おわらない詠~endless songs of cruel world~

春の雪

第1話 貧民街の少女

指に、ハメている銀のリング。


何故だか知らないけど、外に出る時、いつも、「あたし」は、ハメて行く。


何処の、いつの時代の 何処の国の物か もしかしたらよその星か


分からない模様が彫ってある。


字?


分からない。


少なくとも 「あたし」の知ってる、この星の国の物じゃない気がする。


何となく。理由も無いケド。


それは、「あたし」が、恐ろしい位、自分でも、嫌になる位


モンスターの様に、短時間で、太っても痩せても


この指に、ぴったりと、ハマってくれる。


だから、きっと、好きなんだ。


だから、きっと、いつも、外に出る時は、ハメて行くんだ。


何処で産れたのも分からない、自分が何者かも、名前も分からない「あたし」には


何だか、とっても似てて、ぴったりな気がして。


そして何より、その模様が、何故かとても懐かしく、美しく想える。


誰も知らない、分からない物って、美しい。


「あたし」は、いつから、この星の、この国の


この場所に、俗に良く言われる、あまりに単純に、都合良く言われる


「貧民街」


に、いるのだろう。


気付いたら、この異臭漂う、ありとあらゆる汚物の堕ちている


混沌とした、でも美しい、反吐の出る町に、立っていた。

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