《 事件解決 》 1・2  了

               1


 八月十七日 午前九時


 大和北署の取調室に、坂口浩介が入室した。

取り調べの担当は、10係係長の田辺警部と新城巡査部長。供述調書を大和北署の工藤巡査部長が担当した




               2


「昨日は、眠れましたか?」

 と、田辺警部が、切り出した。


「そうだな。」

 と、坂口は、昨日とおなじ返事の仕方をした。


 田辺警部は、つづけて

「なぜ、こんな事件を起こした。」

「質問が直球だな。」


「そうか。どう聞けばよかったかな。」

「いや、別に。」


「箱根で起こした事件のときは、どういう気持ちだった。」

「・・・」


「覚えているだろ。」

「そうだな。」


「で、どういう気持ちだった。」

「あんたらが何もしないから、やってみただけだ。」


「それで、あれだけの装置を造ったのか。」

「最終的に、そうなっただけだ。特に深い意味はない。」



「弾は、一発しか装填できないよな。」

「そうだ。それしかスペースないしな。」


「どうやったら、当てられるんだ。」

「それは、あんたらが分解すれば解かるだろ。それでいいだろ。」


「聞いていいか。」

「あぁ。」


「つきみ野で、ナンバープレートを変えなかったのは、なぜだ。」

「気が抜けたな。マスコミが騒ぎ立てていたしな。一週間の制約が焦らせた。車を駐車場から出して気がついた。でも、戻る気がなかった。」


「群馬で、楽しんだじゃないか。」

「あー、馬鹿騒ぎしてきたよ。四件もやれば疲れるだろ。毎週毎週、やらなくてはならない雰囲気になっていたからな。」



「気っ、張っていたか。」

「・・・そうだな。」



 田辺警部は、質問した

「さっきの話だが一件目は、どうだった。」

「あぁー。

あれは、テストも兼ねてやってみた。実家の先に登山口があるだろ。そこで、試し撃ちをやっていた。いくつもの木に弾痕があるよ。」


「それで。」

「ドライブがてら箱根に行った。前に通った道だからな。テストにはもってこいだったよ。人通りも、車の通りも、あまり多くないしな。」


「それが、午後三時四十分だった。ということか。」

「そうなるな。特に時間は気にしていなかったが、横断歩道を渡らない奴を見つけたから、撃った。」


「そして、当たった。」

「そうなるが。当たったかどうかは確認しなかった。家に帰ってニュースで知った。」

 坂口浩介は、少し思い出したような表情をした。








「もう一度、聞くよ。

      なぜこんな事件を起こした。」






 と、神奈川県警捜査第一課10係係長の田辺警部は、問いかけた。






               了

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