第8話 道楽
「それで?そろそろ教えてくれてもいいんじゃないかしら?」
彼が持って来た世界に入り込み、少したったタイミングで私はそう話しかけた。
「そうだね。でも僕が語るよりも実際に触れてみた方が早いんじゃないかな」
「…それもそうね」
そして私は心に触れ、記憶を読み取った。
「…なるほどね」
記憶から多くの感情が流れ込み、私は失笑しつつも理解した。
「この心をどうするかを君に任せたいんだ」
「どうして?」
「今まで君がめちゃくちゃにしたのは夢が叶ったり、順風満帆な人生を送ったり。まぁおよそ幸せに人生を過ごしてきた人の心ばかりだろう?こういうケースの時はどうするのか気になってね」
「なるほど。私はあなたの興味だけでこの道楽に付き合わされたわけだ」
「どう解釈するかは君に任せるけど、どうだろう。任されてくれないかな?」
確かに、私がぶっ壊してきたのは彼の言う通り、幸せ者ばかり。
読み取った記憶からは、およそ幸せとは程遠い人生を送ってきた人の心だった。
「…っ」
一瞬だけ、脳裏を記憶がよぎる。
それは心から読み取ったものではなく私自身の物。
私自身にこびりついて取れることのない残滓。
「どうかしたのかい?」
「…なんでもない。いいわ。任されてあげる。けど、少し時間をくれないかしら?」
「それはよかった。それじゃ、先に戻ってるよ」
彼はそう言い残し、その場を後にした。
残ったのは私一人。
「とは言ったものの…」
実際問題、こんなもの至極どうでもいい。
別に他人がどうなろうと私の知ったことではないし、どうしたっていいと彼も言っていた。
しかしながら。ただの気まぐれで。遊び感覚で。
私は少し、扱いに躊躇した。
「ま、いいか」
ただ一言そう言って、私はその道楽に興じることに決めた。
***
…上手くいった。
後は互いが互いを補ってくれればいいが、そう上手くいくだろうか。
上手くいかなかったときは、まぁ、その時考えればいい。
兎も角、これで僕の計画は軌道に乗った。
彼女が無事に救われることを切に願って、僕は計画を進めよう。
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