十三話『まったりイチャイチャタイム』

「で、いつまでこの姿で居ればいいのかな?」


「街に着くまでっ!」


「さいですか」


 僕の膝の上で楽しそうな声を出すルーナさん。そして僕は、女の子のままでございます。


 馬車の速さに慣れた途端にこれか……


 二十代前半くらいのお姉さんスタイルが気に入ったらしいけど……服が落ちそうなんだよね。


「まあ、ポロリした所で女の子しか居ないし……」


「…………」


「……どしたの?」


「時雨さまが女の子でも……あ、愛してますからっ!」


「ごめん、今言われても困る」


 貞操の危機を感じざるを得ない。女体化した僕が女の子に襲われるとか誰得――いや、一部の人には需要ありそうだけどさ。


「私はぁ男の子の方がいいと思うのですよぉ〜?」


「シルクもそう思う」


「……さっき抱っこしていた人達が言っても、説得力ないな」


 僕がそう言うと、「それとこれとは話が別!」とでも言いたげな顔をする。


「でもぉ……色々困るのですよねぇ〜……」


「……交尾が出来ない」


 なんて言ってるのかは聞こえなかったけど、男で居ることが望まれてるみたいでほっとした。女の子の方がいいとか言われたら、軽くショックを受けていたかもしれない。


 ……交尾なんて聞こえてないよ?


 なんて話をしていると、ルーナのお腹から可愛らしい音が鳴った。皆から見られて恥ずかしそうにしている。


「わ、私じゃないもん!」


「そっか、じゃあ、ご飯はまだいらない?」


「え……そ、それは……」


 ルーナ大ピンチ! という感じの顔をしているけど、再びお腹から音が聞こえてくる。


「今のは私じゃないよ?」


「……わたしです」


「よろしい。ルーナも、『今のは』って言ったから良いよ」


「う、ち、違うし」


「分かった、ルーナだけいらな――」


「食べるーー!!」


  ちょっと涙目になってて可愛いけど、小さい子をいじめるのは良くない。

 ……可愛い? それってロリコ――いや、今更だった。


 まあ、そういう可愛いじゃないけどさ。


「……リア、痛いよ」


「時雨さまが悪いんですっ」


 脇を抓られるのは普通に痛い。ステータスが発揮されるのは、ダメージになるものだけなのだ。


「……ごめんごめん、冗談だから」


 膝に居たルーナを横に降ろし、リアを抱きしめる。少し大きく感じるのは、僕が女の子になっていて体が小さいからだろう。


「こ、こんかいだけは許してあげます……」


 デレデレしながら言っても、周りからはいちゃついてるようにしか見えないと思う。というか、実際そうなんだけども。


 可愛いなぁ。でも……いい加減ご飯を作らないと。


「そうだ、あれがあるじゃん」


 完全に忘れていた炒飯と、テーブルを出す。


「……私あっち行こ」


「ご主人様、シルクがそっち行っていい?」


 砂糖を吐きそうなルーナは向こう側の席に移って、シルクが僕の隣に来た。

 ソフィーは僕をちらっと見てからルーナの方へ行く。


 さすがソフィー。後で抱っこする権利を与えよう。……何様だって? 勇者様です!


 うん、我ながら気持ち悪かった。


 それにしても、ソフィーとルーナの組み合わせってどうなんだろうか。


「口を開けて欲しいのですよぉ」


「え、でも……」


「あ〜ん♪」


「………(パクっ)」


「ん〜? 私にも食べさせてくれるんですかぁ?」


 楽しそうでなにより。

 ソフィーがグイグイ行ってるから、特に問題ないだろう。ルーナはちょっと人見知りっぽいけど、照れてるだけみたいだし。


「「あーん」」


 スプーンを突き出されたので、とりあえず食べる。

 うん、リアやシルクに食べさせてもらうと美味しいね。


「……あれ見てやりたくなったの?」


「え? ま、まあ……」


「お返し、貰えると思って」


 なるほど。

 で、口を開けて待機する二人。違うものを入れたくなる……おっと、あんまり変なことを考えるとリアが困っちゃうか。


 にしても、咀嚼する時だけでも結構差が出る。リアは上品な感じに小さくモグモグしてるけど、シルクの顎は上下しているのがハッキリ分かるくらい。

 とは言っても、汚い食べ方をしてるとかじゃなくて、人によって違いがあるという話だ。


 ちなみに、ルーナは上品に、ソフィーはシルク程ではないけど、リアよりは動く。

 僕は……見れないからあれだけど、シルクと同じかな?


 そう思っていると、シルクがこちらをじっと見つめて来た。


「……ご主人様」


「なに?」


「おかわりしても、いい?」


「うん、まだまだあるから大丈夫だよ。……それと、ここに米粒が付いてる」


「…………取れた?」


 僕が右の頬を指さすと、左をゴシゴシするシルク。それを微笑ましく思いつつも、米粒を取ってあげる。


 すると、その手を掴んで指をくわえる。何も出来ずに見てる方じゃなくて、物理的に。


「……はむはむ」


「僕の指まで食べるつもりかな?」


「ごひゅひんひゃまのゆび、おいひいよ?」


 なんて冗談を言って僕の指を甘噛みしてきた。口の中は意外と悪くない感触なんだけど、リアにガン見されてるから離してもらおう。


 ちょっと拗ねてるから、なでなでして機嫌をとろう。でも、拗ねてるリアも可愛いよね。


「……時雨さま、あーん」


「あーん…………ん?」


 あーんだと思ってたら頬にキスをされた。


「お米、付いてましたよ?」


「そっか、ありがとう」


「……改めて、あーん、です」


 嘘なのは分かってるけど、微塵も嫌だと思ってないし、むしろ嬉しいから何も言わない。

 ただ、シルクが気づいていた様子。リアをジト目で見てるから、間違いないだろう。


 くいっ


「ルーナ、どうかした?」


「えっとね、お兄ちゃんは小さい子が好きなの?」


「……なんでそう思うの?」


「だって、リアさんはお兄ちゃんのお嫁さんなんでしょ?」


「……ち、ちいさいこ……」


 そのお嫁さんことリアが、小さい子と言われてダメージを受けている。純粋な質問だから、怒ることも出来ない。


「……リアはね、僕と同い歳なんだよ」


「? 嘘だよね?」


「……う、うそあつかい……そんなぁ……」


 ナチュラルに、『何言ってんのこいつ』みたいな目で見られた。

 でも、リアがショックを受けているのを見て、


「……え? ほ、ホントなの?」


「うん、本当」


「えーーーーっ!?」


「そ、そんなに驚かなくても……」


 さらに追加ダメージ。

 ガチで涙目になってるから、頭を撫でて慰めてあげる。


「リアさん、ごめんなさい……」


「いえ……ちいさいのは本当のことですし……」


 そう言って力ない笑みを浮かべる。


 Q.僕が優しく抱きしめると?


 A.すぐに落ち着く。


「ソフィー、どうして手を広げて待機してるのかな?」


「それはぁ、マスターを癒して差し上げるためなのですよー?」


「いやいや、ルーナの前で――」


「問答無用なのですよっ!」


 僕に拒否権は無く、ソフィーの胸に顔を埋める事となった。自分でやったくせに恥ずかしいのか、心臓の音が少し速くなっている。


 下着(上)を付けていない割には、垂れていないし、かと言って筋肉質な訳でもない。

 思わずお礼を言いたくなるほど心地いいです。


 なんか眠くなってきたかも。






 ……実は、この後本当に眠ってしまい、起きたのは到着する直前だった。ソフィー様、ありがとうございます。

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魔王の娘を嫁にした後のハーレムなお話~世界最強の勇者は嫁の数だけ強くなるそうです~ ナギ@にわか @Nagi0316

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