第016話 アングラテロリズム

 さて、僕たちは山間部にいるわけだが。普通に自動車なども通ってくる。ミカエラの件が全土に知れ渡っているのだから、見つかれば即アウトと考えて問題ない。

「いや、これはチャンスですの!」

 しかし、ミカエラはそう言った。

「後は野となれ山となれ、私が町にRPGをぶっこみますわ! 騒動が収まるまでの間に基地にカチコミをかけるですの!」

 うーん、一二歳の可愛い女の子がいうことじゃないし、てかカチコミってそんな言葉どこで覚えたの。……ツッコミどころしかないが、ミカエラなら大丈夫だろう。

「では、私は大鎌で木を切り倒してオトカさんに渡します。それを基地で作るバリケードに変えていただけませんか?」

「オッケー。じゃあ私たちは基地に先回りだね。ケイはどうする?」

 うーん……てか、今までほとんど役に立ってないよな、僕……とほほ。

「いや、ここは魔王らしく、洗脳……精神操作の魔術を使ってみる」

「大丈夫ですのー? なんか失敗しそうで不安ですわ」

「うるせぇッ、もうプライドがずたずたなんだよ、いうな!」

 こちとらもう、精神状態が限界なんじゃ!

 僕は、紫色に輝く魔法陣を出現させる。

「ふははははは(久しぶりの魔王笑い)! シンエンの民よ! この次期魔王、ケイ・レモネードの洗脳に恐れおののくがよいッ! サイコブレイクゥッ! はあああああああああああああああああああああああ」


「ぐはぁ」

「とうとう自分の魔術で自分をやっちゃったよこの人」

 オトカ……、悲しくなるから言わないで。

「どうも、術式を『返す』光属性の魔術が、基地の近くを覆っているらしいですの。ケイの闇魔法はそれに強く反応して、アタマがぱっぱらぱーになったんですのね。あ、失礼。もともとケイは頭がおかしかったですの」

 最後の文いらなくない? 泣くよ?

「ご、ご愁傷様です、ケイさん。でも、その……頑張りましたね!」

 リンさん、もう何も言わないくていいよ、貴方何とかほめようとしてけなしてるし。

「とりあえず、ミカエラと一緒にいたら? ケイは」

 オトカは、そう言うと魔法少女姿に変身する。

「というわけで、オトカ☆ノイズ! 基地にバリケード構築の魔術を仕込んでくるよ!」

 シュタタタっと、オトカは走って去っていく。

「では、私は木を切ってきますね」

 リンさんは大鎌をよいしょっと抱えて、森の中へと入っていった。

「じゃあ、私は川に洗濯へ行って桃をカチ割ってくるですの」

「ミカエラはRPGな?」

「はいですのー」


 数分後。

「ふっふっふ、あたり一面消しとばしてやるdeathの!」

「それはやりすぎだ」

「じゃあ、お掃除するって言い方に変えるですの」

「凶悪感が増してる」

「五……四……三……二……一……!」

 ばああああああああああああああああん!

「ひゃっはああああああああ汚物は消毒ですのおおおおお!」

「目が怖いですミカエラさん……」

 世紀末かよ。

 そして数秒のラグの後。

 どぱあああああんん!

「よし、時計塔が崩壊したな」

「これで後は基地に向かうだけですの」

 逃げ惑う人々の悲鳴が聞こえる。やったぜ。見たか愚民ども←

「親愛なる人民のためなら、こんなの少しの犠牲ですの!」

「ひええ」

 ともかく、これでいったん僕たちは基地に向かうことにした。港を奪うのはあきらめた結果、少々リスクを背負うことになったがまあいいだろう。

「よしッ! ……『テロる』ぞ」


「オトカ!」

「あ、ミカエラ、爆破できたんだねー! 良かった!」

「えへへへ、やってやりましたですの!」

 ほほえましい光景ではないな。うん。

「こっちはどうなったんだ?」

「そ、それが……」

 リンさんがバリケードの前でうろうろしている。すると。

 パパパパパ。

 銃声が聞こえた。

「てへ! 見つかっちゃった☆」

 オトカお前……。

「うーん。グレネードあたりで強行突破ですの?」

「私の蟲さんたちでヤります?」

「とりあえずオシオキだね!」

 三者三様ですなー。しかしまあ、どれを取るにしてもバリケードに隠れたままじゃ無理だな……。

「ともかくグレネードをそい! ですわ!」

 こら! おやつ感覚でグレネードを投げるんじゃありません!

 しかし、炸裂音がしない。

「チッ、あいつら、対爆魔法を使ってますの」

 なるほど。対爆魔法というのは、爆発する危険のある化学物質を、高エネルギー状態にしないための魔法だ。

「うーん。しょうがないですね。やっぱり蟲さんたちのごはんになってもらいましょう」

「ひえぇ」

 僕、グロイの無理なんです←

「あれ? 蟲さん?」

「あ、もしかして殺虫剤?」

 オトカが鼻をつまむ。確かに合成物質の匂いがする。

 こちらの意図は把握済みってことか。

「よし、オトカがいk……オトカ?」

 見ると、オトカが道端に落ちているエロ本を次々に拾っている。その先には、棒で立てられた金網の中にあるエロ本。

「……動物かよ」

 バシン! 金網が閉じる音。何が起きたかは想像に難くなかった……。

「ど、どうしますの!?」

「ケイ……」

 まずい! 四天王ぴーんち!


 しかし、そのとき。

「あれ? この精霊『ネールじゃ』?」

 ネールは、シオリが使役している、龍の形をした精霊だ。

「いつの間にかやっつけてくれたみたいですの!」

「よっしゃ、この隙にオトカを連れ出して、いろいろ乗っ取るぞ!」

 

 それからいろんなことがあった……。

 ミカエラが爆薬庫にある兵器を、片っ端から空母に積み始めたこと。

 戦闘機をありったけ爆破し、一つ残したこと。

 それから戦車も同様にしたこと。

 陸海空のカチコミの準備は、一日にして完成した。

「とりあえず、これからどうするですの?」

 兵士を追い出して(武力で)食料をがっつくミカエラ。

「そうだねー……私が光魔法で王宮に宣戦布告するよ明日の朝」

「では、私は空母を操作しますね!」

 オトカとリンさん、それぞれに作戦を立てる。

「うーん。僕は……空母かな。戦闘機と戦車は一人でいいだろうし」

 僕も作戦を練る。とりあえず、空母で海から威嚇して戦闘機と戦車で実際に襲撃。少し被害を出したところで、シオリの開放と開国を迫るって感じか……第一の侵略と思えば、悪くない。


 Show timeだ(カッコつけんなって感想は控えるように)。



 朝になった……。

「おはよう」

「おはよ、ケイ」

 オトカは、戦車の準備をしている。

「とにかく、弾をありったけぶち込まないとね!」

「あ、ああ」

「どしたの?」

「いや、よくよく考えたら、まだ僕たち魔王軍を結成して一か月も経ってないよな?」

「うん」

「連携取れるのか? って思って」

「はは、大丈夫だよ」

 そういうと、オトカは戦車の中に乗り込む。

「連携なんかとる必要ない。だって、もう私たちは……」

 やっぱり……仲間だったんだ(ウルッ)。

「なんとなくで作戦キメてるから!」

 あ、うん。そうですね。


 そのころ、王宮では。

「こ、国王陛下!」

「どうしたああ!」

「それがその! 基地が壊滅しておりまして! そ、そらに戦闘機が!」

「なぬいいいいいいいい!? 見せろ!」 

 着物を着た国王が、双眼鏡を取る。

 はるか上空、自由自在に飛び回る戦闘機が見える。しかも一機だ。

 すると、海の方から声が響く。

「ふははははははは! よく聞け、後進国の王よ!」

「何!?」

「僕は、ケイ・レモネード! 魔王になる男だッッッッッ! 今すぐ投降すれば、被害は最小限位に抑えてヤロウ。開国しろ!」

「く、くうううううううシオリと一緒に入国してきたやつらか!」

 国王は、大臣たちに指令を出す。

「徹底抗戦だ!」


「ふっふっふ、や、やっと魔王らしいことが言えた……」

 ああ、感無量。ケイ、涙出ちゃう。

「そうも言ってられませんよ。ケイさん。もうすぐこの戦艦は爆発するんですから」

 ……え?

「リン、今なんてった?」

「爆発するんですから」

「なぜ? なぜ」

「ミカエラさんと打ち合わせしたんです。この戦艦は、魔術でブーストをかけて、王宮に突っ込ませるんです!」

「僕に話してなかったのは?」

「故意です。だって、反対されそうじゃないですか」

「……」

 

 空中で。

「ひゃっはああああああ! 大空で飲むホットミルクは最高の味だぜええええですわああああああ!」

 ミカエラはミリタリーというよりかは、若干小物感を出しながら、空から機関銃を撃ちまくっていた。

「へはは! 地上から射撃したって当たらないですわ! それそれ! くらえですの!」

 と言っている間に。

 ボキッ。

「へ、あ、……レバーが折れたですの。シンエン王国屈指の戦闘機のはずなのに、整備がなってないですの! むー」

 ミカエラは、そのまま脱出ボタンを押した。

「ええい、特攻ですわ! 機体だけ王宮に直撃させるdeathの!」

 何という野蛮な発想だろうか。これぞコフコッフクオリティ。

 パラシュートを開いて、期待から脱出するミカエラ。

「あーあ……もったいないですの」


「ぐはぁ」

 燃え盛る炎の中、這いつくばって僕は王宮に到着した。空母が王宮のど真ん中に落ちたのだ。ちなみにリンは脱出したが、ケイはそのまま特攻させられた←

「ふ、ふふ、これだけやれば国王も開国を認めるに違いない……さあ、王よ。ひざまずくのだあああああああああ」

 

to be continued……

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