第29話 秋光

「前にも言った通りあなたに話すことなんてないの」


私は昨日に引き続き、ソファーの上に座っている秋先にこう言った。


「じゃあ学校行かない」


なんでよ?どうしてそうなるの?

まるで子供のような答えを出す秋咲を見てそう思った。


「何の目的で家に来ているのかは知らないけど、迷惑。今は1人にさせてほしいの。」

「あなたみたいな明るい子が急に立て続けには休むわけない。きっと何かある。私はそれを助けたい、あなたの力になりたい。」

「なんで助けようとするの?私はあなたが嫌いって言ったはずだよね」


「だから助けるの」


「へっ?」


思わず間抜けない言葉が出てしまった。


「あなたが嫌いだから助ける、それじゃダメ?」

「いやダメとかじゃなくて.....だって意味わかんないし」

「そんなのどうでもいいでしょう、とにかくあなたを助けたいの。」

「あーもう意味わかんないよ、気持ちの整理がつかない。とりあえず今日は帰って。あなたが学校に行こうが行かまいがどうでもいい!」

「わかった....」


そう言って家から出て行った。

リビングには私だけが残った。


「あーもう....」


家から出ていく時の、秋咲の寂しそうな顔が脳裏に浮かぶ。


「なんで私が悪いみたいな感じなのよ...」


また考えるべきことが増えた。もう嫌だ、寝よ。


現実から逃れるようにまた私は眠りに入っていった。



秋咲は次の日も来た。そして次の日も次の日も。休日とか関係なかった。

そして来る度、私は秋先を追い払った。


そして明咲が家に来るようになってから七日目。


もう全部言ってもいいかな、そんな気持ち私の中に広がっていた。と、


ピンポーン


ガチャ


「いらっしゃい」

「失礼するわ」


このやりとりも慣れたもんだ。毎回リビングまではすんなり通している。

ってあれ私、秋先のことが嫌いなんじゃなかったっけ、てか嫌いって何だっけ。

まあいいや。


「しつこいようだけどやっぱりあなたがなんで学校に行かないのか教えて欲しい」


少し間があく。


「いいよ」


「えっ?」

「えっ?ってひどくない?もう毎日毎日来られても困るしね。」


秋咲はぱっと明るい顔を見せた。あの顔を他の男子に見せたらイチコロだろうな。


「ごめんなさい。だって絶対話してくれないと思っていたから。ありがとう。」


本当に何で私なんかに構うのかしら。


「それじゃあ本題ね。実は....」


私の過去から、今に至るまで話した。

三島 景やさぐりんのことも赤裸々に話した。


さぐりんの時に感じたみたいな、嫌われたらどうしようとかは考えなかった。

私が秋咲のことを嫌いだからだろうか、いや違う気がする。


「そうだったの...」


秋咲は、たまに相槌打ちながら真剣な顔で聞いてくれた。


そして笑った。嫌味のようではなく、優しく。


「辛かったね。」


私にはその言葉で十分だった。


「づらがっだよおお.......」


気づけば涙が溢れ、秋咲が背中をさすってくれていた。


「ありがと」


「どーいたしまして、それにしても探君がねぇ....」


秋咲は考える素振りをした。

それを見てから、私は言った。



「明日から、学校行くね」



「え?本当に?」

「うん、私はきっと、誰かにこの話を聞いて同情して欲しかっただけなの」

「そう。何かあったら相談に乗るわ。」

「ありがとう。なんか唯未、変わったね。」


もう嫌いなんて感情はない、親しみを込めて下の名前を呼んだ、唯未は一瞬戸惑ってから


「星雨もね。」


と言った。


なんだかその様子がおかしくて、2人で笑いあった。


私は胸のつっかえが、2つ、取れた気がした。






そして、今に至る。あんな感動シーンを経由した私でも、さすがに約1週間ぶりの学校は心が暗い。


「よし、行こう。」


頬を軽く叩いて、


ドアを開けた。



久しぶりの外だ。



久しぶりの、学校だ。


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こんにちは。嵩いの李です。皆さん、いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。

レビューやいいね、コメントして下さりますと、とても喜びますし、モチベーションがすごく上がります。特にレビューして下さるとハイテンションになって裸で踊り狂います。質問等もお待ちしております。

毎日21時投稿を心がけておりますが、嵩いの李は現役高校三年生、受験生なので、やむを得ず投稿できない日もあります。何卒、御理解お願いします。これからも、『ラブコメ主人公は爪隠す』をよろしくお願いします。

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