第23話 帝国軍侵略の序章

 そして次の日、今日もエンチャント付与をやろうと倉庫に向かっている道中、リリセアに会ってこう言われた。


「本日はうちの隊と魔導防衛隊の大規模合同訓練があるので、魔法使い達をそちらに回すことができなくなりました」


「そうですか……」


「代わりの人員を呼んできますが、人数は10人と半分以下になる上にその魔法使い達は精鋭ではないので、効率が落ちると思われます」


「呼んで貰えるだけありがたいです。どうしても仲間込みで3人だけだと限界があるので」

 

 どうやら今日は、王国魔導騎士団とルエルフ魔導防衛隊の合同での訓練があるらしく、こちらに魔法使いの精鋭達を回せなくなったらしい。


 あの転送魔法があるとないとでは、作業効率に大きな違いが出てくる。もし、それが無ければ魔方陣まで武具を持ってきて、エンチャント付与した後に元あった場所に武具を戻すという作業を手作業でひたすら繰り返すことになる為、今回最も重要な魔法の1つである。


 30分後、リリセアが呼んできた代わりの魔法使い達がやって来たので、今日も作業を始める。


「では、皆さん。よろしくお願いします」


  「「「了解です!」」」


 そうして昨日の続きから作業を始める。


「地下の武具がまだ手付かずなのであの魔方陣に少しずつ転送をお願いします」


「分かりました」


 そうして集められた武具に適度に魔力を流し込んでエンチャント付与したら、元あった場所に転送してもらう。基本的にやる事は昨日と同じである。


 そんな感じで500の武具にエンチャント付与し終わったとき、サポート役の魔法使い達が魔力切れで疲れ果てたので、今日はここまでにして、切り上げて貰った。


「皆さんの疲労が限界のようなので、今日はここまでにしたいと思います。ご協力ありがとうございました」


「はーい。また要請があれば来ますね~」


 魔法使い達が倉庫から出ていった後、僕たちも展開していた魔方陣を解除して倉庫から出ようとした時、扉が大きな音を立てて勢いよく開き、城の警護兵士が走りながら入ってきて、息を切らしながら言った。


「大変です! たった今、ヒーティルオンとの国境の町から逃げてきた警護兵から連絡があり、帝国軍が大挙して攻めこんできたとのことです! もしかしたらここにも来るかもしれません!」


 更に別の警護兵がたった今、さっき倉庫に駆け込んできた警護兵に報告をしていた。


「隊長! 更に港町ミストラーク、メリアにも帝国軍が押し寄せてきています! ミストラークの方は持ちこたえておりますが、メリアの方は既に陥落し、その軍は真っ直ぐ王都を目指して進軍中との事です!」


「そうか…… ん? 兵力で言えば2つの港町は同等の筈なのに、なぜミストラークは持ちこたえられているんだ?」


「神殿の大神官に聞いたという兵士の報告によれば《復活した女神に掛けられた守護結界と授けられた神刀『水桜』を活用し、帝国軍を退け続けている》とのことです」


「成る程…… 女神が復活!? それは本当なのか?」


「はい。上空からのドラゴンブレスも町に到達する前に消滅、陸上から入ってきた魔導重装歩兵も水色の淡い光を放つ刀を持った者に鎧と盾ごと斬られてあっさり殺られていたと、そう申しておりました」


「その刀は恐らくお前がさっき言っていた神刀『水桜』だろうな。普通のエンチャント付与した刀では鎧と盾ごとバッサリ斬るなんて芸当出来るわけない」


(うわぁ。帝国の奴ら侵略戦争仕掛けてきやがったか。それにしても、ミストラークであげた刀と守護結界が早速役に立ったようで良かった)


 警護兵が2人で会話していて、僕たちは置いてきぼりになってしまったので、声を掛ける。


「あの、私たちはどうすれば?」


「あ、そうでした。すみません。とりあえず城の中に居て貰えますか? 帝国軍は空中戦力として竜騎士を投入して来ているでしょう。外にいると危ないですから」


 つまり、『竜騎士が来たときに空からの攻撃が来て危ないから城の中に居てね』 と言うことである。なので、その兵士の指示に従うことにした。


「面倒なことに巻き込まれたね」


「まさか帝国軍の総攻撃に巻き込まれるなんて思いもしなかったわ」


 そんな会話をしながら1時間程過ぎた頃、今までで2回ほど聞いたことのある威圧感を感じるドラゴンの咆哮が聞こえたので、窓から空を覗いてみるとものすごい大群で飛んでいるフレアドラゴンが目に入ってきた。


 

 

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