第26話 次女の夢 2

 次女の友人の中には高校を卒業してすぐに就職した子もいて、そういう子が自由に遊び回っているのが羨ましかったのです。


 次女は自分もアパレル業界で働きたいと言い始め、看護師なんて興味ないのにママに乗せられただけと言ったり、若い今しか楽しいことできないのに勉強するなんてバカバカしいと言ってみたり、ママは世間知らずだから他の人が楽しく暮らしてるのを知らないとか、呆れるばかりです。


 実は看護学校に行くに当たってかなり話し合いをしたのですが、本人はすでに綺麗さっぱり忘れているようでした。


 高校の担任の先生とも頑張れるのかと何度も話し合い、甥が同じ高校出身で準看護師で働いている話をして聞かせたりしていたので本人は頑張れると張り切っていました。


 ところが思ったよりも勉強量が多く、テストの点が悪くて追試の度に追試料金が2000円追追試になれば4000円と掛かっていてアルバイトで貯めたお金からこっそり払い、私に内緒にしていたのです。


 次女は人生で真面目に勉強したことなどほぼないのでうんざりしていました。


 比較的、根性とやる気のある子だと思っていましたが、こんなに諦めが早いとは思いませんでした。


 ブチ切れた私は、

「学校辞めるなら、今すぐ家から出てって!すぐに仕事探して学費を返して!あれだけ話し合いをして決めた事を簡単に辞めるなんて許される訳ない!」

 とめちゃくちゃ怒りました。


 さすがに、ど本気の私の剣幕におふざけの好きな次女はシュンとなり黙ります。


 そして、ベッドへ逃げ込みました。


 夫は

「次女ちゃんは、お前が思っているよりもずっと弱い子なんだぞ。可哀想に‥。本人の好きにさせてやるべきだよ。次女ちゃんに看護師みたいな難しい仕事ができる訳ないじゃないか。」と結構、大きな声で言いました。


 私の頭の中で、「フッ、たまにはいい仕事するじゃない。」とつぶやきましたよ。


 次女ちゃんに看護師みたいな難しい仕事ができる訳ないじゃないか。って超失礼な物言いがベッドの次女に聞こえたはずです。


 馬鹿にされて黙って引き下がる次女ではないのですよ。と言うことは夫には言いません。


 次の日、ママの本気を感じた次女はきちんと話し合いに応じて本当の事を話しました。


 落第すると思い込んでいたのです。落第しても学校に行くのは恥ずかしいとの気持ちから、遊んでいる友達が羨ましくなったのでした。

 丁度、その時に看護学校から電話がかかって来ました。


 次女の追試が多すぎることと、元気がなくて落第の心配をしていることを先生からも聞きました。


 先生から、1日も休まずに授業に真面目に出ているので落第は今のところないです。

 と言っていただけました。


 次女には、追試のお金は次回からママが払うから準看護師だけはなれるように頑張る事を約束させました。


 ここから娘は、ど根性を見せてくれます。

 病院へ実習に行きながら夜は課題を何時間もし、睡眠時間2〜3時間の日もあります。

 多分、人生でこんなに鉛筆を持ったのは初めてだろうというくらい頑張っています。


 夫に任せていたら多分看護学校を辞めていたでしょう。

 夫には子育ては無理だなぁとつくづく思いますよ‥。

 辛うじて間違った物言いが次女を奮い立たせたかもしれませんけどね。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る