第4話 完璧

佐藤 探だとわからないようにしたいので、安易だが模試は佐藤 グリサという名前で受けることにして、秋咲にもそのことを伝えた。

今頃あいつは猛勉強中だろうなぁ。

あの後、すぐに家に帰り、机の上で頭を突っ伏して教室で言ったことをずっと後悔し続けている。

「高校では誰とも関係持たないって決めてたのに......」

でも言ってしまったのでしょうがない。しぶしぶ顔を上げ、秋咲との勝負について考えるのであった。


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私、秋咲 唯未は昔から厳しくしつけられた。

父親が勉強や受験に対してコンプレックスを持っていたこともあり、勉強勉強と、小さい頃から言われた。

私が5歳になった頃、父が今の職場、佐藤財閥に転職した。その頃から、勉強だけに厳しかった父が「完璧になりなさい。」と勉強以外のことも求めてくるようになった。

私は、期待に添えるようずっと努力し続けてきた。小学校から中学校まで、学校の中でどんな物も1番を取り続け、生徒会長もやった。深い関係の友達がいる訳でもないが、交友が広く、周りから頼られる存在にもなった。


なのに。


なのに、まだ、父は完璧を求めてきた。

父の完璧な人間という理想像がわからなかった。わからないけど、今も、生徒数2500人のマンモス校、臨生学園高校で何事も1番を取り続けている自分より完璧な人間なんていないと思っていた。

だから父が涙ながらリストラの話をした時悲しかったけど、チャンスだと思った。ここで家族を救えば、父に認めてもらえるんじゃないか。そう思った。


けど、実際はそう簡単にいかなかった。私のような完璧な相手から友達になろうと言われたら、すぐにしっぽを巻いてついてくると思っていた。だけど、あのキモオタはそれを断った。

人格が全否定されたような気持ちになった。死ぬしかないと思った。こんなやつに拒否されるくらいだから私は父の言う完璧になれないんだ。そう思って教室で死のうとした。

悪足掻きとして佐藤探の名前の入った遺書を残して騒ぎを起こしてやろうと思った。


でもまた、失敗に終わった。佐藤探にとめられたのだ。しかも泣き顔まで見られた。

今度こそ生きていけないと思ったけど、そこで佐藤探は勝負を仕掛けてきた。自分に勝てたら家族を救ってくれると言った。まだ神様は私を捨てていなかったのだ。あいつは、模試の順位にも乗ったことがなければ、運動も出来ない。私が勝つ要素しかない、そう思った。けど万が一のために、必死で勉強して模試当日を迎えた。

模試を終え、自己採点をした。過去最高点だった。900点中889点という全国の中でトップの順位を飾ってもおかしくない点数を勝ち取ったのだ。やっぱり私は完璧で天才だったんだと思った。嬉しくて震えた。

よし、このまま行けば勝てる。あとはテニスだけ........!


こうして、模試の結果発表までテニスに打ち込みとうとうその日を迎えた。


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