第22話 王国武具にエンチャント依頼

  ~ルーフェルン城 武具保管倉庫~


「ここに保管されている武具全てですか?」


「はい。全てをお願いします。時間が掛かると思うので、終わるまでの間こちらが食事、寝床を提供します。報酬は、出来たものの質によってある程度の上下がありますが、ある程度の基準を満たしていれば最低でも白金貨50枚は出ます」


 それを聞いて僕たちは衝撃を受けた。何せ、困っていた資金の確保が出来るだけでなく、今後の旅でしばらくは無理な資金稼ぎをしなくてもやっていけるほどのお金が手に入るというのだ。まあ、倉庫にある武具の数は軽く7000越えるみたいだけど……


「頼まれたからにはやりますが、1人でこれ程の数やるともなれば、大量にまとめてエンチャント付与する荒業に出たとしても最低1週間、質重視で少しずつやれば3週間、最悪1ヶ月は下らないでしょう。この量は、あまりにも多すぎますので」


「成る程。では、優秀な魔法使い30人程度のサポートを着けたら短縮できそうですか?」


「それなら、私の仲間との協力もあわせて恐らく5日位には短縮できそうですね」


「分かりました。用意しておきます」


 そう言って倉庫を出ていったリリセア。50分後、選りすぐりの精鋭を連れて戻ってきた。


「では皆さん。よろしくお願いします」


「「「了解です!」」」


 こうして、魔法使い30人と共に倉庫にある武具約7000のエンチャント付与の作業が始まった。


 まず、何らかの武具を数個出現させた魔方陣の上に置き、その後頭の中で付与する効果を強く思い浮かべる。


 そして、付与する効果を強く思い浮かべながら、魔方陣から魔力を流し込む。


 強力なものにしたければ多くの魔力を流し込み、弱めで良ければ少ない魔力を流し込む。

 

 付与するエンチャントが強ければ強いほど、数が多ければ多いほど、流し込む際に沢山の魔力と繊細な技術が必要になってくる。


 また、エンチャントを詰め込みすぎると武具が耐えられなくなって爆散してしまうので、ちゃんとその武具の用途に合ったエンチャントを厳選して入れなければならない。


「クアメル。これ、本当に5日で終わるのか? 正直厳しそうだが……」


「30人もの魔法使いの精鋭たちが居るから大丈夫だと思うよ。この人達のお陰で作業がスムーズに進むからね」


 リリセアの連れてきた精鋭魔法使いが武具を数個、僕の作った魔方陣の上に魔法で送り、そしてエンチャント付与し終わると、その武具を再び元あった場所に魔法で送る。魔力が尽きれば他の魔法使いと交代する。これの繰り返しで作業を進めている。


「それでも大変なのですから、たまには休んでくださいね。魔法使いの皆様も、お休みちゃんととってくださいね」


「了解」


「気遣い感謝です」


 そんなこんなで、1日目はおよそ1600の武具にエンチャント付与することが出来た。




  ~ルーフェルン城 来客用宿泊施設~


「疲れた~。魔法使いの人たちのサポートありでこれだもの。1人でやっていたらなぁ」


「途中で武具をまた破壊しかけたときはヒヤっとしましたね。もう少し練習した方が……」


「……その通りだね」


 集中力が切れかけた時にまたしてもあの時と同じ事をやらかしそうになったのを、リュエルに突っ込まれてしまう。


「まあ、とにかくまだ沢山あるんだし、今日は疲れを癒すために寝よう」


「確かにそうだ。まだ沢山あるからね」


 今日はもう夜遅いので、寝ることにした。


 

  ~ヒーティルオン帝国 皇帝ヒーティル謁見の間~


「という訳でして、あの2人の処刑は不可能となりました。後、ルエルフ侵攻計画はもうしばらくお待ちになられた方が宜しいかと思われます。念のため動向を探るためのスパイを―――」

 

「ならん!」


 皇帝の威圧感のある怒鳴り声が謁見の間全体に響き渡り、フィンドル含めた周りの護衛兵士たちは固まってしまう。


「あれだけさんざん我や帝国をコケにした奴らを、そんな理由で諦めるなどと、そんな事があってたまるか!!」


「ですが……」


「とにかく、あの2人の処刑は諦めないし、ルエルフ侵攻だって諦めるつもりなど全くない。それにもう、四天王『シェリオン』を筆頭に軍を向かわせておるわ!」


「……」


 ああ、とうとうやりやがったこの皇帝バカ。戦争するにも手順てものがあるだろうが! と心の中で思いつつ、この最悪の状況を打開するための策を練り始める。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る