第14話 特別

俺はスーツのジャケットを脱いでソファーに投げた

キッチンにいき、冷蔵庫にはいってるミネラルウォーターを飲んでいるとインターホンが鳴った


きっと麗さんだろ

可哀想だけどシカトするか


またインターホンが鳴った

頼むから部屋に戻ってくれ

そしてもう俺とは関わらないでくれ


突然玄関が開く音がした

やべぇ鍵閉め忘れてたわ!!

「一瀬さーん?どうしました?」

彼女は心配そうな声で玄関から声をかけた

「ごめん!ごめん!ちょっと仕事の電話があってさ!」

キッチンから玄関の方を見ると彼女はA4サイズくらいの箱を4箱重ねて持っていた

「麗さんなにもってんのソレ?」

「引っ越しそばです!沢山もらっちゃって。一瀬さん夕食まだですよね?おそば一緒に食べましょ!」

彼女は言うなり部屋に上がりキッチンに入ってきた

「一瀬さん!一瀬さん!お鍋あります?」

ニコニコとたずねる姿は可愛いくて本当に癒される

「これって強制イベント的な?」

「はい!当然です!」


やけにグイグイくる子だよな、さっきあったばっかなのに

この子の性格なんだろうけど

客商売やってるからってのもあんのかなー

もしや金になりそうだから?

まぁいいや蕎麦食べるだけだからな、うん

そんなことを考えながら一緒に支度を始めた

「麗さん。包丁使うのめっちゃ上手いね!」

彼女が薬味を切ってくれているのだが

包丁捌きがプロ並みだ

「普段美容師ですし、ものを切るの得意なんです!」

彼女はニコッと笑いながら包丁を顔の横にかかげて言った

「俺のこと切らないでね。」

「浮気しなければ切らないですよ?」

「ん?」

「はい?」

「いやいや、付き合ってないでしょ!!」

「えっ?付き合ってないんですか?」

「待て!待て!だいぶ最近初対面!」

「あはは!本気にしちゃいました!?」

「うるせー!大人をからかうなよ!!」

「わたしも大人ですよー!あー!一瀬さん!耳真っ赤ー!照れてますー??」

「照れてねーよ」


いやまじで恥ずかしいわ

女っ気無い生活しててなんですかこのイベント


「でも一瀬さんだったらいいかな?」

彼女は真剣な顔で俺の顔を見た


えっ?なにそれ!なにこの雰囲気


「はい!はい!わかった!わかった!」

「もー!子供扱いしないでくださいよー!それより一瀬さん、お鍋吹きこぼれそうですよ〜」

「あっ。やばっ!火弱めないとなっ!」


俺の感情も吹きこぼれそうだわ





「あー!美味しそうですね!一瀬さん!一瀬さん!いただきまーす!!」

「いただきます。」


準備の最中

こんな面白おかしく話をしたのはかなり久しぶりだった

それにこうやって社長以外の誰かと一緒に食事をすることはなかったし


他人からみたら普通なんだろうけど

俺にとってこれは

とても「特別」なひと時だった


「おいしかった〜!ごちそうさまでしたー!一瀬さんおいしかったですか??」

「ごちそうさま。麗さんありがとう。凄くおいしかったよ!」

「本当ですかー!よかったです!それより一瀬さん!麗さんって呼び方やめてくださいよ!麗って呼んでくださいよぉ!」

「はい。はい。わかったよ麗」

「なんかいーですね!また照れてます?」

「うるせーわ!」


それから「片付けはまかせて」と麗がいいだして

片付けをしてくれた

そして

「わたしもまだ引っ越しの片付け残ってますんでそろそろ帰りますね!」

「おう。今日はありがとな!」

「また一緒にご飯食べてましょうね?」


俺は黙った


不思議そうに麗は首を傾げながら

「どうしました?」と聞いてきた


できるならまた食事も一緒にしたいし、もっと仲良くなりたい

なんか会ってまだそんな時間はたってないのに

何故か昔からずっと仲良くて一緒にいた気になっちゃうくらい親近感湧いちゃってるし

好きになりかけちゃってるよ




でも



「ごめん。ちょっとさっきはテキトーに独り身なんていったけど実は結婚考えてる彼女がいるんだよね〜。だからあんまりそういうのはちょっと出来ないかな?ははは、、、」




麗は一瞬「えっ?」と言い固まっていたが

すぐにいつもの笑顔を取り戻しニッコリ笑いながら

答えた





「そうでしたか。分かりました!でしたら結婚するまでは来ますね!おやすみなさい一瀬さん!」


「ん、、、えっ???」


俺が呆然としているうちに

彼女は玄関から出ていった


なんとまぁ強引な




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