第7話 拓海君はパンツに興味がなかった

「いや、遠慮します」


「——えっ? 遠慮します?」


「うん、知らなくていい」


「どうして?」


「だって、話が長そうだから。それに神世界しんせかいの事、俺に教えていいの?」


「拓海君には教えても大丈夫だから」


 俺には教えても大丈夫? 何か理由があるのか?


 ルナは俺の返答が期待外れだったらしく、左手の指先をひたいに当て頭を抱える。そして頭を抱えるのをやめて俺を見つめた。


 なんでルナは俺の事見てるんだ? ちょ、見つめるのはやめろー。その破壊力ハンパないって!


「私は拓海君ともっとおしゃべりがしたいの!」


「はっ? どうしてさ?」


 えっ、何? 俺ともっと話がしたい? 何それ⁉︎ つまりそれは俺の事が気になるって事か? こんな可愛い子がっ!


 俺はルナに言われて困惑しながらも鼓動が早くなっていた。


「……ひまだったの」


「ひま?」


「拓海君が来るまでずっと仕事が暇で退屈だったの、だから誰かとおしゃべりがしたいの」


 ……ですよねー。こんな可愛い子が俺の事気になるとか、好きになるとか無いよねー。


 ちっくしょー! ちょっと期待したじゃないか! でも、仕事が暇で退屈ってどんな仕事内容なんだ?


 淡い期待は砕け散ったが、そのおかげで平常心を取り戻した。


「仕事って?」


「あらっ、拓海君?神世界しんせかいの事知らなくてもいい。って言っていた気がするんだけどなー」


 ルナは意地が悪そうに俺に言ってきた。


「ぐっ……ルナがもっとおしゃべりがしたいって言ったし、神世界しんせかいの事、俺に教えたいって言うのなら聞いて上げてもいいけどさ」


「……ふーん、なら教えて上げない。さっさと、生き返って下さい」


 ぐはっ。そうきたか。神世界の事ちょっと興味有るんだよね。


 それにルナみたいな可愛い女の子とおしゃべりが出来る機会なんて二度とない気がする。話はかなり長くなる気もするけど大丈夫か?


 そういえば今いる場所、時間停止の部屋だっけ? どんな作りになってるんだ?


「ゴメンなさい。私が悪うございました。私もルナ様と沢山おしゃべりがしたいです。神世界の事教えて下さい」


「分かれば良いのよ」


 合掌をして冗談ぽく謝る俺。そしてドヤ顔のルナ。


「でも、時間とか大丈夫か? 結構な時間経っていると思うけど、今いる場所、時間停止の部屋っていうの? どんな作りになってんの?」


「時間は大丈夫だよ。向こうに戻ったら、ここに来た時と同じ時間に戻るから」


「ほほう。名前通りなんだな」


「でも、時間停止の部屋の使い方は分かっても、どんな作りになっているのか分からないし、何処にあるのかも私達にも分からないんだよね」


「使い方は分かっても、作りや場所は分からない?」


「そうなの。私達は生まれた時から天界、魔界の全ての道具、時間停止の部屋も含めて、使い方は知っているの。でもどんな作りかは分からないの。ブラックボックスって言うのかな?」


 「あー、なるほど。俺がスマホの使い方は分かっているけどスマホの中身はどんな作りになっていて、通信とかの仕組みとか分からないのと同じか」


 生まれた時から全部知っているって、すげー良いな。説明書要らずだな。俺は説明書初めから最後までみるタイプだけどね。


「でね、天界と魔界の全ての道具にはそれぞれ名前はあるけど、それをまとめて古代神こだいしんの遺産って言うの。古代神こだいしん様が作ったんだよ」


古代神こだいしん様?」


「うん、創造主様とも言われているの。神世界しんせかい古代神こだいしん様が作ったんだよ!」


古代神こだいしん様すげーな」


 話が大きすぎて、イマイチ理解出来ない。ただ、古代神こだいしん様はすごい存在とだけは理解出来た。


「それに、拓海君や私達も古代神こだいしん様が作ったんだよー」


 それを聞いて俺は一瞬固まった。


「——はっ? えっ? 古代神こだいしん様が俺達を作った⁉︎」


「うん、正確には、私達のご先祖様なんだけどね。

 最初に人族を作って、それから私達を作ったみたいなの」


「ルナ、今さらっとすごい事言ってないか?」


「そう? 私達はこの事は常識だから何も思わないけど。昔の事だし私達は今を生きているでしょ?」


「ルナたちには常識ね……」


「だから神世界しんせかいの始まりの事なんて、拓海君も深く考えない。気にしない、気にしない」


「気にしない? そんなもの?」


「そんなものだよ」


 ……この世界の核心と思うけど、ルナはあっさりしてるなぁ。女神だからか?


 確かに、知ってもどうにかなる訳でもないし、ルナの言うように今を生きている……あっ、今は死んでいた。


 まぁ、世界の始まりなんて、俺にはどうでもいい事だな。


「それと今いる場所、時間停止の部屋はね、拓海君みたいな通常の死とは別の、特別な死に方をした人が出た時だけ使えるんだよ」


 特別な死? ナニソレ?


「特別な死に方した人の魂が鍵になっていて、時間停止の部屋へ送ってその後に私達が入るの」


「ほうほう」


「別にもう一部屋、魂の固定化などを作業する場所があるんだけど、今回は私一人で時間停止の部屋に入ったけど、普通は数人で入るんだよ」


「なるほど」


「私が入ったらロックが掛かって、時間停止の部屋から魂が無くなるまで外に出れないんだよ」


 そう言ってルナは女の子座りから、三角座りに座り直した。


「えーと、ルナ?」


「何?」


「その座り方だとパンツ見えそうなんだけど」


 俺がそう言うとルナは慌てて三角座りから元の女の子座りに戻して、スカートを整え両手でスカートを押さえて顔を真っ赤にした。


「見た?」


「見てません」


「本当?」


「見えそうだったけど、見なかったです」


 ルナは俺をじっと見つめた。


「拓海君」


「何?」


「黙っていれば、私のパンツ見放題だったのよ」


「女の子に興味はあっても、パンツに興味はありません」


 パンツには全く興味無いけど、胸は興味あるんだよね。それは言わないで秘密にしよう。


 


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