第14話 解放と襲来

「おはようございまぁす」

「おはよー」

「まだ眠いっすね」

「あっという間でしたね」


クミ「ちょっと、もー本当に帰らないつもり?マジで信じらんないんだけど!」


西崎「ごめんって!ちゃんと連絡するからさ、真壁の手伝いなんだって、な!」


真壁「クミちゃん、悪いね、急な話でさ」


クミ「ふぅ、真壁さんが言うんなら、もぅ、でもさぁ、なんなら一緒に残れば良かった」


西崎「まぁまぁ、遊びで残るんじゃないからさ、よろしくね」


「はぁーい、じゃぁそろそろ出発しまぁす!もうバス来てますので割当てられた号車に乗って待機していてください。点呼確認出来た順番で発車します」


西崎「ほら!もう時間無いよ、出発しちゃうよ」


クミ「もぉ、毎日連絡頂戴ね。仙台帰ったら実家に一緒に行くって件はどうすんのよ?」


西崎「あー、それな、あとで連絡すっから、ほらっもう皆バス乗ってるよ。ルミちゃん!よろしくぅ、」


ルミ「あ、ハイ」


西崎「じゃねー!気を付けてねー!仙台着いたら連絡頂戴ねー!」



プッシュー、ブォーーン!



真壁「おー、、行ったな、、」


西崎「な、、、、、、腹減ったな。朝飯食いに行くか?ちょっと疲れたから部屋戻って少し休む?今日どうすんだっけ?」


真壁「とりあえず部屋変えしなきゃ。梁瀬社長からキー預かってるから荷物置いて来よう。一応フロントに声かけてきた方がいいかもな。んでその後、飯にしよ。10時にアニキ来る約束になってっからさ。まだ4時間弱あるし」


西崎「じゃぁ早く荷物置いて飯行こっ!」


真壁「お!ほらっ、伊藤先生だ。チェックアウトしてるっぽいな。どこ行くんだろ?ってか宿変えるんだ」


西崎「尾行?見張っとかなくていいのか?兄さんマークしてるって話だろ?」


真壁「まだ何も詳しい話してねーからどーすりゃいいのか分かんねーんだよ」


伊藤「あれ?君達、研修に参加してた人だよね?乗り遅れちゃったの?」


西崎「え?!あ!いや!あのぉ、そーじゃなくてぇ、、、」


真壁「あ、俺達こっちに知り合いがいまして、研修終わったら会う約束してたもんで梁瀬社長に断ってここから別行動させてもらうことにしたんです」


伊藤「あー、そうだったのね。研修はタメになった?楽しかった?今回が初めての参加?」


西崎「あ、はい!初めてです。もう頭パンパンですけど、収穫多かったです」


真壁「圧倒されまくりでした。どのように活かせるかまだ自信無いですけど知識と技術の空白が少し埋まった実感はあります」


伊藤「凄いねぇ、私なんかこの研修毎年来ていてもう10回以上になるけど最初の数年なんて何が何だか訳分からなかったよ、ただただ圧倒されて。それにちょっと観光気分だったしね」


真壁「西崎と同じだ。でも研修はカリキュラムがキツキツで、夜はクタクタでしたから普通観光気分になんてなれませんよね。余裕だったんですね」


伊藤「私の場合はちょっと不真面目だっただけです。じゃぁ君達もこの研修中は全然観光出来てなかったんだね?」


真壁「そーなんです、ホテル周辺のスーバーと定食屋ばっかり満喫できました。ウズラ卵のピータン美味しかったです」


西崎「私はちょっとだけ観光、、、」


伊藤「あ、ごめんね、時間だ。お先に失礼するよ。じゃぁ中国観光楽しんでね。日本帰ったらまたどこかで会えるかもしれないしね。名刺渡しとくよ。今後もよろしくね」


真壁「こちらこそ、よろしくお願いします。是非、勉強させてください」



西崎「なんか、、イイ人じゃない?なんでマークされてんだろね?」


真壁「ん~、、やっぱまず飯食いに行こ」



出発前夜も遅くまで愚痴話が続いた悪夢も、北京発羽田行きの帰りの飛行機が朝のフライトのためホテル出発が6時頃なのでそこまで我慢すれば晴れて解放されることを信じて頑張って耐えていた西崎だった。

クミは帰国後に西崎が実家に帰省するのに同行するのを楽しみにしていたが、その予定が結局キャンセルになってしまうことが面白くなかった。

しかしそれもタイムアップ。

クミも帰国後に別の用事があったため急に予定変更出来ずに渋々バスに乗り込むしかなく、解放された西崎は途端に空腹感に襲わる。


西崎と真壁は今まで泊まっていた部屋を一旦チェックアウトして、梁瀬社長の部屋に泊まれることがちょっと楽しみで、しかも食事もいつもの定食屋だけじゃなくてもっと広範囲に美味しいお店に行けるだろう期待もあって今回の帰国延期は大歓迎に思えてきた。完全に旅行モードに。


そんな時、いきなり目の前に伊藤がいて、しかも声をかけられたから慌ててしまって声も上擦ってしまう程で、再び空腹感がストップ!

まだ真壁兄との打ち合わせも指示も無い状態だったので迂闊なことも出来ないし、その場を取り繕うので精一杯だったが、何とかやり過ごして再び、しかも前以上に強烈な空腹感の襲来だったので当然、部屋変えよりも食事を優先することに。


マークすべき伊藤はホテルから出て行ってしまったが、、まぁいいや。腹減ってるし。全ては真壁兄が来てから始まる。それまでは一休み一休み。

本当にそれでいいのか?

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