追いついた!

「見えた!彼女、朝日 ヒロミ!」


俺は足を止めて、彼女を見つめる。

彼女も俺に気づいたのか、俺を見つめる。

その距離およそ50メートル。


改札口近くで立つ彼女は、高校生にしては、少し大人びた雰囲気がある美しさで、一際目立つ。

改札口を通る男達は皆、彼女を横目で見て通る。


「誰なんだ?」

「き、綺麗だ!」

「誰か待ってるのか?」


通る男達は皆呟きながら彼女の前を通って行く。


俺は彼女が待っていた事に、凄く嬉しくなり、顔が少し緩み、笑みが出る。

彼女も遠目だが、微笑んでいるように見えた。


「彼女にあやまらないと」


俺は彼女を見つめながら、そう思っていた。



◇◇◇




彼が見えた。朝日 ヒロミ。

彼を見た瞬間、私は安心した。

やっぱり、直ぐに来てくれたんだと。

遠目だけど、彼が私を見て微笑んでいる様に見えたから。

私は左手を胸の辺りに置くと拳を作り


「彼に言わなきゃ。彼に」


私は彼を見て、微笑んだ。

すると私の後ろにいた日和が、私の背中をトンと押す。

私は少し前のめりになるが、日和が、



「お姉ちゃん、頑張れ!」



ニコリと微笑んで一言言うと、私は頷く。

そして、私は彼の方を向き直り、

彼に‥‥‥彼に‥‥‥彼に‥‥‥








「せんぱーーーい!」






俺の後ろから、聞き慣れた声がした。

俺と明美が振り向くと‥‥‥



「ハア!ハア!‥せんぱーい!や、やっと追いついた」



えっ?えっ?えっ?だ、誰?

俺は最初、誰だか分からず、首を傾げた。

すると横にいた明美が、



「なに言ってるの。恵美ちゃんだよ」


「へえ?‥‥‥えええーーーっ!恵美!」



そうなんです。俺達に追いついた女の子は、あの、時野恵美ときのえみだったんです。

しかし、つい最近見かけた時は 地毛が少し薄茶まじりで三つ編みしていたから、地味子みたいな感じだったんですが、俺の前にいる恵美は、綺麗な黒髪が腰まであり、サラサラなロング。しかも顔は少し(パッと見た目ではわからない)化粧をしていて少し大人びた感じだ。

おまけに、俺の見慣れた高校の女子用のブレザー来ているので、明美よりも女子高生に見える。


そんは時野恵美が、俺の背中に抱きつくと、



「せんぱい♡今日からまた一緒に登下校できますね♡嬉しい♡」



なんて言ってくるから、俺、硬直。

で、ぎこちないロボットの様に後ろの改札口側を見ると、彼女、朝日ヒロミはニコリとしていた。

俺は恐る恐る、右手を上げて、ぎこちない笑顔をすると、



「行こ!日和!(怒り)」


「あっ!お姉ちゃん待って!」



俺に背を向けると、丁度来た電車に乗って先に行ってしまった。



「せんぱ〜い♡」



甘えてくる恵美。

気落ちする俺に明美は俺の背中をポンポンと叩くと


「これも運命ね、お兄ちゃん♡」


笑顔を見せてきましたよ。

あ〜、この先俺、どうなるんだよ。




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