです!」


 ぴょんぴょんと嬉しそうに跳ね、ジューンちゃんは私たちを案内してくれる。かわいい。


 しばらく歩くと、森の中に石造りの城が現れる。

 ……地下だよね、ここ?

 ほんとに地下なんだよね?


「1号館はホール形式ですが、2号館はコンセプトに合わせた部屋がたくさんある感じになってます」


 た、楽しそう。

 カラオケとかしたら盛り上がるやつじゃん……。


「あ、やっと来た?」


 ……と、入口付近に、まだあどけない顔立ちの少年が現れた。燕尾服をきっちりと着こなしていて、大人っぽくも見える。


「初めまして、アーベル・ボーリンガーです」


 ニコリと笑う美少年。ちょっとときめきそうになった。


「……んー……やっぱりアンリ坊ちゃんが受けだな。むしろ俺が攻めで……あの首を……」


 ユージーンさんはボソッと何を言ってるんです?

 せめてR指定にはならないよう気を付けてほしいな!!ㅤお願いだから!!


「悪ぃな、ケイトに用があるらしいんだが……そっちは事情を聞いてるのかい?」

「……ええ、まあ。でも、秘密です。ケイトさんとの約束ですから」


 カイさんが代わりに要件を聞いてくれて、アーベルさんはしーっと人差し指を口の前に当て、にっこりと笑う。

 なんだろう。美少年に似合う仕草というものをわかっていらっしゃる。


「まあ、中に入ってくださいよ」


 ギィ、と音を立て、扉が開く。

 ホールの方には、ジャラジャラと鎖を身にまとったレザージャケットの青年がいた。


 なるほど、これは音楽性が違う。


「……ノエ・アルドワンです。よろしく」


 半分だけ骨の仮面をつけた顔で、ノエさんは穏やかに笑った。

 よくできてる仮面だなぁ。


「応接間で待っててください。ケイトを呼んできます。……ノエ、頼める?」

「ん……問題ないよ」

「ありがとう」


 カツカツと音を立て、アーベルさんは廊下の奥の方へと向かう。


「……とと、俺も行くぜ。担いでやる」

「カイは心配症だなぁ……」

「また膝下が取れて動けなくなったら可哀想だからな!」


 カイさんが走ってついていき、ロビーには私とユージーンさん、ノエさん、ジューンさんが残され……あれ?ㅤいつの間にかジューンさんがいない。


「……とりあえず、入って」


 口数少なく、ノエさんは私たちを手招く。


「イイねェ、その顔……」


 ……ユージーンさん、ノエさんのことも口説くんだ……?


「シャレてるじゃねぇか。だから言ったろ? ㅤその頭蓋骨は隠さねぇ方がイカしてるってよォ……」

「…………うん、気に入ってる。ありがと……」


 …………。

 あっ、顔のそれ、仮面じゃないんですね!?

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