第5話 決着

おれは今日も1番乗りで教室に入った。いつものようにメガネとマスクをつけ、本のカバーをつけずにラノベを読み始める。

ラノベを読んでいるうちに、いつの間にか周りががやがやしていた。もうホームルームの時間か。ラノベに集中していて気づかなかった。

さて、今日はどんな日になるのやら。

そう思っていると、教室に先生が入ってきて、1番にこう言った。

「模試の結果についてだ。前と同じ、個人成績は郵送するが、全国の順位が出たのでその冊子を配る。この学年からも全国2位が出ているぞ。よーく見て勉強へのモチベーションに繋げるように。」

周りがギャーギャー騒いでる間に俺のところにも冊子が回ってきた。そして、配られてきた冊子を見て俺はほくそ笑んだ。


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放課後私は直ぐにテニスコートに走った。授業なんて気が気じゃなくて、早くやつと話したかった。そしてテニスコートに着くと、呑気な顔をして佐藤探は待っていた。

「よう、遅かったな。」

その言葉を無視して、私は言った。

「なんなのよ!あの順位表!」

「なんなのよも何も、当然の結果だ。」

今日、朝すぐに、模試の結果が配られた。

配る前に先生が、私が全国2位ですごいと褒めていた。1位ではないことは悔しかったが、正直どうでもよかった。あいつは何番だろう。きっとこの冊子にも載っていないかもしれないとおもった。

けれど、その思いは砕け散った。

配られた冊子を見て固まった。


総合第二位 臨生学園高校 秋咲 唯未


そう書かれた上に


総合第一位 無所属 佐藤 グリサ


と書かれていた。

総合得点は...900点。満点である。意味がわからなかった。どうしてこの場所にこの名前が載っているのか。

授業も気が気じゃなかった。そして直ぐにテニスコートに向かったのだ。

「あなた、金の力を使ったんでしよ?ねぇそうなんでしょ?」

きつとそうなんだ。絶対そう。そう出なきゃあんな点数取れるはずがない。けれどもこの男は困ったような顔をしていった。

「そんなめんどくさいことするわけないだろ。お金なんて使わなくても勝てる。負けぐらい認めろよ。テニスで勝てばいいだろ。」

佐藤探が嘘をついてるとは思えなかった。きっとこの結果に不正はない。けどもその事実を脳が拒否していた。

でも、私にはテニスがある。そう思うことにした。私は全国大会常連のテニスプレイヤーである。今度こそまけるわけがないのだ。きっと...いや絶対に。

そしてお互いに準備が出来た時に、佐藤探が「邪魔だよな.....」と呟いて、メガネとマスクをとった。

そう言えば顔を見た事がない。どうせひどい顔なんだろうなと思い横目で見た。目眩がした。一言で言えば、美少年だった。

この学校、いや自分が見た男の中でも圧倒的に顔が整っていた。どこかのモデルと言われても何も不思議じゃなかった。

「あ、あんた結構顔整ってるわね。」

声が震えていた。

「そうか。」

無機質に佐藤探は答えた。

「なんでいつもマスクとメガネとマスクをしてるの?」

聞かずにはいられなかった。

「答える必要は無い。早くやるぞ。」

「わ、分かってるわよ。」

答えてもらえなかったのは腹が立つが、気持ちを切り替えねば。聞きたいことは山々ある。この試合に勝って全て吐かせてやろうと思った。


そして、お互いがコートに向かい、試合が始まった。



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