番外編『丁度いい大きさの石があってもどうにもならなかった、己の肉体を信じろ』

いやぁ、危なかったですね。

ゴブリン相手でも油断は禁物です。

【暗殺者】は優秀ですが、他のジョブと比べて真正面から戦う能力は低いみたいですからね。それにしても、スクワットするゴブリンの集団に寝起きドッキリされるのなんて、私ぐらいじゃないでしょうか。


ところで、生きて帰れたのは良いものの、大分傷を負ってしまったので、治療しないとですね。

ギルド併設の治療院か教会で治療してもらっても良いのですが、それだと無駄な出費になってしまいます。なので自分でジョブを取って治療してしまいましょう。

なので治療系のジョブ。

【治癒術師】になりました。他にも、

【調薬師】や【神官】なんかがありましたが

前者は元手が必要、後者は就職条件が少し面倒なので候補には入りませんでした。

【調薬師】は【調魔薬師】なんかに派生するらしいので興味があったのですが、魔薬を作るのはまたの機会にしておきましょう。


そして傷の治療です。

ジョブのレベルが上がれば、《欠損接合》《欠損回復》なんかが使えるようになるらしいですが、そこまで重大な怪我でもなく、まだレベル1なので、《治癒》を使います。

すると、みるみる内に身体中の傷たちが塞がって、うっすら痕が見える程度になりました。すごいですね異世界。

さて、傷も治ったところで行きましょうか。



現在、ゴブ森に来ています。

しかし、前回の教訓から、今回はパーティーを組みました。【剣士】【弓術士】そして【治癒術師】の自分で、3人パーティーです。

今の所順調で、治せないような大きな怪我もなく進んでいます。


しかしいかんせん効率が悪い、一人でやった方が捗るんじゃないでしょうか。

理由は分かっています、練度の低さです。

自分もですが、このパーティーは全員駆け出し。それ故に【剣士】や【弓術士】が只のゴブリン相手にビビってしまって、時間が掛かるのです。

ほら、今だって、剣士がゴブリンと鍔迫り合いしています。

じれったいですね、ゴブリンなんかこうですよこう。競り合って動けないゴブリンの頭に石を叩き込みます。

ほら、これで終わりです。

いや、なんですかその顔。やめて下さいよ。



緊急事態、大変です。

ゴブリンが現れました、大量に。

しかも将軍ジェネラル戦士ファイターも混じっています。

キングがいないのは、幸運と言って良いですが、この状況では慰めにもなりません。

どうしましょうか、正直一人で逃げるなら苦労はしますが可能でしょう。

無駄に多い魔力を使って無理やり《治癒》でゴリ押せます。

しかしそれは、二人を置いていくなら、という前提が必要です。でも、それでは後々面倒な事になりそうですし、何よりそんな理屈は抜きに、見殺しは気分が悪い。


と言うわけで、自分が囮になって二人を逃しましょう。それなら何とか逃げられるでしょう。

え?自分は大丈夫なのかって?

大丈夫ですよ、さっき見てたでしょ?《治癒》もありますし。ほら、さっき新しい技を思い付いたんですよ、腕の関節を外してパンチ!治癒でズームパンチ。

いや、そんな顔しないで下さいよ、気持ち悪い見た目なのは認めますけどね。

ほら、早く行ってください。



二人が無事に逃走してから数分ほど経ちました。しかしまぁ、何と言うか....。

思っていたより余裕ですね。

雑魚は粗方倒し終わって、残るは戦士や将軍なんかのでかい奴らだけ。

戦士の拳を石で受け止め、将軍が背後から放った斬撃を躱す。

石を投げて1匹沈め、次の得物を拾う。

致命傷は避けて、少しの傷も直ぐに【治癒】する。隙を見てズームパンチでまた1匹。


そうしている内に最後の一匹が倒れ、素材だけを残して、痕跡もなく消え去りました。

戦闘中は拾えなかった素材達がそこら中に転がっています。目玉なんかもあるのでちょっとグロい感じです。

と言っても中々疲れましたね....お?

先に逃げた二人が戻ってきました、強そうなおじさんを連れて。

しかし残念、戦闘はもう終わっています。


二人とおじさんは驚いているようです。

だから大丈夫だって言ったじゃないですか。

ほら、ズームパンt.......。




だからそんな顔しないで下さいよ!

止めれば良いんでしょ!止めれば!!!!

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