第015話 生まれながらの悪

 今日も、公園には可愛らしい子供の声が響いている。

「オルァッ! 財布に金ないゆうとるやろがッ!」

 召喚魔法で精霊を使役する幼少期のシオリ。カツアゲである。

「シオリさー。自分で稼がずに人にせびるって時点で社会不適合なの分かる? てか、私も人のこと言えないしなんだかんだで働けない身(子供)だから、実質子供全体が社会不適合者なのね? でも、そもそもそれは子供だから許されてるのであって、子供の範疇を超えた力を持ってるあんたと私はやっぱり範囲を超えてる社会不適合者なの、ああいやだ自分が嫌になる死にたい」

「はああああああははっはっはっはっはっはっはっは! 金さえ取れれば何でもいいのだ!」

 ルーナ・トワイライトは、シオリと同じく貧困民だった。そして、シオリのカツアゲに付き合わされては、横から文句と愚痴を垂れ流す係だったのだ。

 なんだかんだで二人は似ている。

 術式を悪用するかしないかの違いだけだ(そこ一番大切)。

「吐き気を催す邪悪とはッ! 私を不快にさせる奴のことだッ!」

「シオリ、ゴメンそう言うのウッてなるからやめて」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「無理、黙って、ツブヤイター・ブロック」

「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん」

 いつもの通り、放送禁止用語を呟こうとするシオリを、吃音魔法で制す。これは自身のためでもあり、この小説のためでもあった。いやー、助かるルーナ。

「でもさ、なんで毎回私をカツアゲのお供にしてるわけ? 別にいなくていいジャン私」

「ほらほら、そうネガティブになりなさんな! ヲチ確定演出ですわァwwwwwオモシロwww」

「それ、励ましてんの? ディスってんの?」

「君は、私を元気づけるための大切な友人だよッ! 君の不幸や愚痴の低俗さを見て貶めることで、私の活力はミナギルのだァァァァァッ!」

「はぁ、これがリアルのシオリか……」

「リアルって何?」

「さあ、知らない(すっとぼけ)」

 むふうふふふふふ、これ、書いちゃっていいのかな? 作者、背徳の悦びを知ってしまいそうです。ああ、新たな扉が開かれる←

「よしよし、吉牛」

「やめて、吉〇家に失礼だよ」

「ねえええwwwwルーナってさwwwなんでそんなに面白いのwww」

「いや、真っ黒にしか聞こえないんだけど」

「ねえねえルーナ! 病んでるの? 自意識過剰なの? ウェーイwww」

「あかんこいつただのサイコパスや」

 そんなやり取りはいくつもあった。だが、じわじわと二人の間には友情が芽生え……。

「ません」

 あ、そうでしたか、すみませんでしたルーナさん。

「作品は面白いんだけどね」

 そ、そ、そうなの。

「ただ、ちょっと人に簡単に死ねって言えるのはどうかと思う」

 うん。そのままここに書いとくね。


「あれから何年の月日が過ぎた……シオリは、推しを見つけ。その推しの祖国へと旅立った。それから私は国家の特命組織に入り、出世を続けた……」

 ルーナは、……黄昏ていた。今日の朝から五時間。微動だにせずに黄昏ていた。

「すべては、私のトラウマを植え付けたシオリに復讐するため、必ずこの手で、その首を落とすッ! あ、でもちゃんと法律にのっとってだし、ちゃんと社会のためにも自分の精神衛生上にもいいように配慮はするし、なにより不快な思いをする人がいないように……。でも死刑だから、やっぱり反対者は出るかも、ああ板挟み辛い嫌だ」


 ぎこぎこぎこー……。のこぎりが地下室にこだまする。

「よっしゃあああああ穴開けたった! イェイ! ここからあとは出るだけ!」

 ずばん! 

 

「え?」


 穴にギロチンが落ちていた。

「……、だ、脱獄するのは明日にしよう……(汗)」

 シオリ、今日も執念の脱獄計画。

 しかし、先は長い。頑張れシオリ!


 二日目。

「シオリ……朝ごはんだ。私は食べてないけど」

「わーい! いただきまーす!」

「ふん、裁判までの間せいぜいおいしく食ってな」

「いやだね! その前に開国するもん!」

 がつがつパンをかじるシオリ。

(ふっふっふ。馬鹿め……)

 シオリは念じている。

(私の精霊。アールバの爆裂魔法で、この牢獄は跡形もなく吹っ飛ぶのだ。せいぜい死にたがるがよい、ルーナッ!)

「あ、アールバ。お茶ありがと」

「ッ!?」

 ごぼごぼとむせるシオリ。

「な、何故だッ! 私の召喚術式は完ぺきなはずッ!」

「もともと魔術は私のほうが美味いからね。それに、召喚主が人使い粗いどころかまんま奴隷扱いしてるって不満言ってたし」

「くッ……(謀反を企てたことあるから人のこと言えない)」


 三日目。

「きょ、今日こそはァッ!」

「あー、またやってる」

「なんどでもいうがよいッ! 目の前で推しのポスターを破られる拷問はもう散々! お前がいても壁を破壊して逃亡してやるんじゃあああ!」

 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!

「ち、チクショウッ!」

 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!

「なんで壊れないの!?」

 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!

「ぬおおおおおおお」

 キンキンキンキン(以下略)(元ネタ、知ってる人は知ってる)。

「魔術鋼鉄にしたから無駄なのに……」

「きえええええええちくしょうめがあああああああ」


 to be continued……

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