大人のかくれんぼ(妻編) その二

 ――――妻は果敢にも、近くにあったドアの前に、深緑のベルベットブーツで仁王立ちしていた。やたらと壁ばかりが目立つ廊下。学習能力なしの倫礼。

 

 ドアに喧嘩でも売るように、人差し指を突きつけた。


「もう三度めだ! 今度はそうそう驚かない! ドーンと来い!」


 パッと勢いよくドアを開けたが、普通の生活では決して聞くことのできない異音が聞こえたきた。


 キキー!

 ホホー!


 想像をはるかに超えていて、倫礼は息をするのも忘れてしまった。


「…………」


 やけに薄暗い。奇怪な音はずっと聞こえ続けている。だが、景色に変化はなし。


 しかし、下の方で動きがあった。蝶番ちょうつがいみたいなものが、パカーッと開いてゆくと、くすんだピンクの中に白い三角の列が見えた。


 衝撃的すぎて、それがかえって電気ショックのように、思考停止していた倫礼の頭を無理やり動かしたのだった。


「え……!?!?」


 驚いている間に、右斜め上で太い縄みたいなものが動いたのに気づいて、倫礼は息を詰まらせ、


「っ!!!!」


 ドアを閉めずにはいられなくなった。


「ヤバイヤバイ! は、早く閉めて、閉めてっっっ!!!! 出てきたら大変! 大変っ!」


 しっかりと閉めたドア。平穏な我が家の廊下。とりあえずの危険は回避した。


 だが、恐怖心は完全に拭い去れたわけではなく、警戒心は解除せず、ドアの向こうに今もあるであろう景色を考える。


「木が生い茂ってた。下の方にいたのはワニ。上にいたのは大蛇……ジャングルですか〜〜〜!」


 誰もいない廊下に、妻の驚き声が響き渡った。だが、答えるものは誰もおらず、


「何のためにこんな部屋作ったんだろう?」


 さすがに地球一個分もある我が家であり、様々な外が家の中にあるのだった。だが、存在理由が妻にはさっぱりなのである。


 しかし、とにかく隠れるである。妻のロングブーツは水色の絨毯の上を足早に歩き出した――――



 ――――広い家。霞む通路。それでも妻はとうとう廊下の行き止まりへとやってきた。両開きの立派なドアを開けて、中をのぞく。


「ん? 誰もいない」


 忍び足で、ベルベットブーツは絨毯から、部屋の大理石へと入り込んだ。


「よし、そうっと……」


 静かにドアを閉めて、部屋の奥へと振り返ると、壮大な景色――本の山脈が連なっていた。


「図書室すごいね」


 倫礼の声は響き渡らず、ページの紙に吸い込まれてゆく。


 入ってすぐのシャンデリアの下には、紺の絨毯を従えた大きな丸テーブルが堂々たる態度で鎮座する。モダンなデザインの卓上ライトが花を添える。


 中二階にも本たちはひしめき合う。どこかの店のようにディスプレイされた、様々な本の表紙――顔が立ち並ぶ。


 おしゃれなカフェのような一人がけの椅子とテーブルが、パーソナルティースペースを十分配慮した間隔で佇む。


 どこかの図書館かと勘違いするほどの広さだった。


 深緑のベルベットブーツは大理石でかかとを鳴らすが、本という情報の交差点に紛れ込んで消えてゆく。


 いくつもの棚を超えると、全面ガラス張りの窓から庭の緑が、見晴らしのいい展望デッキにでもいるように雄大に広がった。


「うわっ!」


 本の整列の間に顔をのぞかせた、白いものに気づいて、倫礼は目を輝かせた。かくれんぼをしていることも忘れて、小走りに近寄る。


「窓際にソファーが置いてある〜! これ、憧れなんだよなぁ〜」


 どこかの城の庭園のような立派な緑たちとソファーという組み合わせ。


 小さなサイドテーブルに、倫礼の妄想世界で、上品なティーカップから、ベルガモットの柑橘系の香りが立ち上る、アールグレーティーが置かれているのが見えた。

 

 倫礼は心躍らせる。ソファーにゆったりと座って、大好きな本を読んで、文字の羅列から視線を時々上げては、庭の美しさで一休みをする。そんなさまを思い浮かべて。


「外の景色見ながら、本を読んで、お茶を飲んで……」


 かくれんぼのことなど、遠い宇宙の彼方へサヨナラ満塁ホームランのようにかっ飛ばしている倫礼だった。単純に風景を楽しもうと、ガラスとソファーの間に入ろうとすると、見つけてしまった――


 さすらいの侍が孤独な旅路の途中で、原っぱで一休みしているような姿を。白と紺の袴姿がよく似合う夫。


 彼の無感情、無動のはしばみ色の瞳はまぶたの裏に隠れていて、どうやって見ても正体がなかった。


「あれ? 夕霧さん、寝てる……」


 三人がけのソファーをベッドがわり。武術をしているが、ガタイがいいとまでは言えない体躯たいく。骨格はきちんとあるが、硬いのではなく、しなやか。


 椅子から横にははみ出していないが、百九十七センチの長身は、膝下がソファーから完全に出ていた。


 みだらになだれ込んだ和装。はだけてはいないが、無防備に妻の前で眠っている夫。帯を解いたら、簡単にその肌は露出だろう。


 男の色香が匂い出て仕方ないあごのシャープなラインを下からのぞき込む。


「寝たふり……じゃない」


 この武術夫は、横になると瞬殺で眠りの底へといざなわれる。朝だから、夜だからではなく。一日中眠いのだ。どうしようもなく眠い体質。


 セック◯する時も横になると即行眠ってしまう。さっきまでの盛り上がりはどこへ行ったのかと首をかしげるほどである。


 だが、そこらへんは本人もよく心得ていて、寝ない体位で必ずするようにしているのだ。


 あの触れただけで、敵を持ち上げ投げ飛ばす芸術的な技。相手の握っている武器を目にも止まらぬ速さで自分へと奪ってしまう感嘆の技。


 そんな美しい動きをする大きな手を見つめて、妻は心配になった。


「起こさないと、夕飯にまた遅れて、覚師かくしさんとひかりさん……それだけじゃなくて、夕霧さん本人も困るから……」


 みんなが幸せであるように。自分に今できることを。妻はそれを原動力として、横からかがみ込んだ。


 深緑の髪は動きやすいように極力短くなっている。ソファーの上に頭を乗せても、乱れる余裕がないほどだった。


 ひとまず声をかけよう。むやみやたらに触ると危険だから、この夫は。意識がある時はいい。だが、今は無意識だ。


 修業という名の瞬発力で技をかけられるのだ。それがどんなものか、倫礼は知っている。どんな原理でできていて、どんな影響を相手にもたらすのかも心得ている。


「夕霧さん? 夕霧さん?」


 寝返りも打たない。ピクリともしない。熟睡中。というか、まずみずから動いてこない、絶対不動の夫。


「ダメだ起きない。ん〜〜? どうしよう――!」


 妻の頭の中で電球がピカンとついた。


「わかった! こうしよう!」


 待っていろ、武術夫。今起こしてやるぜ、である。


「右、殺気!」


 健やかな寝息はそのままで、袴の白い袖をともない、右手が斜め上へ向かってあでやかに上げられた。敵の攻撃を払うものである。しかもこの手に少しでも触れたら、大変ことになるのだ。


 気合いのような詰まった息遣いもなく、急に動いた手だけ。遠くで技を見たことがあっても、こんな近くで体感したことがなかった倫礼は、びっくりして後ろに下がり、


「うわっ!」


 足がもつれて、思わず尻餅をついた。物音――気配に気づいて、無感情、無動のはしばみ色の瞳はさっと開かれ、地鳴りのような低い声で詫びを入れ、


「すまん」


 一ミリのぶれなく、袴姿の夫は男の色香を強く匂わせて起き上がった。草履はきちんと大理石の上にそろえて下され、夕霧命の瞳には妻の出血大サービスが映った。パンツが丸見えなのである。


「あぁ、いや、いいんです。私が変なことを言ったから……」


 いつまでも床に落ちたままの倫礼を前にして、夕霧命は彼なりの笑み――切れ長な目を細めた。


「お前はいつでも変わらん」


 パンツなど見せても、減るものではないだろう。そういうざっくばらんな妻。しかも、本人は気づいていないという、バカさ加減。そこに対して、夫は言ったのに、


 妻はこう思った。絶対不動の夫に、落ち着きのない自分がこんなことを言われるとは、不服である。


「夕霧さんもいつでも変わらないじゃないですか」

「そうだ」


 ずれているはずなのに、噛み合ってゆく会話。同じ物事を見ているのに、自分とは違う角度で取ってくる妻。自分にないものを持っている女。だからこそ、夕霧命の切れ長な瞳はさらに細くなるのだ。


 またまどろみそうな目を見つけて、倫礼は立ち上がって、止めようとしたが、


「横になるの今は禁止です。また寝ちゃい――」


 目の前にいた夕霧命の和装とソファーは急になくなり、背中にあったはずの庭園がにわかに広がった。


「あれ?」


 瞬間移動を夫に勝手にかけられたのだ。見極める前に、背後から夕霧命の地鳴りのような低い声が響いた。


「逃げられん」


 ――まるで何かの呪文。


 倫礼の紫色のワンピースは、袴の紺の上にすっぽりと収まり、白いたもとは両脇から胸の上に伸びていて、いわゆるバックハグだった。


 倫礼は武術を学んでいる。後ろから羽交い締めに男にされようとも、逃げる術を知っている。それは正しい腕の使い方をすれば簡単なのである。


 最小限の力で最大限の力を発揮する。前寄り気味な意識を、背中へと向ける。肩の下あたりを前から後ろへ回すように少しだけ動かした。


「よし、肩甲骨けんこうこつを使って……」


 これで、相手の力が緩んだ隙に……。のはずだったが、力がかかっていないのだ、夕霧命の腕は。しっかりと固定されていない。


 だからこそ、倫礼がどんな動きをしようとも、即座に対応できてしまう。柔軟でありながらの、真の強さ。


 夫の膝の上で、妻は捕まっている運命でしかなかった。


「あぁ〜、他の人なら逃げられるんだけどな」

「同じ技を習得しているのなら、力の競り合いは起きる。俺にお前は勝てん」


 ぴったりとくっつく背中から、夕霧命の地鳴りのような低い声が振動を起こした。心地よい安心感に包まれる。


「まぁ、そうですよね。夕霧さんはプロですから……」

「まだまだだ」


 どこまでも謙虚な夫。そんな彼を見えないながらも、倫礼は後ろへパッと振り返った。深緑の髪とブラウンのそれがお互いの額とこめかみで絡み合う。


「そんなことないです!」


 結婚を何度もして、子供もたくさんいる。年齢は二十三歳。されども、十五歳。少年である、本来なら。


 この世界では、自分勝手に武道家にはなれない。師匠から許しを得ないとなれないのだ。


「十五年で師匠の許可を得て、武道家になれる人はいないです」


 毎日同じことを淡々とこなしていける性格でないと、何事も極められない。過去も現在も未来も関係なく、どんなことにも左右されず続けられる人。それが夕霧命なのだ。それだけで、才能だと倫礼は思うのだ。


焉貴これたかさんやるなすさんみたいに、三百億年も生きている人がいるから、確かにかなわないと思うのかもしれないですけど、夕霧さんがその人と同じ歳になった時は絶対抜かしてます!」


 永遠の世界だからこそ。努力するのが当たり前だからこそ、相手はずっと永久に先を歩いている。追いかけても追いかけても、距離は縮まらない。だが、追い抜く方法はあったのだ。


「お前は俺の気づかんことに気づく」


 夕霧命の両腕が、倫礼のワンピースに強く巻きついた。ブラウンの髪に夫の頬がいとおしそうに寄り添う。


 妻としては思っていることを言ったまでで、不思議そうな顔になった。


「ん?」


 どこかずれているクルミ色の瞳を、無感情、無動のはしばみ色の瞳は横からのぞき込む。


「愛している――」


 ――大地のように揺るぎない男。ふわふわと浮いている自分は、この男の絶対不動のお陰で、何の気兼ねもなしにどこへでも自由にいける。そうして、迷わず、同じ場所へ戻ってこられる。


 振り返れば、そこに必ずいる。何も言わず、何も望まず、そこにいる。そんなことが何度も繰り返され、自分は気づいたのだ。


 この男は誰かのために自身を犠牲にしてまでも、相手を見守り静かに愛してゆく人なのだと。それがこの男の愛し方なのだと。いきなりの結婚だったが、積み重ねた日々はきちんとあった――


 新しい愛の形に出会えたことを改めて感じて、倫礼は珍しく微笑んだ。約束は約束を果たそうとする。


「愛してます」


 いい感じだったのに、夕霧命は不思議そうな顔をした。


「何があった?」

「えっ!?」


 紺の袴の上で、倫礼の紫のワンピースが驚きでぴょんと飛び上がった。


 光命ひかりのみことと一番仲がいい夕霧命。この二人の性格は対照的だ。夕霧命はまっすぐ正直であり、策など絶対に張ってこない。確認するために、わざと質問するなどあり得ない。


 それなのに聞かれてしまって、いくら感覚妻でも、おかしいと気づいた。しかしとにかく、光命の思いやりを無駄にしないためにも、倫礼はさっと真正面を向いて、ものすごくぎこちなくとぼけた。


「なっ、何のことですか?」


 さっきまで大人しく座っていたのに、急に前後に落ち着きなく揺れ出した、嘘が下手な正直な妻。斜め後ろから見ていた夕霧命は、はしばみ色の瞳を細めた。


「言わなくて構わん」


 噓も方便ほうべん。誰かを想ってならいい。自分をごまかすのなら、絶対に許さないが。


 三十七センチの背丈の差で、膝の上に乗ろうとも、まだ高い位置にいる夫。


 和装の色気で武術の技をかけるように、倫礼の唇に少し硬めの夕霧命のそれがすっと近づき、二人のまぶたは閉じられた。


 ――不変的でありながら追求心のあるキス。


 本の匂いに何もかもが混じりこみ、時計の音もなく、二人の呼吸だけがどこまも続いてゆく。袴姿の大きな夫の膝の上に乗ったままの、妻の紫のワンピース。


 だったが、全然隠れていない倫礼と夕霧命。当然すぐに、凛とした澄んだ女性的な声が割って入ってきた。


「見つけましたよ〜」

「あぁっ!」


 倫礼はムードも何もなくさっと立ち上がり、ワンピースのヨレを直して、すうっと瞬間移動した。


 ――今度は夫二人きりの図書室。


 白いソファーの上に座る、和装の色気漂う夕霧命。その真正面に立つ女装している月命。映画の衣装みたいな格好の二人。まるで男女のスパイ同士が対峙するような図柄になった。


「うふふふっ」


 月命が含み笑いをすると、色仕掛けの罠――ハニートラップは発動された。ピンヒールの左足だけをソファーの上へと立てて乗せ、ヴァイオレットの瞳とはしばみ色の瞳はキスができそうなほどの位置へと一気に迫った。


 そんな月命の腕時計は、


 ――十五時十六分五十八秒。


 蜜の罠でやれるような、色欲は夕霧命にはない。だが、この男は自分の夫。ここは自宅。完全なる性対象。


 体を重ねたことなど幾度もある。その服の向こうにどんな肌とセ◯キが待っているのかも知っている。だからこそ、驚くことはない。今日は服がおかしいだけ。


 マゼンダ色の長い髪がサラサラと白いチャイナドレスから落ち、紺の袴の腰前を誘惑するように侵食した。


「くくく……」


 突然噛みしめるように笑い出した、夕霧命の視線は一点集中。スカートの中から見えるパンツがもう一枚だった――――



 ――――倫礼は再び戻ってきてしまった。玄関ロビー前の廊下へと。かくれんぼが始まった場所は、正確にはこの奥の間にある。


「どうしよう?」


 緑を基調にしたステンドグラスをはめ込んだ、アンティーク調の両開きの扉。


「玄関……」


 ピンクのチューリップみたいな丸みを持つ、シーリングライトが花を咲かせる。一段空高くへ出ている天井を見上げた。


「すごい。空が見える……」


 大きく取られた天窓は、暖色系のライトが温かみと安心感を与える。外から戻ってきた時に最初に広がる自宅の空間。だからこそ、ホッとさせるものをそろえたこだわり。


 両脇から緩いカーブを描く、二階へと続く階段。オレンジ色の絨毯が敷かれ、童話に出てくるお城みたいな造り。


 倫礼は思わず吐息をもらした。


「憧れの間取り……」


 正面に広がる二階の廊下の柵を見つけて、妻は思いついてしまった。


「あぁっ! あれ、やってみたかった!」


 映画の中のアクションをどうしても再現したくなった。よく思い出してみる。


「どうやったらできるんだろう?」


 玄関の扉を真正面にして、ブラウンの髪が家の奥に向いた。


「やっぱり、こう背中を向けて、飛び上がるがカッコいいよね?」


 白黒の市松模様の床の上で、倫礼は神経を研ぎ澄ます。


「イメージイメージ!」


 全てがピタリと脳裏の中で重なり、正義の味方が参上したみたいな掛け声をかけた。


「とうぉぉぉぉっっっ!!!!」


 強く床を蹴り上げると、立ったままの姿勢で、妻の服は逆再生した映像のように、二階の廊下に向かって、山なりの線を描いて飛び上がり、柵を乗り越え、ストンと上階の床に着地した。


「すごい! アクション映画だ!」


 さっきまでいた玄関の扉が斜め下にあるのを眺めながら、できないはずの動きができたことに大いに感心。


 だが、一階にいたかったのであり、深緑のロングブーツは、オレンジ色の絨毯を身にまとう階段を降り始めた。考えなし、勢いだけの倫礼。


「でも、この階段、真面目に登ってる人、何人いるんだろう?」


 浮遊できるのである。瞬間移動できるのである。子供でさえ、飛べる子は飛べる。そうなると、使う人は限られる。


 倫礼は隠れることもせず、首をかしげ続ける。いつも自分の隣を浮遊してついてくる夫を思い浮かべながら。


「光さんは絶対抜ける。だって前こう言ってたもんね」


 ――なぜ、自宅で歩かなくてはいけないのですか? 非合理的です。


 あの優雅な王子さまときたら、神経質なまでに、合理主義者なのである。外はまだ新しい発見があり、足元の感触を楽しむなどがある。しかし、自宅はないのである。


「あっ! 階段の下!」


 盲点であった。妻のベルベットロングブーツは小走りに近づいてゆく。


「よしよし! ゴーゴー!」


 後ろに回り込もうとしたところで、すうっと人が前に立ちはだかった。通せんぼだ。


「――ここで会ったが百年目。盲亀もうき浮木ふぼく優曇華うどんげの花です!」


 行く手を阻まれた倫礼はパッと見上げ、カーキ色のくせ毛と今はちょっとグレているみたいなブラウンの瞳を見つけた。だが、どこかずれている倫礼が目をつけたところはここだった。


仇討あだうちの続きの言葉ってあったんですね!」


 ピンクのシャツの胸に、貴増参たかふみの大きく優しい手を乗せれた。にっこり微笑んで、得意げに言う。


「僕は長生きしちゃってますから、いろんなことを知ってますよ」


 二千年以上も生きていると違うのだろうと、妻は大いに感心した。


「あとは何ですか?」


 倫礼の手をすっと引っ張って、貴増参は自分の背中の後ろへ隠した。


「お嬢さん、ここは僕に任せて、後ろに下がっちゃってください」

「正義の味方ですか?」


 倫礼は前に身を乗り出して、夫の色白の綺麗な顔をのぞき込んだ。


「名乗るほどのものではありません」


 まだまだ続いているヒーローごっこ。倫礼の頭の中に、子供部屋にあったランドセルが浮かび上がった。


「あれかな? 学校のクラス名『宇宙の平和を守ろうぜ組』の先生と一緒? 生徒が担任の先生の素顔知らないっていう噂のクラス?」


 そんなふざけたクラスが存在するのだ。本当に生徒は知らないのである。先生の正体を。貴増参は「んんっ!」と咳払いをして、いつもの羽布団のような柔らかな声で付け足した。


「ちなみに、そちらのクラスの我が子は、冠成かんしょ花慈愛かじゃん善珠ぜっしゅです」


 冠成とは、夕霧命の息子。

 花慈愛とは、月命の娘。

 善珠とは、明引呼あきひこの息子。


「やっぱり、重なりますよね」


 子持ちの親が九人も結婚したら、当然のことである。それでも、クラス替えはされない。


 何が起きても、このクラスメイトだからこそ、全員が幸せになれるという計算がされた上で、編成されたクラスなのだから。適当に順番で分けられているのではない。


 そうこうしているうちに、貴増参の中では悪との戦いが佳境をとうとう迎えた。


「それでは、僕の必殺技の出番です!」


 シャイニングウィザードとか、ブレーンバスターとか、が出てくるのかと思いきや、


「――水色 桔梗ききょうで君も明智一門です!」


 滅多に声を上げて笑わない倫礼が吹き出した。


「あはははっ……!」


 明智家の家紋を出して、必殺技にする夫。この家の人間でないとわからないマニアックな笑い。こんな笑いが好きな妻だった。


 お腹を抱えている妻の顔の前に、貴増参はそっとかがみこんだ。


「――君は笑顔が素敵です」


 ボケている時もあれば、しっかりしている時もあるのだ。この夫は。


 笑うのをやめて、階段の下という死角で、妻は夫の顔をじっと見つめ返した。


「あぁ、ありがとうございます。私を笑わせるためにしたんですね?」

「愛のラビリンスへと君を連れてゆく、僕のちょっとした罠です」


 どこかメルヘンチック仕様。それなのに、仁王像のような存在を演じていた夫。今この男は自分のまま生きている。強くて甘い男の前で、倫礼は微笑んだ。


「ふふふっ。貴増参さんってどこかの王子さまみたいですよね」

「僕はどこかではなく、君だけの王子さまです」


 貴増参は倫礼の小さな肩に両手を置いて、自分へ正面を向かせた。どこかずれているクルミ色の瞳は今はしっかりとした面持ちで、首を横に振る。


「違います。みんなの王子さまです」


 夫たちにも、他の人を愛する自由はあるはずだ。だから、バイセクシャルなのだ。みんなはみんなのためにいる。その中で、自分だけ特別でいたいなどと、倫礼は決して望まない。


 カーキ色のくせ毛はブラウンの頭からすっと離れ、貴増参はあごに手を当てうなずく。優しく真剣な眼差しを降り注がせながら。


「ふむ。君はやっぱり素敵な女性です。僕はこの結婚を今できてよかったと思います。命に限りがある君とこうして出会うことができたんですから。次は二度とめぐってきません」


 死んだら、自分はいなくなるのだ。どの世界からも。輪廻転生りんねてんせいなど、自分にはゆるされていない。だから、『おまけ』なのだ。


「そうですね。一秒一秒を大切に生きないといけないですね」


 消えゆく運命でも。無になるとしても。今あることは、事実であり、真実である。嘘でも幻でもない。倫理の心にはきちんと存在しているのだ。


 ブラウンの長い髪を、貴増参の綺麗な指先が優しくなでてゆく。


「君はいつでも一生懸命生きすぎちゃってます。たまには頑張り屋さんにも、お休みしていただいちゃってください」


 焦って生きていようが、人は生まれたら、誰もが死に向かってカウントダウンしている。それならば、のんびり生きたほうがいいと、この個性的なボケをかましてくる夫は教えてくれているのだと、倫礼は思い、少しふざけた感じで言った。


「はい、休暇届出しておきます」


 どこまでも優しく、揺るぎないブラウンの瞳が、倫礼のクルミ色の瞳をのぞき込んだ。


「そんな期間限定の君に、特別なキスを差し上げちゃいます」

「ありがとうございます」


 夫の大きな手で、妻の前髪はそっと上げられ、おでこに軽くキスをされた。


「僕は君を愛してます――」


 ――十五年前に知った人が脳裏に浮かび上がるたび、夫になってゆく日々。この感覚は霊的な直感。そんな中で、自分のそばにやってきた男。役職名が本名なのだと信じていたほどで、どんな人かもわからなかった。


 話すようになって、この人は落ち着きがあって、どんなことにも驚いたりはしない男。それなのに、穏やかで優しさに満ちあふれていて、独特の価値観を持っている。


 呼ばなければこない。呼べばくる。距離があるように思うが、いつも相手を気にかけているから、来るのであって、お互いの心はすぐ近くにいるのだ。そんな男――


「はい……愛してます」


 約束は約束。気持ちがないのではなく、言う主義ではないだけだ。伏せ目がちの倫礼の前で、貴増参の手があごに再び当てられた。


「ふむ。僕の王子さまも素敵な人です」


 夫婦で王子さまと言ったら、光命なのである。また出てきた。優雅な策略家。妻は夢から覚めたみたいにはっとし、今目の前に立っている落ち着きのある王子をじっと見つめた。


「え……?」


 複数で結婚しているからこそ、お互いが愛している夫を間にして、二人の幸せがさらに広がってゆく。貴増参はにっこり微笑んだ。それはまるで白馬に乗った王子さまが手を差し伸べたようだった。


「二人が愛の聖堂サンクチュアリーに今夜もたどり着けるように、僕が魔法をかけよう!」

「ん?」


 ベッドに行くの隠語として使ってきていると、妻が気づかないうちに、時々策略的な貴増参からこんな言葉が出てきた。


「あ、そうでした。うっかり忘れてました。僕も、いや、みんなも一緒にです」


 いつぞやの10Pになってしまった。だが、もう慣れたのである、妻は。夫たちときたら、仲がいい限りでほぼ毎晩なのだ。


「ふふふっ」


 倫礼がまた微笑むと、貴増参の大きな両手が彼女の頬を優しく包み込み、キスをするために、妻の顔をすうっと上げた。


 閉じたまぶたの裏が視覚を封印して、他の感覚を鋭くする。そうして、触れた唇から魔法をかけられた。


 ――甘い呪文のキス。


 くるくると踊ったこともないワルツを、相手のリードだけで、どこまでも軽やかに楽しめる。


 いつまでも続く舞踏会だったが、凛とした澄んだ女性的でありながら男性の声が、語尾をゆるゆる〜と伸ばして響いた。


「よろしいですか〜? 玄関は空けておいていただかないと、僕が困るんです〜」


 何かあるみたいな言い方。倫礼はキスをしていたことなどすっかり忘れて、ステンドグラスのはめ込まれた豪華な扉をじっと見つめた。


「外に誰かいるってこと?」


 今日は日曜日。を気づいていない妻の前で、貴増参の革靴は軽くクロスされ、あごに人差し指と親指が当てられた。


「ふむ。そういうことですか。僕はわかっちゃいました」

「え……?」


 倫礼が聞いているそばから、カーキ色のくせ毛とブラウンの瞳はすうっと退散した。


 二つの形の違うスカートだけが、居残った階段の下。ニコニコのまぶたから、邪悪なヴァイオレットの瞳が姿を現した。


「倫、すぐに違う場所に隠れてください。それとも、僕の短剣ダガーでズタズタに切り裂きましょうか〜?」


 平和な我が家に。小学校教諭の手に。鋭いシルバー色を放つ武器があった。しかも、妻を脅迫する夫。もちろん、それは嘘なのだが。


「どこから持ってきたんですか?」

「うふふふっ」


 いや違った。突きつけられた刃先。そのすぐ近くの月命の腕時計は、


 ――十五時二十七分三十五秒。


 そんなことを見ている余裕などなく、妻は息を飲んだ。


「ほっ、本気で切り裂く気だ。とにかく、今度は外に行こう!」


 深緑のベルベットブーツは市松模様の床をさっと走ってゆき、玄関の扉から外へ急いで出ていった――――



 ――――範囲が広すぎるかくれんぼ。とうとう家の外へと出て、門までの道を歩こうとすると、右手に竹やぶが見えた。


 舗装された道から、冬に向かうというのに、なぜか青々としている芝生の上にそれて、竹のつるっと固い感触を手で味わった。


「すごいね。ここ」


 一歩足を中に踏み入れると、パンダになりたいほど奥深い竹やぶだった。


「これだけ茂ってたら見つからないかも……」


 土の上をブーツは進んでゆく。まわりを観察するたび、ピンクのカーディガンの背中で、ブラウンの髪が右に左に揺れ動く。


 道に迷わないように一旦後ろに振り返り、よそ見をしたまま歩いていこうとした時、ドンと何かにぶつかった。


 素っ頓狂な鼻声が竹やぶに飛び出し、


「うわっ!?」


 そのあとすぐに、安堵のため息に変わった。


「あぁ〜。倫か。びっくりした。るっ、るなすかと思った……」


 ミリタリーズボンの膝の上に両手を置いて、ドキマギしている夫の前で、妻はいぶかしげな顔をする。


「またまた〜! 独健どっけんさん、わざと驚いたふりして〜」


 少しの間があったが、照れたようにひまわり色の髪をかき上げて、独健はさわやかに微笑んだ。


「まっ、そうだな。お前には通用しないよな」


 本当は違うのだ、この夫は。フードつきのジャケットを、倫礼は手で軽くトントンと叩く。


「そうですよ。何で、罠にはまったふりするんですか?」

「その方が罠を仕掛けたやつが喜ぶだろう?」


 こんな人なのだ、この夫ときたら。はつらつとした若草色の瞳を、妻はまっすぐ見上げ、腰に両手を当てて叱ってみた。


「独健さんは優しすぎです」

「あぁ、どの口がそんなことを言うんだ?」


 少し怒った感じで鼻声が響き、倫礼の小さな肩をガバッとつかみ、妻は逃げようとするが、


「あ〜あ〜っ!」


 あごを無理やり引っ張られて、唇をすぼめられた。倫礼の口からは意味不明な言葉が出てくる。


「フォナシュチェキュジャシャイ〜〜!(離してください〜〜!)」


 いくらもがいても逃げられなくて、妻の顔がしばらく変な感じで歪んでいた。


 気がすんだ独健はふと手を離して、二千年も生きている夫として妻に説教をし始めた。


「お前もそうだろう? 一体いつになったら自分のことをするんだ? 人のことばかり優先させて。そうだろう?」


 何度同じことを人から言われたのだろう。倫礼の唇はぎゅっと噛みしめられた。


「はい……」

「そういうことは俺たちに任せておけばいいんだ。倫は自分の信じた道を進めばいい。そうだろう?」


 さわやか好青年で、面倒見がいい夫の温かい言葉。その前で、我慢という薄氷を張っている心が溶け、倫礼の頬を涙が伝い始めた。


「…………」


 独健は慌てるわけでもなく、ただただ謝った。


「あぁ、すまない。泣かせるつもりじゃなかったんだが……」


 倫礼は手のひらで涙をぬぐい、首を横に振る。


「違うんです。感動して泣いてるんです。みんなが想ってくれてるから、自分は何事もなく過ごせてるんだと思うんです。だから、いつもありがとうございます」


 人より幸せだと、おまけの妻は思う。自分を愛してくれる配偶者がたくさんいるのだから。勝手に結婚してしまったけれども、みんなきちんと自分を一人の個人として対応してくれているのだ。


「素直でいい子だ」


 ポンポンと独健は倫礼の頭を、ミサンガをしている手で優しく叩いた。これがこの男の良さ。


 だが、妻は乱れた髪をさりげなく直す。いくら愛している人であろうと、頭を触られるのは遠慮したい性格なのだ。


「……あぁ、はい」


 ふと風が吹き、笹の葉がカサカサと音を立て、二人を他の景色から切り取った。


「だから……」


 冬の冷たい風に、独健の鼻声が混じる。


「お前のことが好きなんだ――」


 ――この男はいつでも、自分のことより、妻のことが一番。優しさの塊でできている。べったりにならず離れすぎず、絶妙なバランスで距離感をたもち続ける、天性の勘を持つ。


 人に好かれるのがよくわかる。夫たちの中では異例で、感覚で動いている。その代わり、自分と同じように直感をよく受ける。そこが重なり合う。


 だが、この男が生きてきた二千年という月日は、価値観の違いを生み、それが心地よいずれをいだく。


 大騒ぎでお互い相手に手を伸ばして、かすかに触れては、もう一度挑戦するの繰り返しを、ずっとトライし続けたいと強く願える男。


 そうして、今みたいに、時々出会うのだ。自分とこの男の心の手は――


「好きです」


 倫礼は晴れやかな気持ちになった。だが、独健のはつらつをした若草色の瞳は陰りを見せた。


「何だ? ずいぶん素直だな。いつも言わないのに……」


 ギクリとし、倫礼は慌てて顔を背けた。


「っ……」


 すっと直感が落ちてきた、ひまわり色の髪の中に。屋敷があるであろう方向を見つめて、あの中性的な夫の気配――いや居場所を、瞬間移動をする時に使う感覚で捉えた。


「あぁ〜、そういうことか。そうか。あいつにも感謝しないといけないな」


 アーミーブーツは地面の上を何度かふみ鳴らした。うんうんうなずいている夫の整った顔を、倫礼は不思議そうに見つめる。


「え? 何で納得してるんですか?」


 独健の大きな手が頭に落ちてきて、グラグラするほど揺すぶられた。


「お前が思ってるより、俺たちは連携が取れてるからな」


 やられてばかりでいるものか。倫礼は両手で独健の手をつかんで、ぽいっと投げ捨てた。


「どういうこと?」

「お前は知らなくていいんだ」


 鼻声の夫は気にした様子もなく、首を傾げている妻を見て、楽しそうに微笑んだ。


「おや〜? こんなところにいたんですか〜?」


 二人が振り返ると、こんな風景が広がっていた。竹やぶの中に、白いチャイナドレスを着た、マゼンダ色の長い髪を持つ男が一人。ピンヒールに、男を釘付けにするような綺麗な足をして、ニコニコと微笑むのに邪悪な夫。


 見つかってしまった。倫礼は慌てて、瞬間移動をかけようとしたが、


「また、別のところに隠れ――」

「ちょっと待った!」


 瞬発力のある夫が、妻の肩に手を置いて引き止めた。


「え……?」


 妻は知らないのだ。夫たちにやることがふたつあるとは。なぜ止められたのかわからず、二人の夫の間で、倫礼は立ち止まった。


るなす、お前わざと早く出てきただろう?」


 勘の鋭い夫が気づいていないはずがない。鬼になるなどと言ってくるとは、おかしいのだ。何かをしているのである。


 夫は夫。夫夫ふうふは夫夫。対場は対等だ。月命はこめかみに人差し指を突き立て、時刻は、


 ――十五時三十九分十二秒。


 隙なく確認しながら、女装夫は怖いくらいニコニコと微笑んだ。


「おや〜? 君も人聞きが悪いですね。人の恋路を邪魔するものは、馬に蹴られて何たらです〜」

「どうして、十四時七分なんだ? 集合時間が。それがいまいちわからない」


 やはり理論に、直感はかなわなかった。わかりやすく、わざと七分ずらしたのだ。光命に問い詰められても言わなかった、月命だ。言うはずがない。


 さりげなくこんな言葉で、先に進めた。


「独健、倫を連れ去ってしまいますよ〜。まだ他の人が見つかっていませんからね〜」


 優しい男にこんなことを言ったら、どうなるか目に見えている。独健はひまわり色の髪をかき上げ、うんうんとうなずいた。


「他のやつを待たせるのはよくないな」

「うふふふっ」


 含み笑いをして、すうっと白のチャイナドレスは竹やぶから姿を消した。


「あれ? るなすさんがいなくなって……」


 鬼ごっこなのに。見つかったのに。取り残された妻。意味不明で、遠くまで見ようと背伸びをしたり、落ち着きなくキョロキョロしている倫礼の後ろから、独健のさわやかな声が響いた。


「キスしていいか?」

「あ……あぁ……」


 突然すぎて、倫礼は口をぎこちなく動かしながら、戸惑い気味に振り返った。


 恥ずかしがり屋の独健など本当はいないのだ。二千年以上も生きているのだから、もうずいぶんいい大人だ、この男は。


「返事がないってことは、いいって取るぞ」


 黒のフードつきジャケットの長い腕が、倫礼の背中の真ん中に回され、あっという間に洗いざらしの白いシャツに引き寄せらた。


 そうして、夫の顔と同じ位置に持ち上げられた妻のそれ。


 百九十七センチの世界がこんなに高いとは思っていなかった。いつも見上げていた顔が真正面にある。


 目は心の窓。独健の人柄を表すように、どこまでも透き通る若草色の瞳がすうっと近づいてきた。そうして、唇が触れた瞬間、風が吹きぬけ、サワサワと笹が鳴り出した。


 ――どこまでも温かいキス。


 しばらく二人の髪だけが、葉音の中で揺れ続けていた――――

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