第22話

「意外とあっさりだな。」

「そりゃ、その声にゃ逆らえないかんね。」

「それより、何を食っているんだ?」

「ワシは木の実だが?」

「まぁ、それは兎も角…長。」

「死体だけど?」

「何の?」

「人間様の。」

「………人肉は喰わない方がいいと聞いたが。」

「こちとら、妖だからね?死体掃除も兼ねて食べるの。一石二鳥。」

「俺が死んだら喰われそうだな。」

「我が主の死体は食べない。けど、お望みなら食べる。それよか、あんた様も何食べてんの?」

「蛇だ。」

「まともな食い物はワシくらいか。」

「言っとくけど才造が食べてる木の実は毒だからね?まともじゃないからね?」

「人間の死体に蛇…どう考えても微毒の木の実を食う方がまともだろうが。」

「外見的に言えば、って話か?」

「あぁ。忍は毒の耐性がある。問題無い。」

「そうか。便利だな。」

「便利だよ。忍の血肉は毒だしね。」

「それは、毒を食うからか?」

「それが関係してるかどうかは抜きで、忍は体内に毒を飼うの。」

「どうやって?」

「極秘。そういうことは忍だけが知ってりゃいいの。」

「なるほど。で、妖には命が無いと聞いたが、実際どんな感じだ?」

「どんな感じ、って言われてもね。こちとらの場合は転生とは言うけれど正しくはそうじゃないし。」

「初耳だな。転生だとばかり聞いていたが。」

「こちとらの場合、魂の器である人体が死亡した際に死体から抜け出し魂のみの状態になる。そして、現在進行形で生きている若い生命体に取り憑いて生命体に既に宿っていた魂を蝕んでいき、やがて中身が完全にこちとらへとすり替わる。魂が変わった時まるで転生したかのような錯覚に陥るから、転生と例えて言っているだけ。」

「恐ろしいな。それで?」

「魂がこちとらへと完全に変わった後、自然とこちとらの妖力が器となった生命体の姿を変化させていく。若い生命体を選びその歳が停止するまで入れ替わったことによって鈍った感覚を取り戻す為に修行に入る。そして、やっとこちとらとして元通りになって誰かの目に触れる。それに要する年月が長かったりするのは仕方がないことなの。」

「歳が、停止する?」

「妖でも歳はとるけど、器となった体の歳が止まるまでの話。人体は不老不死となる。」

「不死なのに、死ぬのか?」

「何年も酷使すればガタがくるわけよ。不死というのは、どんな傷も病も治癒してしまうってことで実のところ人体を消滅させたりすれば容易に殺せるもん。」

「確かにな。だが、火炙りや凍結じゃ意味が無いみたいだな。」

「まぁ、こちとらはね。」

「いや、ワシもそうらしい。火炙りにされた時に酷い火傷を負ったんだが…数ヶ月すれば完治した。凍結はただの保存にしかならん。」

「いつの間にあんたは火に炙られてんのさ。おっそろしいわ。」

「お前が言うか?」

「で、お前の計画は?」

「必要無くなった。」

「それは良かった。伝説の忍の方は?」

「目的が読めない。何かを企んでるのは確か。そんでもって…ありゃ主持ちだね。」

「主の方を暗殺すれば伝説野郎は止まるな。」

「なら、伝説の忍の主を殺すのが目標か。」

「兎に角、一旦帰還報告をあげた方があんた様の為にもなるよ。無線機、壊れてるの気付いてる?」

「なっ!?いつの間に!?」

「夜影と顔を合わせた直後くらいじゃないか?なぁ?夜影?」

「あっはは………反射で、つい…。」

「な、成程…。……帰るとするか!」

「了解。」

「…御意に…。」

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