5.お茶会と元婚約者候補と側近候補と

お茶会の日、私は銀から深い蒼へと変わるグラデーションの地に涼やかで華やかな

ドレスに身を包み、お茶会の席へ向かっていました。

大正時代と大差のない国ですので、着物ではなくドレスを纏っています。

他の国からの賓客があれば、着物でおもてなしする事もあったでしょうけれど、

今回は国内の者ですので問題ない筈です。


「皇后陛下、本日はご招待いただき、ありがとうございます」


「ようこそ、今日は楽しんでいってくださいね?」


「はい」


皇后の猫をすっぽりと被った皇后様。お久しぶりです。

会場に入り、周囲を見回すと側妃狙いのご令嬢が殿下の周囲に、

それ以外のご令嬢は、グループを作って話していらっしゃるか、博識で知られる

ご令嬢は殿下の側近候補の皆さんと話していらっしゃいますね。


「月乃さん、お久しぶりね」


「まぁ、沙貴子さん?お久しぶりですね。

 そのドレス、とっても良く似合っていらっしゃるわ!その首飾りも、ドレスに

 合っていますし、何より、確か九重家の代名詞ですものね」


「まぁ!気付いてくれたのは月乃さんが初めてよ!質の良いものが採れたから、

 お母様に言われて宣伝目的で付けて来たんだけど…この様子じゃあねぇ?」


「…そうですね。わたくし、ちょっと言って声をかけてきますね、殿下に」


沙貴子さんは九重侯爵のご令嬢。一言断ってから離れ、大勢の令嬢に囲まれている

殿下の元へ参ります。ふふ、ふふふっ、あの程度で鼻の下を伸ばして頂いては

困りますものね?


「…御機嫌よう皆様。どのような話をしていらっしゃったのですか?」


努めて明るく、上品に。貴族の張り合いにおいては、声を張り上げた方が負けです。

叔母様の教え道理、口元は優雅に、気品を持って――。


「ま、まぁ高円宮公爵令嬢様…。お久しゅうございますわ」


あらあら…、何でもかんでも語尾に「わ」を付ければいいというわけでは

無いのですよ?彼女は…あぁ、わたくしの二つ上、殿下と同い年の秋津侯爵家の

ご令嬢でしたね。でも…目が笑っておられませんし、敵意剥き出しと言ったところ

でしょうか?

彼女があいさつしたためか、続々と周囲のご令嬢方も挨拶にいらっしゃいます。


「御機嫌よう殿下。本日はお日柄もよく…」


「久しいな月乃…!会えなくて寂しかった…」


…!こ、公衆の面前で抱き着くだなんて、ありえませんわ!

いけないいけない…。平静を装いませんと、殿下が調子に乗ります。


「殿下ッ…!皆様見ていらっしゃいます、破廉恥ですわっ」


「構わない。見せつけるくらいがちょうどいい。

 あぁ、話し相手になってくれてありがとう。暫く月乃と二人きりにしてくれ」


殿下、権力乱用ですわ!~~っ!

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宵闇の姫 Zion @775mama

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