vs『愚者』ユージョ=メニーマネー(中編)

「バカな……バカなバカなバカなっ! どうして、巨大ロボがこの世界にいられるっ!? カードの効果で、ここには姿すら現せないはずだ……っ!」


 ユージョーが、激しく動揺する。

 ブラックカードの、『プレイヤーズアンノウン』の効果は、一定以上の力を持つ者を排斥する効果。

 それが通用しないなど、悪夢としか思えなかった。


「そうだろうな。現におれが介入しようとした時、確かに遮られた。しかし――貴様」


 漆黒の騎士が――シュランメルト・バッハシュタインが、ユージョーを指でさして告げる。


「なりそこないとはいえ、貴様はエリステアをこの世界に招いた。であれば、おれも召喚出来るはずだろう? まさか、貴様だけに都合の良いルールなどあるまい。そのように、異世界の神……いや、アルマガルム・アークエグゼとやらと協力して、貴様の世界に問い詰めた。そうしたら、あっさりはいれた。それだけの話だ」

「…………」


 ユージョーは、声が出なかった。

 正体不明の、しかし自分たちより間違いなく強い存在を見て、しかもカードの効果を無視してこの世界に介入したというのであれば。

 もはや出来る事は、手持ちの戦力で抗う事だけである。


「須王龍野、安心しろ。ヴァイスシルトというお前の姫も、今頃はアルマガルム・アークエグゼが助け出している。おれ達はおれ達の敵を、倒すぞ」

「あ、ああ!」


 その言葉と同時に、漆黒の騎士――Asrionアズリオン――が、大地に降り立つ。


「下がっていろ。露払つゆはらいはおれが引き受ける。お前はこの世界のあるじを、お前自身の剣によって打倒してみせろ」

「分かった!」


 龍野は魔力の噴射方向を変え、一気に距離を取る。

 十分な距離を取ったのをシュランメルトが確かめると、ユージョー達に向かって告げた。


「では、貴様達悪逆の徒をここで討つ。そのよこしまな心を、世界に解き放つ訳にはいかん」


 Asrionアズリオンが、剣の柄と小盾を取り出す。

 そしてそこから漆黒の結晶を伸ばし、大剣と大盾を形作ると、大剣を眼前に捧げるように構えた。


「覚悟しろ」

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