第18話 相談役は幼馴染、彼氏の親

雪リクエストにより―

江菜さんは砕けた口調で話すこと。

樹は女子と向き合い(雪と僕の補佐のおまけ付き)

鈴は僕への接触、考えるの迄1日禁止。

考えないとはどういうのかというと『撫でる姿』、『お兄ちゃんが好き』、『側に行きたい』とか要は妄想禁止という事です

結果は号泣。

でも何でこんなリクエストをしたのか謎です。


そして僕はというと保留。

詳しくは後ほどを検索。

じゃない。


保留と言った時またあの顔でした。

好きな人に、恋をしている、幸せそうな表情。依頼してきた人達や江菜さん、そして鈴もかな同じ雰囲気の表情を浮かべることのある……雪は僕が好きなの、かな。

それも異性として。

でもいつから?


自意識過剰なのかもしれません。

そう江菜さんとの事で過剰になってるだけ、ただの思い込み。

そうだとしても今の僕は恋をしてるしてないとか事情がどうこうとか関係無く。

彼女がいる。


「…にい…」


でも、もし、もし雪が今の僕に…。


「……おにい…お兄ちゃん!」


僕は大分深く考え込んでいた様。


昼食までまだ時間があるので僕達五人はこの公園にあるアスレチックエリアに行くことになりました。

子供向けと一般向けがあって僕達は一般向けに。

その間母さんと蒿田さんは二人で陣地で花見中。

今日くらいは丁度私服姿という事もあって執事の仕事は一時的に休みとなりました。


勿論あの後蒿田さんに謝罪をしました。


そして、僕が考え耽っている間にアスレチックエリアに着いてしまっていた。

故に桜並木の道を通っていた事を覚えていません。

鈴が呼び掛け続けていなかったら僕は何処に行っていたのかが気になる。


「ふふ、ふふは」


「お兄ちゃんが可笑しくなった」


「こほん。…お兄ちゃんは至って正常です。ありがとう、鈴」


呼び掛け続けてくれた妹の頭を撫でる。

ん?接触禁止ですか?それは妹がで僕は駄目とは言われてないので。


「お兄ちゃん。私は今撫でられてお兄ちゃんの事で頭がいっぱいになりそうなのを凄い我慢してるんだよ」


そうだった。会話とかは大丈夫だけど、僕の事を考えちゃいけないっていうむごい雪リクエストがあった。


でも考えてるかどうか正直困難だと思うけど鈴の場合は行動とかに出るから。

まさに今ふるふる小刻みに震えて我慢をしていますから。


「…う…止めな…て」


「鈴奈ちゃぁぁん。今一瞬蓮が撫でる妄想をしたな」


するとアスレチックエリアで遊ぶ為に事前に持ってきていたスポーツウェアへ着替えた雪が後ろからホラー映画の登場シーンのように現れました。

少し怖かった。


「雪さん!…いえしてません」


「じゃあ何で蓮が頭から手を離そうとしたとき蓮に手を伸ばそうとしたのかなぁ?」


リクエスト込みで楽しんでいる。

今日の雪は色々といつもと違います。

それよりやめてあげて。

耳迄顔を真っ赤にした妹のHPは既に禁止令時点でオーバーキルよ。


「まあ今回は蓮にも責任あるしノーカンかな」


「元々そうするつもりだったんじゃ」


「あっ。分かる」


「アスレチックであ・そ・ん・で・く・る」


力強く言った鈴は頬を膨らませながらアスレチックに遊びに行ってしまった。


「蓮は行かないの?江菜は思いっきりたのしんでるよ」


「確かに。というか蒿田さん用意いいよね」


まあ事前にスポーツウェア持ってきてる雪も凄い。

アスレチックエリアに行くことになった時。蒿田さんは「スカートでは怪我をしてしまう恐れがありますのでこれを」と言ってデニムパンツを渡したのです。

いつ何時でも執事なんだと実感してしまう瞬間でした。

そして現在江菜さんはめちゃくちゃ楽しんでいる。

樹は陸上での運動神経を活用して難なくアスレチックをクリアしている。

そしてそれに負けないくらい江菜さんも。


「凄いの一言に尽きる」


「あはは。蓮に一票だ!」


僕はどうも好意を向けられているのか意識してしまうとドキドキしてしまうみたいです。


「……そういえば雪は何で戻ってきたの?」


「それは、その……」


黙り込むと雪は顔を赤くしながら自分の胸に手を添えました。

成る程。所々で邪魔になるのかと思いましたね。


「大きいには大きいなりに大変事があるんだね」


「そこははっきり胸が邪魔になったんだの方が楽」


「でもそれはそれで」


「するよ変態呼ばわり」


先に言われてしまった。

何か言えないことが悔しい。


「いつものお返し。悔しいのが分かった」


「少し分かりました。でも続ける」


「なにを!?」


こうしてるといつもの雪で何も変わらない。

やっぱり考えすぎだったなのかなって思えたらいいんだけど。


「…そろそろ蓮も遊んできたら」


「雪は?」


「…私は休憩。本当は一緒にいたいのに」


最後何て言っていたんだろう。聞いたら『おやすみ』ということです。本当かなぁ?

とにかく僕は大の字になっている雪を後にして江菜さん、鈴、樹のいるアスレチックの方へ行き遊ぶ事にしました。


「遅いぞ蓮地」


悪戯っぽい笑顔をする樹に、僕は「ごめん」と軽く謝り綱渡りアスレチックの綱を握る。

綱渡りの高台からの桜はとても新鮮でした。


「樹、最近普段の口調だよね」


「皆の前だけだな」


「それでいけとは言わないけど少しくらい素を出しても良いんじゃない。そもそも爽やかな感じでやってるから寄ってくるんだと思うよ」


「ん〜そうだな。そうするわ」


会話できる程度のペースで綱を渡り始め進みながら、僕は口を開いた。


「樹」


「何だ?」


「彼女がいる男子が好意を寄せる別の女子の気持ちに気づいたらどうするべきだと思う?」


「……それ、誰かさんの事言ってるんじゃないよな」


驚きを隠せず目を開いきながら僕の質問の真意を探るように聞いてきました。


「その誰かさんが誰か知らないけど。例えば」


「……例えば、な」


核心のつける言葉は言っていない。

けど僕の場合は逆に駄目だったかなと後で思いました。

そして、ジッと真剣な眼差しで見つめられて僕はあることを察して確信しました。


やっぱり雪は僕が好きでその気持ちに樹は気づいていた事に。

それでも樹は。いや、だからこそはぐらかした答え方をしてくれているんです。


「いつからとか分かる?」


「いや、気づいたのが中学の時でその時には既に好意持ってたな」


「そっか」


『雪自身はっきりしてないみたいだから嘘は言ってない』


「…何か言った?」


「何も。それでお前が気づいた事、気づいてるのか」


「まだ気づいてないと思う。少なくとも今は」


「今はねぇ」


誰とは言わず、でも誰と分かっての話し合い。


「どうするべきだと思う?」


「いっそ二股かけるか」


今の発言に対して僕は険しい表情で睨みました。


「冗談だ。それくらい分かるだろ」


少し和ませようとしたことは理解できた。

けど発言が悪かったと思います。


「……どうするかなんてさ、もうお前がよく分かってるだろ」


樹は大きく鼻から息を吐いて聞いてきた。


告白されたとして。断るその後雪は必ずいつも通りに振る舞ってくると思います。

でもその時の雪は無理をしている筈なんです。


誰に恋をするも告白するも自由だと僕は思います。

好きになった人に彼女がいても我慢するよりはいっそ想いを吐き出した方が良いと。

でもその場合された人はきっぱりと断るべきなんだって思う。

思わせ振りな返しは無し。

それは相手に失礼になるから。


そこから先、既に友達なら継続、そうでないなら友達関係になるという選択もある。

僕はこの選択は良いと思います。

これも縁。

最初は辛い思いもするし気まずいとは思います。

でも、勇気を出して告白してくれてこれでさよならの方が後味が互いに悪いと思うから。


両想いなら断る必要は無いです。


「うん決まってる」


綱渡りを終えゴールの高台に着地してから話の続きをし始めました。


「なら今から心の準備はしておく事だな」


「よっと…うん」


「てか、こういうのは江菜ちゃんに相談したら良かったろ」


それでも幼馴染の事だから幼馴染の意見を聞いておきたかった。


「そうだね」


「その通りです」


「「うお!」」


い、いつの間にか江菜さんが後ろにいました。

上目遣いで見つめている江菜さんの表情は構って貰えてなくて落ち込む子犬を想像させられて可愛いかったです。


「蓮地さん。その、私は貴方の彼女なのです。その、狡い言い方だとは思います、が、本当に大切だと思っているのであれば辛い時困った時には相談をしてください」


「はい」


直後、樹が「今のは…」と言うと口を江菜さんは「あっ!」と声を漏らして口を手で塞ぎました。

すると江菜さんは僕の頬に両手を当てました。今のは気にしないでくださいという意味で抓られるのかなと思いましたが、そうではなく誤魔化そうともにょり出しました。

自分でもよく分かってないのか顔が少し赤く染まってました。

それが高台で数分続いていたりします。


江菜さんと樹のやり取りは気になるけど聞きません。


◇◇◇


アスレチックエリアを十分に満喫した私達は雪がスポーツウェアから私服へ着替え終えてから蒿田と水樹さんがおられる場所へと戻り、皆様とお花見用のお弁当で昼食を摂りながら花見をしています。


それにしても失態でした。

蓮地さんへの先程の発言は雪の告白前に手を出したのと変わりありません。

あのあと表情は完全に決意を固めてしまっております。

話に割って入るべきではありませんでした。


その後、意味も無く只誤魔化そうとして蓮地さんの頬をもにょもにょと…


気持ち良かったです。



それにしても蓮地さん自身が雪の気持ちに気付いたことは驚きました。

どうして気付かれたのかを聞いてみると蓮地さんを見る私と同じ顔していたと言う事らしいのです。

嬉しい気持ちより悔しい気持ちに強く襲われました。

恐らく蓮地さんは幼馴染の雪だからこそ気付くことができたのだと私は思うのです。


…もし私が早く蓮地さんとお会い出来ていれば私はを何度もしなかったのでしょうか。


今考えても仕方のないことですね。


「江菜ちゃん、どうかした?悩んでるなら水樹さんが聞いちゃうよ」


同じ母親という存在だからでしょうか。

何故か雪が蓮地さんに今日告白する事、自身で好意に気付いた蓮地さんの事、そしてそれに対して悔しい気持ちになったことを話していました。

そして声を抑えて水樹さんは話しを続けます。


「蓮地が自分で雪ちゃんの気持ちに。それは確かに悔しいね」


そしてこの時、水樹さんもまた雪の蓮地さんに対する態度から恋をしていると気付かれていたようです。


「でもそれって江菜ちゃんが自分の感情と向き合わせるきっかけを与えてくれたからだと私は思うな」


「そうでしょうか。蓮地さんならいつか向きおうとしていたかもしれません」


「今だから言えるけどそれは無いんじゃない。多分恋愛の手助けばっかりやってるよ」


笑い飛ばして仰られた言葉はその通りかもしれないと思うとその姿が頭に浮かびまたそれが少し可笑しくて思わず笑ってしまいました。


「だから自信を持っていい。蓮地は気付いてないかもしれないけど、あの子にとって江菜ちゃんはだと思うよ。ごめんね曖昧で」


「いえ、聞いていただけて嬉しかったです」


特別。その言葉をいつか蓮地さんからもお聞きしたい。

今は信じて待つ事。そうですね、本当にそれだけです。


「そう言ってくれて助かるよ。ん?どうかした?」


「いえ、その……水樹さんが格好いいので」


「ああそれは。親になっても現役の頃のが抜けないのよ」


「お陰でデートの時に蓮地さんに助けられました」


「喧嘩での仲裁は最終手段だから釘刺しとかないと。…さて次は雪ちゃんと話してこようかな。これだと贔屓ひいきになるからね」


そう仰って水樹さんは買い物に付き合ってほしいと頼んで離れていかれました。

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