第19話 幼馴染からの告白

飲み物を買うのに手伝って欲しいって水樹さんに頼まれて付いて来たけど。

何で私なんだろう。


「付き合わせてごめんね、雪ちゃん」


「大丈夫ですよ」


その後は特に何もなくて只近くのスーパーに行って一リットルのお茶とジュースを一本ずつとお菓子を幾つか買い足して皆の所に戻ったので深い意味は無かったと思ったところで、もうすぐ着くと距離で止まった水樹さんは私の方へ振り返り問い掛けた。


「雪ちゃんさ。蓮の事どう想ってるの?」


それは質問の意図もそれを聞く理由も説明もない、端的な問いだった。


「…好きです。大好きです」


はっきり誰かに言うのでさえ恥ずかしい。

それでも躊躇わずに言った私に水樹さんはシンプルに答えた。


「それは幼馴染としてじゃなくて男子としてかな?」


「はい」


私の答えは一分の揺らぎもないものだって自覚出来る。

昨日決意してから、今日江菜に同じように聞かれてから気持ちにとても余裕ある感覚があるように感じる。


そして、そんな私と水樹さんの視線が合ったとき「何で今なの?」と目が語っていた。

私は聞かれてもないのに話し始めた。


「私、受け止めて尚付き合う事を選んだ江菜が羨ましかったんです」


だけど逃げた。恋愛感情から逃げたんだ。

でも同時に諦めたはずの感情は消えずに溜まりにたまっていて。そしてもう一度自覚して時、二人の姿を見るのが辛くなってた。


「…楽になりたいのかもしれません」


そう呟くと水樹さんは険しい表情を浮かべていた。


「…本当にそう思ってる」


水樹さん怒ってるんだ。

でもいつもの大袈裟な怒りじゃなくてとても静かな、そう、本気で怒ってる。


どう思ってるか。

私は決めた告白するって。背中を押してもらっただけのものだけど。

でも今日、江菜に蓮に告げる事を言ったときに何かが込み上げた来た。


たぶんそれは江菜に言った言葉と関係してる。

でも、負けたくない、逃げるな。

便乗でも何でも良い。断られるかもしれないからしないも無し。

した時、壊れることはなくても告白して関係が少しずれてしまうのが怖かった。

でもしない方が後悔する。

それに江菜だって振り向いて貰っていない。

なら、私にだって可能性はある。

あの時学校で、楽しそうな二人を見て感じたのは辛さじゃない。

隣にいるのが私じゃない事への妬き持ちと、


「すいません思ってません。寧ろ、私は悔しくて許せないんです」


自分に対しても、そして


「恋させた蓮に対しても許せないんです」


「そう。なら…雪ちゃん?」


そうだよ、恋させておいて自分のには興味ない蓮も、それで諦めちゃった私も許せない。

だから絶対惚れさせてやる!


「ありがとうございます。私、今からしてきます」


水樹さんのお陰で本当に決意が出来た。

私は呆然とした水樹さんを置いて蓮のいる所へ走った。でも、


「荷物で走りにくい~」



「考え込んだと思ったら吹っ切れたみたいね。………それにしても私の息子は可愛い女の子二人に好意向けられて隅に置けないなぁ。あぁぁそんな息子を自慢したいかも」


◇◇◇


暫くして雪だけが買い物袋を持って戻ってきました。

そして何やら険しい表情をしていて「埋め合わせの続き」と言われて付いて行った。


桜並木の続く公園の中心にある池を通りすぎて奥へとさらに進んでいきます。

そこには綱渡りの時よりも全体を一望できるくらいの高台が聳え立っていました。


「綺麗だね。夕方はまた違う綺麗な景色になるねこれ」


上るとそこは本当に見晴らしが良くて桜が公園を覆う景色はどこか幻想的でした。

両手を高台の手摺に乗せて体重も軽く乗せて前のめりになりながら景色を眺めてる。


天気も良くて雰囲気も良い。周囲に人はいない。

告白するなら……そっか。

途中から雪は僕との歩調をあわせながらチラチラと見ていました。


そして、いつ切り出して言おうか迷ってるうちにここに着いて今は前のめりになりながら目を合わせようとしては頬を赤く染めるを何度も繰り返して


「あの、その…」


「うん」


変に緊張して体が強張っている。

その状態の僕を見てクスッと笑うと一瞬雪はむっとした表情になったけど後笑顔になりました。緊張が解れたようです。

頬を薄桃色に染めて風で靡くロングヘアから見える少年の様な顔は完全に少女の顔でした。

そして、


「蓮、私は貴方が好きです」


向き合い始めた僕だからか不思議と江菜さんの時とは違い苦しいよりもフワッと心臓辺りから何か一瞬熱く広がりました。

でも、嬉しいとは違うかな。


安心、が近いかもしれないです。

僕が自分の恋愛に興味が一切無い、情も沸かないことを雪が知ったのは中学一年生の後期でした。

その時に恋愛の助っ人をしていたことを雪と樹は知りました。

樹が言うには中学の頃には既に好きになっていたと聞いた時に僕は雪の恋心を抑え込んでしまっていたんだとわかりました。


だから僕は答えないといけない。


僕の恋愛感情の事を知っていて告白してきた雪に濁さず、明確に。


「雪、ありがとう。でもごめん」


「…うん、知ってる」


そのまま雪は話を聞く体勢でジッと僕を見つめます。


「……誰かを好きにはなれてるとは思うよ。でもそれは恋みたいに『特別』じゃなくて友人とか家族の『大切』って意味」


好きになっても恋にはならないんです。

そして、それが今の僕。

感情の欠けた春咲蓮地という男子。


「卑怯で狡い言い方かもしれないけど、僕、雪の事好きだよ。だって思ってる。

でも今の僕じゃ雪を幸せにはできない。寧ろ辛くさせるだけ」


答えていく僕の言葉を一生懸命聞く雪の手や足は震えていました。

これ以上は駄目だと思いますがまだはっきりと答えていません。


「だから雪の気持ちにはこたえられない」


僕が話終わると雪も黙る状態が約数分続きました。


「……蓮、ありがと…それで聞きたいの。江菜のことはどう思ってるのか」


僕は一回頷いて口を開きました。


「…江菜さんの事も。でもその為に恋人として付き合ってる」


「そうだよね。でも私が中学の時受け入れて告白してもこうはならなかったんじゃないかな」


「どうだろう。今じゃ、もう分からない」


今も昔も僕は本当の意味で好きを知らない。

大切ではない特別の好きが。


「あ〜あ振られちゃったぁ―


―それじゃあ、ちゃんと明日から振り向いて貰えるよう私も頑張るから宜しくね」


「え?」


今何と?

振り向いて貰えるように?だって今振ったばかり。


「困った顔をして申し訳ないけどね。私、振られたとは言ったけど諦めますとは一言も言ってない」


確かに。

僕は思いがけない事に戸惑いながら凄い女の子だと関心してしまいます。


「それに蓮はまだ恋をしてない。だから恋人として私を好きになる可能性はある、でしょ」


「う、うん。そう…だね」


「だから明日から覚悟してね、蓮」


上目遣いで除き混むようにして見つめる雪に敵わないなぁと思ったけど。それとこれとは別。


「嫌だ」


「何で!」


「だって…僕は修羅場もハーレムみたいな事望んでないからぁ!」


僕は高台を下りて逃げ走る。雪も走りって後を追いかけて来る。

行き着く場所は同じだと分かっていても必死

に逃げる僕。

そんな僕を追いかけて来る雪の表情を見て笑みが溢れました。


「こら〜!待て〜れーん」

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