第五話「愛のない嘘」彼女目線:杏奈(あんな)

このままだと、本当に終わってしまう。彼との関係がばれたら、人生が終わる。


「杏奈、君は本気か?あいつと同棲するって、俺にどうしろと言うんだ?」

「俺たちは親の言いなりで、結婚したとはいえ、さすがに俺にも惚れてるだろ?」

「惚れてる?嘘だから!」

「じゃあ、なんで夜の営みの事まで…?」

「あんたに関係ないから!」

バンッとドアを強く閉める。

このまま結婚しなかったら幸せだった。

だから、復讐することしかできなかった。

彼と私のためにも――


「杏奈!…俺たち、離婚しよう」

「俺はもう疲れたよ…」

「私も疲れました。あんたよりもっと良い男をずっと愛してるから」

「分かった!」

「復讐してるつもりなのか?」

「そうよ?まだ…気がついてないの?」


甘い罠を仕掛けた。

彼と夜の営みをしてる間に、彼女を呼び出して、彼も呼んだ。

呼び出した人たちは和子と博征だ。

「あら?来たわね?」

「和子!?なんで?」

「悠真さん?」

「杏奈?」

「私たち、離婚するから」

「本当?」

「そうだよ?離婚届も書いてるし、明日には市役所に届けるよ」

「お前ら、遊びだったのかよ?」

「これで、みんなハッピーエンドね?」

私は和子にバシッと強く平手打ちをされた。

「こんな女と遊んでたなんて!私も見透かしたわ!」

「そうかしら?和子さんもそうじゃないですか?」

「杏奈!大丈夫か?」

「本当か?」

「うん、ありがとう」

「和子、もう…やめろ」

「この5年間をなんだと思ってるの!?」

「和子!やめろって!」

「私は悠真さんの事が本気で好きだから、この人を託したのよ?遊びだって分かっても、この人が私の事愛してくれるから!だから!杏奈さん!あなたにお願いしたの!」

「なのに…なのに、あなたはなんて…なんて女なの?」

「私と博征を無理やり引き離したのは、悠真さんと和子さんだからね?あと、お互いの両親が後から知っても、もう遅いからね?」

「なんで?」

「妊娠したの、もう6ヶ月よ」

「お前…?復讐とはこの事だったのか!?」

「そうよ?それに、和子さんだって…ね?」

「和子?本当か?」

「実は、私も妊娠してます。ごめんなさい」

「何ヶ月なんだ?」

「5ヶ月です」

「なんで、ずっと俺に言わなかったんだよ!?」

「認めてくれないのが、すごく怖くて、迷惑だと思うから…ずっと言わなかったの」

「むしろ、嬉しいから!」

「離婚届は明日出そう!な?」

「そうしましょ?和子さん?」

「はい、ありがとうございます」


「杏奈、顔合わせするつもりか?」

「するよ?真実を全部教えるつもりだから」

「両親が金好きで、前の夫の財産が欲しくて、欲しくて、たまらなくて、自分の娘に愛してくれない男と無理やり結婚して、自分たちの欲望を満たすためにした罠だって…」

「これで、本当にいいのか?」

「いいの、これが望んでる結果だから」

「分かった!あと、うちの両親、元から杏奈の事が大好きだから、きっと大丈夫だよ!」

「愛のない嘘をついてるより、マシでしょ?」

「確かにはそうだな」

「待っててくれてありがとう」

「君を愛してるから、これくらい当たり前だよ?」


「ありがとう。和子」

「悠真さんとようやく幸せになれたから、これくらいの辛さなんか乗り越えられるからね?」

「あまり無理するなよ?何かあったら、俺に頼ってくれ」


「ありがとう。杏奈」

「博征、今までごめんね。これから先も貴方を愛してるから」

「君は俺の幸せだ」

 

愛してる人との未来。

これから先も「貴方」と一緒に歩んでいけますように。


〜終わり〜

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背徳愛 ドーナツパンダ @donatupanda

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