ようこそここが東の森

ハァ、マジで久しぶりに全力で走った…。ほんと疲れた。


スタートから2分47秒後。スパロは目的地に到着した。


「とーちゃーく!!!」


その2秒後、あーちゃんこと、ギルドマスターの少女が到着した。


二人は本来3日はかかる道程を3分弱で走りきったのである。化け物だ。


「スパロ!なかなか良い走りだったぞ!!」

「そーゆーあんただってついてきているじゃないか。それに息切れしていないって余裕かよ。」

「なんのこれしき。私はこの程度で魔力切れなんぞ起こさんよ。ただ、加速用の身体強化が久しぶりでちょいと手間取っただけさ。」

「やっぱ余裕じゃん!こっちは全力出しきってヘトヘトだっつーの。」

「じゃあ、スパロは休んでいろ。薬草採取と夜営の準備は私がするぞ。」

「頼むぜ…。」


少女は背負っていたリュックを下ろすと、中から薬草を入れる紙袋を取り出した。それをもったまま、薬草の生えている方を向くと、


ブワッと風が巻き起こった。言わずもがな彼女の魔法である。


風は刃となり草を刈った、さらに風は手にもなって刈られた草を少女のもとへと運ぶ。気がつけば彼女の持っていた紙袋に薬草が詰まっていた。


「オイオイ、薬草採取も魔法かよ。」

「いちいち手で摘むより楽だぞ。」

「常人にはそんなに魔力に余裕がないんだよ。」

「訓練すれば増える!時間かかるけど!」

「あんたが長生きしてるからだ!」

「ふっ。ありがとう。さて、テントの用意でもしようか。」

「おっ、テントあるのか?やったぜ。」


テントは高く、重い。だから、新人冒険者は持っていないことが多い。大勢で移動する軍や、懐が温まってきた冒険者が買って、体力にものを言わせて担ぐか、お金を出して魔導収納袋に入れて運んでいる。


少女は再びリュックのところに戻ると、赤い巾着を出して口を緩めた。するとスルスルと中からテントが出てきた。しかも組み立て済みで。


「よしっ!」

「また魔法かよ。しかも袋開けたらテントが組み立て済みで出てくるっておかしいだろ?!」

「私特製、空間ごと入れられる魔導収納袋だよ。」

「空間ごとって、伝説級だそ?しかも手作りだ?」

「いまさら私に驚いてどうする。」

「それは否定しないけど!」

「わかってくれたならいいよ。さて、まだペグ打ちが残っている。テントをどこに固定するかを決めよう。」


二人はテントを動かして、良さげな場所におくと、ペグで固定した。


「よし!終わり!時間が余っているから自由時間にしよう!」

「了解。夕食は俺が作るから、お前はそれまで好きにしていろよ。」

「いいの?」

「いいぞ。でも肉は獲ってきてくれよ。」

「わかった!」


少女は返事をするなり姿を眩ました。スパロは目を閉じてゆっくり10秒ほどかけて深呼吸する。そして心が落ち着いたので再び瞼を開けると、


「ほら!!上手いと評判のファイヤーターキーだ!」


スパロは視界に、毛をむしり血抜きをしたファイヤーターキーの成れの果てを持った少女を、入れると、


「どっから獲ってきたぁぁぁ!」


叫んだ。ファイヤーターキーは美味しすぎて乱獲された。そして数が減り、今や伝説級の食べ物である。

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