病は突然に

弥生

第1話

 その日は秋のよく晴れた祝日だった。私にはアクティブな趣味は無く、ゲームや映画鑑賞、読書というインドア趣味ばかり。休日前はゲームのために随分遅くまで夜更かしをして、次の日は午後に起床するという生活。睡眠時間も少ないし、常時眠い。

その日もよく晴れた日なのに私は家に閉じ篭ってゲームに興じていた。とは言ってもずっとゲームをしていたわけでもなく、時折休憩を兼ねて家の掃除なんかもしていた。

 ゲームをしていたら、急に左肩辺りが痛む。しかし私は元々楽器をやっていたせいもあってか左肩はよく痛みがある。楽器というのは大抵バランスが悪い。古典楽器になればなるほど不自然な姿勢で弾くことになる。私の場合は左肩に負担がかかっているようで、以前から左肩はよく痛んだ。だから特に気にも留めなかった。

 ゲームが一息ついたので、夏場フル稼働していたエアコンの掃除をする事にする。エアコンの室内機は高い位置にあるので、台を持ってきて、その上に立ち上がり少し手を伸ばさないといけない。カバーを開けて露出したフィンにクリーニングスプレーを噴射したりしていると、先ほどの左肩の痛みが急に酷くなった。

どうしてこんなに痛むのだろう。エアコンの掃除を中断して、左肩に湿布を貼る。でも良くはならないどころか更に悪化し始める。そのうち右肩も痛みがやってきて、更に首、そして顎辺りまで痛みがやってきた。

激痛と言っていい。じっとしている事が出来ないほどの痛み。立ったり座ったりを忙しなく繰り返す。

 何が起きているのか自分でも分からない。とりあえず痛み止めを飲んで様子を見る事にする。痛み止めを飲むためには、胃に何か食べ物を入れなくてはいけない。丁度お昼に用意してあったコロッケを口に入れた。

そうすると物凄い吐き気が襲ってきた。コロッケ一個食べただけなのに。なんとか我慢して戻さなかったが、知らぬ間に全身汗だくになっている。

あまりの気分の悪さに横になると、少し楽になった。このまま少し様子を見てみよう。明日になって治らなかったら病院に行こう。その考えが甘い事を私は後で知る事になる。その日はそのまま夜を明かした。


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